「同じスタッフでも、環境によって介護の姿勢は大きく変わります。スタッフがご入居者を大事にできるよう、働きやすい環境を整えたいと思っています」。

——そう話すのは、株式会社LIXIL シニアライフカンパニーが運営する介護付き有料老人ホーム『フェリオ成城(東京都世田谷区)』でホームマネージャーを務める山下健一さん。

特別養護老人ホームから転職してきたという山下さんに、ホームマネージャーとして大事にしていることを伺いました。

あまりの忙しさに、介護の本質を忘れてしまった

『フェリオ成城』ホームマネージャーの山下さん【『フェリオ成城』ホームマネージャーの山下さん】

——まずは、山下さんが介護業界に入ったきっかけを教えてください。

山下さん:昔から「人のためになる仕事がしたい」という気持ちが強く、大学ではリハビリを学びました。ただ、事情があって中退しまして、その後は実家に戻ってガラス清掃のアルバイトなどをしていたんです。時間が空いたときに近所の老人ホームにボランティアに行き、「こういう仕事がしたいな」と思うようになりました。

それから専門学校で2年間勉強し、介護福祉士の資格を取って特別養護老人ホームに就職しました。

——介護の仕事のどんなところが気に入ったのですか?

山下さん:直接人の役に立てることですね。人のためにならない仕事なんてないのかもしれませんが、介護は人に直接触れて、喜びも直に感じることができます。そこに惹かれました。

 ——LIXILシニアライフカンパニーに転職したのはなぜですか?

山下さん:最初に就職した特養はものすごく忙しい職場で、55名近いご入居者を時間帯によってはスタッフ2人で見るような状況でした。1人が休憩に入っているときは、1人で55名をお世話しなければいけません。そうした状況に極限まで疲れ果ててしまったんですね。

この会社を選んだのは、入居者3人に対してスタッフ2人という手厚い人員体制を取っていて、しっかりとご入居者に向き合えそうだと考えたからです。また、ちょうどフェリオ成城がオープンする時期で、始まりから携われることにも魅力を感じました。最初は介護スタッフとして働いていましたが、それから数年で管理職の役割を担うようになり、今年11月からフェリオ成城のホームマネージャーを務めています。

小さなことに気づける人材を育てたい



——転職されてどんな感想を抱きましたか?

山下さん:フェリオ成城のオープン当初は職員の数に対してご入居者が少なくて、ほぼマンツーマンで対応しているような状態でした。前職の特養からのギャップはかなり大きかったですね。3:2の人員体制で個別ケアに取り組んでいるので、一人ひとりのご要望にきめ細やかに対応できていると思います。

——フェリオ成城をどんなホームにしたいと考えていますか?

山下さん:ありきたりに聞こえるかもしれませんが、ご入居者とご家族に「このホームを選んでよかった」と思ってもらえるホームです。それによって、ご入居者だけでなく、ご家族の人生も豊かになると考えています。

 ——そのためにどんな工夫をされていますか?

山下さん:老人ホームにおいて一番重要なのはスタッフです。どんなに綺麗なホームでも、スタッフの質が低かったら決して満足はしてもらえないでしょう。ですから、スタッフには介護をする上で必要な「気づき力」を高めてもらいたいと思っています。

スタッフの採用面接のときも、当たり前のことに気づけるかどうかを見ています。ホーム内を早めに歩いてみてペースを合わせられるかどうか、足音を気にしているかどうか。キョロキョロしてついて来なかったり、ずかずか音を立てて歩いたりする人では、ご入居者の変化に気付けず、細やかな対応ができません。

また、私自身が特養からLIXILへと転職し、同じ人間でも環境によって大きく変わることを実感しました。スタッフが働きやすい環境を整えなければ、と考えています。

——介護の仕事をする中で、印象に残っている出来事はありますか?

山下さん:個別ケアに取り組んでいると、ご入居者との関係が密になります。入浴を嫌がっていた方が、「あなたが介助してくれるなら入るわ」と言ってくださるなど、真摯に対応したことを認めてもらえるのは嬉しいですね。自分が言われたときはもちろんですが、スタッフがご入居者の信頼を得ていると感じたときも嬉しいです。

また、ご入居者をお墓参りにお連れしたときはとても喜ばれました。旦那さんと、若い頃に亡くされたお子さんのお墓です。ご家族から「ずっと行きたがっていたけど、私たちだけじゃ連れていけなくて」と伺い、「遠慮せず言ってください。お連れしますよ」と。ご本人は認知症を患っていたのですが、お墓につくと思い出して、「来れてよかった」と涙を浮かべて喜んでいらっしゃいました。

「印象に残っていることがたくさんありすぎて……」と悩みながらも話してくれた山下さん

【「印象に残っていることがたくさんありすぎて……」と悩みながらも話してくれた山下さん】

——ホームを運営するに当たり、山下さんが課題に感じていること、それを克服するために試みていることがあれば教えてください。

山下さん:スタッフそれぞれが介護に理想やこだわりを持っています。良いことでもあるのですが、想いが強すぎて揉めることもあります。医療方針を巡って介護スタッフと看護スタッフで意見が割れたり、「もっとこうしたほうがいい」とご家族の考え方に反することを主張したり。

そんなときは、ご入居者ごとにケアマネジャーが作成しているケアプランに立ち戻るようにしています。ケアプランはご入居者に関わる人全員が話し合って決めたものなので、そこに書かれていることができていないと契約違反になってしまいます。

ケアプランは毎月チェックを行い、状況に合わせて修正しています。介護の方針を変えたいなら、そのタイミングできちんと自分の考えを説明し、周囲を納得させること。スタッフにはそう伝えています。

介護に正解はありません。ケアプランを上手に活用し、スタッフ間の意識統一を図りたいと思っています。

フェリオ成城:ホーム長インタビューを終えて

 

スタッフと入居者の関係が良好な老人ホームと、事務的で冷たい雰囲気の老人ホーム。山下さんのお話を聞いて、その違いを生むのは精神論ではなく、スタッフが入居者と向き合える環境を上の立場にいる人がつくれているかどうかなのだな、と感じました。

入居者を大事にする老人ホームを選びたいなら、マネージャーのスタッフに対する姿勢を見るといいかもしれませんね。