居宅介護支援事業所とは?ケアマネジャーとは?

介護保険サービスを利用するにあたり、拠点となるのが居宅介護支援事業所です。居宅介護支援事業所のサービス内容や利用方法、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーの役割について解説します。

 居宅介護支援事業所とは?

居宅介護支援事業所は認可が必要

要介護認定者に対して、自宅で自立した生活を送るために、居宅サービス計画書(ケアプラン)の作成やサービス調整を行う事業所のことです。

具体的には、介護支援専門員(ケアマネジャー)が、本人や家族の心身の状況や生活環境、希望などに沿って、居宅サービス計画書(ケアプラン)を作成。そのプランに基づいて介護保険サービスなどを提供する事業者との連絡や調整を行います。

制度上、「自宅(居宅)」と見なされる住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の利用者(入居者)にもケアプランの作成を行います。

居宅介護支援事業を行うためには、市区町村から事業所の指定を受けなければなりません。

近年、ケアプランやケアマネジメントの質の向上が課題となっており、2021年度より居宅介護支援事業所の管理者の要件を、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)に限る方針がとられています。

ケアプランとは?

在宅介護でも施設介護でも、要介護または要支援の認定を受けると、介護保険を使ってサービスを利用することができます。

ケアプランとは、利用する介護保険サービスの内容や回数、時間などを記載した「居宅サービス計画書」のことです。一人ひとりの利用者がどのような生活を送りたいのかを聞き取り、その生活が実現できるように介護保険サービスを組み合わせます。

ケアプランの作り方

ケアプランは利用者や家族の希望や生活状況の聞き取りをもとにケアマネジャーが作成します。

ケアプラン作成費用は、すべて介護保険でまかなわれていますので、自己負担はありません。

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ケアマネジャーが利用者と面談。現況の把握(アセスメント)を行います。利用者と家族がどのような生活を望んでいるか、そのために必要なことは何か、何が障害となっているかなど、課題を明確にします。この時、ケアマネジャーは「課題分析標準項目」という、あらかじめ決められたチェック様式を用いてヒアリングを進めていきます。
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ケアマネジャーはアセスメントをもとに、必要な介護保険サービスを提供する各事業者に照会を行い、サービスの種類や内容、利用回数、時間、利用料金などをまとめます。
3
ケアプランの骨子が完成したら、利用者と家族に説明。希望に沿ったものかどうかを確認します。問題がなければ、利用者と家族が同席のもとで、介護保険サービス提供事業者の担当者と主治医などの関係者が集まる「サービス担当者会議」を開催。ケアプランを完成させます。
4
利用者がケアプランに同意してケアプランが確定したら、利用者が各サービス提供事業者と契約をしてサービスが開始されます。
5
ケアマネジャーは、サービス開始後も利用者宅に定期的に訪問。同時にサービス提供事業者にも継続的に連絡を入れ、ケアプランが常に最適であるよう努めなければなりません。高齢者の体の状態は変化しやすいため、ケアプランの定期的な見直しは必須です。
目標や目的がどの程度達成できているか、要介護度の維持や軽減につながっているか、サービスの内容が利用者に合っているか、サービス提供事業者の対応はどうかなど、常にさまざまな視点からプランを更新していくことが求められています。

ケアマネジャーの役割とは

ケアプランを作成する上で、重要になるのがケアマネジャーですが、その役割も知っておくことで、利用者やその家族もいざというときに相談しやすくなります。

厚生労働省が定めているケアマネジャーの役割は、「介護や支援を必要とする方の相談や心身の状況に応じて、訪問介護やデイサービスといった介護保険サービスを受けられるようケアプランを作成すること。そして自治体・事業者・施設などとの連絡調整を行うこと」です。

具体的にケアマネジャーの仕事内容を見てみましょう。

1.ケアプランの作成

利用者の介護度や調査したデータを参考に、ケアプランを作成する役割を担っています。長期的な目標を定めた上で、どのような介護保険サービスを提供するかを決め、利用者や家族の同意を得た上で「サービス担当者会議」を開催。ケアプランを完成させます。

2.介護保険サービスの給付管理票の作成

介護保険サービスを提供する施設や事業所は、国民健康保険団体連合会に介護給付費を請求しなければなりません。介護保険サービスの費用を請求するための給付管理を行い、「給付管理票」を作成することもケアマネジャーの役割です。

3.要介護認定の申請代行

介護保険サービスを受けるためには、自治体に申請を行い、要介護認定を受けなければなりません。ケアマネジャーは利用者の代わりに申請を行うことが可能です。介護保険の更新や区分変更申請などの手続きを代行することもあります。

4.利用者とサービス提供事業者との連絡・調整

各サービス提供事業者と利用者の間に入り、連絡・調整などを行うのもケアマネジャーの仕事です。

そのほか、「サービス担当者会議」の日程調整や、課題の迅速な解決や対応に繋げるために、ケアマネジャーには日頃からサービス提供者との連絡を密に取り、利用者や家族からの相談内容を共有しておくことが求められます。

5.入退院や施設入居の支援

利用者の入退院や施設入居支援を行います。退院後、在宅で介護保険サービスの利用が必要な場合はケアマネジャーがケアプランを立てて介護保険サービスを利用できるように調整します。

