【2021年最新】慢性腰痛の2つの要因と改善方法
慢性腰痛とは3ヶ月以上続く腰痛のことで、椎間板ヘルニアや圧迫骨折、脊柱管狭窄症、あるいは生活習慣、ストレスなどによって痛みが引き起こされます。
今回は、慢性腰痛が起こるメカニズム、自分の体をチェックする方法、自宅でできるリハビリについて紹介します。
慢性腰痛が起こる2つの要因
慢性腰痛は、身体的な要因と精神的な要因の悪循環によって起こります。
①身体的な要因
痛みが起こると、筋肉が緊張します。筋肉が緊張すると、血流が悪くなったり筋肉が疲れやすくなったりします。この結果、さらに痛みが強くなって筋肉が緊張し…という悪循環につながります。
②精神的な要因
痛みが起こると「安静第一」という誤った思い込みから過度な安静をとるようになります。過度な安静を取り続けることによって、精神的ストレスや不安が高まり、身体機能や脳機能が不具合を起こします。この結果、痛みに過敏となり、さらに痛みが強くなり…という悪循環につながります。
このことから、慢性腰痛の改善には痛みの悪循環を断つリハビリが必要ということになります。
3つのポイントでからだをチェック!
痛みの悪循環を断つには、自分の体に合ったリハビリを行うことが大切です。そのため、まず自分の体がどのような状態にあるかをチェックする3つのポイントを紹介します。
1.ふだんはどんな立ち姿勢?良い姿勢を意識しましょう
良い姿勢とは
耳、肩、足のつけ根、膝、足首が直線上に並び、腹筋・背筋が適度に緊張している姿勢。腰は軽くそっている状態。
いわゆる“気をつけ”の姿勢
胸を張り、腰が強くそり、背筋に力が入りすぎている姿勢。すぐに疲労して、腰痛を生じやすい。腹筋の筋力低下にもつながる。
脱力した悪い姿勢
背筋も腹筋も脱力しており、一見楽に感じる姿勢。背骨や椎間板などで支えているためこれらに負担がかかり、腰痛を生じやすい。腹筋・背筋の筋力低下にもつながる。
2.腰がそり過ぎていませんか?柔軟性も大切!
腰のそり
腰がそり過ぎているかどうかは、壁に背中をつけて腰と壁の間のすき間を確認する。腰がそり過ぎている場合は、腰の筋肉が緊張していることが多い。
また、これにより血流が悪くなったり筋肉が疲れやすくなったりという、痛みの悪循環が起きている可能性がある。
腰の柔軟性
椅子に座り、腰の曲げ伸ばしがどの程度できるかを確認する。腰に柔軟性がない場合は、同じ姿勢をとり続けていることが多い。
結果として、腰のそりと同じように痛みの悪循環が起きている可能性がある。
3.腹圧をかけられていますか?
腹筋が正しく使えているかのチェック。おなかを膨らませたりへこませたりせずに、おなかを締めるように腹圧をかけられるか確認する。
腹圧をかけるとは、咳をしたときの腹筋の力の入り方をイメージすると良い。
腰のそり過ぎた気をつけの姿勢や脱力した姿勢が長く続くと、腰の柔軟性や腹筋・背筋の筋力低下、疲れやすさを起こします。痛みの悪循環を断つには、まず良い姿勢で立っていられるようにすることが第一です。そして、腰を柔らかくし、腹筋・背筋を正しく使えるようにしていきます。
自宅でできるストレッチ&筋力の強化
それでは自宅でも簡単にできるリハビリ方法を紹介します。
前項で「腰のそり過ぎた気をつけの方」や「腰の柔軟性が低下している方」はストレッチを重点的におこないましょう。
また「脱力した姿勢」の方や「腹圧をうまくかけられない」方の場合は筋力強化を中心に行ってみてください。
どの運動も息を止めずに、痛みのない範囲で行うのがポイントです。またやりすぎは逆効果になる場合もあるので注意しましょう。
※イスに座ったままできる運動もあります。こちらも参考にしてみてください。
腰痛の原因・症状と主な治療法は?負担を減らす工夫1.ストレッチ背筋のストレッチ
- 背筋のストレッチ
- 仰向けの状態で、両膝を抱えて背筋を伸ばす。10秒、3セット行う。
- もも裏のストレッチ