居宅介護支援事業所の利用方法

利用できる対象者

居宅介護支援は、誰でもサービスを受けられるわけではありません。要介護1〜5の人が利用できます。ただし、同様のサービスとして、要支援1・2の人が受けることができる「介護予防支援」もあります。

居宅介護支援は、居宅介護支援事業者が相談窓口となり、介護予防支援は、地域包括支援センターが窓口になります。

居宅介護支援の利用方法と流れ

1.要介護認定を受ける
介護保険サービスの利用には要介護認定を受ける必要があります。
2.居宅介護支援事業者を選ぶ
地域包括支援センターに相談すると、居宅介護支援事業者を紹介してもらえます。
また、一度契約した事業者が合わない場合は途中で変更することも可能です。
3.契約
事業者が決まったら契約書を交わし、居宅介護支援のサービスを利用開始します。
4.ケアマネジャーの選任
ケアマネジャーを選任し、契約をします。ケアマネジャー一人当たりの担当人数が法律で決められているため、上限まで担当を持っている人は選任できません。
5.ケアプラン作成
担当のケアマネジャーが選任されると、ケアプランの作成を開始。ケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、心身状況や生活環境を把握し、課題を見出します。その後話し合いを経て、ケアプランを完成させます。
6.介護保険サービスの利用開始
ケアプランに基づいてサービス提供者と契約を行い、サービスの利用を開始します。
7.モニタリング
サービスが開始された後は、ケアマネジャーによる定期訪問によって内容が現状に合っているか確認が行われます。

居宅介護支援の利用料金

居宅介護支援は、介護保険から全額給付されますので、利用者の自己負担金はゼロです。可能な限り、自立した生活を送るために、居宅介護支援の役割が重要だからです。ただし、実際に介護保険サービスを受ける際には、利用者の所得に応じて1〜3割の自己負担金が発生します。

居宅介護支援事業所の選び方

自宅から近い

居宅介護支援事業所は、自治体からの指定を受けた専門事業所で、地域包括支援センターや市区町村の介護保険課で連絡先のリストがもらえます。どこにお願いするか迷うと思いますが、利用者の住まいに近い方がおすすめです。地域の介護や福祉の事情に通じている場合が多く、きめ細かな対応も期待できます。

特定事業所加算を受けている

特定事業所加算とは、中重度者や支援困難ケースへの対応、専門性の高い人材の確保など、公正中立で質の高いケアマネジメントを実施している事業所を評価するものです。

居宅介護支援であれば、24時間態勢で相談を受け付けている、ケアマネジャー一人当たりの担当利用者数に制限を設けるなど、厳しい条件を満たしている証拠になります。

実際に特定事業所加算を受けているかは、調べないとわかりません。厚生労働省が管理している「介護サービス情報公表システム」でチェックできます。

併設するサービスの利用について

サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどが、居宅支援事業所を自社で設立している場合もあります。

この場合、入居者のニーズを超えた過剰なサービスを提供するケアプランを作成し、利益を得る「囲い込み」を行うことにも繋がるため、2021年度に制度が改定。介護の利用記録の解析を行い、問題がある場合は自治体の立ち入り調査や是正指導などを行うことになりました。

結論からいえば、併設しているからといって、入居者がそこの介護保険サービスを利用しなければならないということはありません。ケアマネジャーが作成するケアプランに沿って、本当に必要なサービスのみを受けることが重要です。

利用者の生活を一番に考えた、最適なサービスを受けるためには、ケアマネジャーの存在がいかに大きいかということです。そのため、ケアマネジャーは、要介護者の立場に立って、公正かつ誠実に業務を行う義務があるのです。

ケアマネジャーとの相性

より良い介護保険サービスを受けるためには、ケアマネジャー選びが重要になってきます。ケアマネジャーは、介護以外にも家庭のプライベートな悩みや金銭的なことにも関わってきますので、信用できる人かどうかという点も重要です。

上記のことを踏まえて、実際にケアマネジャーを選ぶときのポイントをあげてみました。

  • 専門的な知識を持っていること
  • どんな話にも親身になって聞いてくれること
  • 連絡がつきやすく、返事も早いこと
  • 家族の希望を汲み取りつつ、冷静に判断してくれること
  • 説明がわかりやすいこと
  • 守秘義務を守ってくれること

ただ専門知識があって経験が豊富だからといって、いいケアマネジャーだとは限りません。利用者や家族に寄り添ってくれる人かどうか、相談しやすいかなど、人として安心、信頼できるかどうかも大事です。

まとめ

そろそろ介護が必要になってきたかなと思ったときに、どこに相談すれば良いのかわからず焦ることのないよう、相談窓口や介護制度の仕組みなどをあらかじめ知っておくと安心です。

利用者も家族も、みんながその人らしい、豊かな人生を送れるよう、社会全体でのサポート態勢が整っていますので、上手に利用していきたいですね。

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この記事の制作者

小菅 秀樹

監修者:小菅 秀樹(LIFULL介護 編集長/介護施設入居コンサルタント)

老人ホーム、介護施設の入居相談員として1500件以上の入居相談に対応。入居相談コールセンターの管理者を経て現職。「メディアの力で高齢期の常識を変える」をモットーに、介護コンテンツの制作、寄稿、登壇。YouTubeやTwitterでも介護の情報発信を行う。

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