- 仰向けの状態で、膝を伸ばしたまま片足を上げる。片足ずつ10秒、3セット行う。
2.筋力強化
- 腹筋を鍛える
- 仰向けで両膝を立てた状態で、骨盤を回す感じで腰を床に押し付ける。10秒、3セット行う。
- 背筋を鍛える
- 四つ這いの状態で、片手と反対の足をまっすぐ伸ばして上げる。両足とも5秒、3セットずつ行う。
3.有酸素運動
- ウォーキング
- 気持ちの良い程度の運動量で良い。自宅周辺で散歩コースをもうけるとよい。
- サイクリング
- 自転車、あるいはスポーツジムの機器で行う。乗車中は腰のそり過ぎや曲がり過ぎに注意。
4.器具をつかった手軽なリハビリ
- ストレッチ用ポール
- 姿勢の矯正と腹筋を強化する方法として、ストレッチ用ポールを使うと効果的。ポールの上に両膝を立てた状態で横になり、体を小さく左右に揺らす。これを5~10分程度行う。
腰の負担を減らす3つの工夫
続けて、腰の負担を減らすための生活動作の工夫についても具体的にみていきましょう。
1.寝起きは横向きを経由する
寝起きは特に腰に負担のかかる動作の一つです。一度横向きとなってから起きる、横向きに寝てから仰向けになるという手順で寝起きすると、腰の負担を減らすことができます。
2.ソファーに寄りかかった姿勢は長く続けない
ソファーに寄りかかった姿勢は、腹筋・背筋を使わないため楽に感じます。しかし、背骨や椎間板などで支えることになり、結果として腰に負担がかかります。この姿勢は長く続けないようにしましょう。
3.長時間の車の運転にはランバーサポートを
車を運転する姿勢は腰が曲がった状態になりやすく、ソファーに寄りかかるのと同じで腰に負担がかかります。ランバーサポート(腰あて)を使うと、負担を軽減することができます。
慢性腰痛のリハビリでぎっくり腰の予防も
慢性腰痛はぎっくり腰(腰の捻挫)の原因の一つです。
人は、前かがみになったり物を持ったりするとき、上半身や手が動く前に、背筋・腹筋や足の筋肉に力が入ります。これは、腰に負担がかかる前に腰回りを安定させ、準備状態を作るための反応です。
しかし、慢性腰痛があると腹筋・背筋の筋力低下や疲れやすさが生じるため、準備状態を作る反応が遅れます。そのため、慢性腰痛があるとぎっくり腰を起こしやすくなるのです。
逆を言えば、慢性腰痛のリハビリがぎっくり腰の予防にもつながるということになります。
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今回は慢性腰痛のメカニズムとからだのチェックの仕方、自宅でできるリハビリについて紹介しました。
慢性腰痛のリハビリは、日々継続することが確かな効果につながります。1回あたりの運動量は少なくても構わないので、まずは継続してみてください。
からだの状態に合わせて正しいリハビリを行うことで、柔軟性や筋力、姿勢のバランスが少しずつ改善され、症状の軽減を感じていただけると思います。
なお、症状によっては対処法が異なる場合があります。より詳しく知りたいときは、医師やリハビリ専門職などにご相談ください。
膝の痛みを改善!効果的な運動法イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:安藤 岳彦(介護老人保健施設ひまわりの里 リハビリテーション部長)
認定理学療法士(地域理学療法、健康増進・参加)、中級障がい者スポーツ指導員
1999年秋田大学医学部付属医療技術短期大学部理学療法学科を卒業。
医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院に勤務。介護老人保健施設ライフプラザ鶴巻、医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル、医療法人社団佑樹会・介護老人保健施設めぐみの里の開設を経て、現職。療養・生活に寄り添うリハビリ専門職として、日々の業務に従事しています。