みなさんは、老人ホームでの生活がどんな日々か知っていますか?

東京都世田谷区にある、介護付有料老人ホーム『ツクイ・サンシャイン成城』では、現在入居者100名に対し120名のスタッフ(※ともに2016年6月現在)で、24時間365日ケアにあたっています。入居者の平均年齢は89.5歳。女性が7割を占め、70代から105歳まで幅広い年代の方が暮らしています。

今回訪問してみて、特に90代以上の入居者が想像以上に多いことにとても驚きました。また、訪問するまで思い至らなかったのですが、ほとんどの入居者にとって、この場所が終の住処になるそうです。

そこで終末期のケアがどのようにサポートされているのかがとても気になりました。『ツクイ・サンシャイン成城』では、昨年入居者11名の最期の瞬間を見守ったとのこと。この看取りについて、施設長を務める、吉村大輝さんに詳しくお話を伺いました。

看取りとは、日常を支え見届けること

ツクイ・サンシャイン成城のホーム長:吉村さん

【ツクイ・サンシャイン成城のホーム長:吉村さん】

吉村さん:「看取りケアといっても、うちでは特別なことはやっていないんですよ。たとえば、”みんなで食卓を囲んで食事をする”って、普通のことじゃないですか。これがだんだん終末期になるとできなくなるんです。この何気ない日常をどれだけ長く、維持できるかというふうに我々は努力します。

はじめは車椅子で食卓を囲めていた方が、その動作が困難になった場合に、車椅子をリクライニングできるものに変えて、同じように食卓につけるようにする。それができなくなると、今度は居室からも出られなくなってくるので、そこは声掛けに行ったり、手を握りに行ったり。

入居者の身体機能が自然に衰弱していくのを見守りながら、できるかぎり日常的な時間が変わらず過ぎていくように環境を整える。その日常の中ですっと息をひきとる。それがうちの介護でできることですね。」

徐々に弱まっていく入居者の心身機能を、そうとは気付かせないように日常を支えていく。そのためには、入居者の健康状態を正確に把握できる、高い専門性と繊細な感受性が必要だと感じました。

安心して家族を任せられる居場所をつくる

株式会社ツクイ自体は、もともと土木関連の事業を行なう会社だったそうです。創業者の母親が認知症を患ったのがきっかけで、1983年に訪問入浴として介護事業をスタートさせました。その後2003年に有料老人ホームサービスに参入し、現在に至ります。

護当事者である創業者の経験は「家族が安心して親を預けられる居場所をつくる」という使命感となり、それは今も現場でしっかり受け継がれています。

吉村さん:「歳をとるにつれて、触れ合いってなくなってくると思うんです。だから話すときに背中に手を置いたり、さすりながら話したりしています。

お年寄りって手を出すと逆にさすってくれるんですよ。仕事で煮詰まってくると、ちょっとふうって行ってさすってもらって。それで自分も癒されることがありますよね。」

吉村さん:「先日お看取りした方なんですけど、娘さんが毎日夜遅くまで面会に来ていたんです。お顔を覗きに行こうかなと思い、トントン、ガラガラってドアを開けたら、娘さんがベッドサイドで手を握っていて、童謡をずっと歌ってあげていたんです。

そのご入居者は歌が大好きだったので、おふたりの姿を見てじーんとなり、はっとして失礼しますって出てきてしまいました。その後、ご入居者はご逝去されましたが、その娘さんからここで看取っていただいてよかったですって、最後に言っていただけました。

やってきてよかったなって、そういう時に感じますね。」

「死ぬときは自宅で」と望む方は多いと思います。けれど、安心、安全を感じながらこんなふうに最期を迎えることができる老人ホームでの暮らしなら、老後の選択肢のひとつに入るかもしれません。

入居者に聞く、老人ホームでの暮らしとは

音楽療法に欠かさず参加している入居者の間瀬さん(画像右)

【音楽療法に欠かさず参加している入居者の間瀬さん(画像右)】

音楽療法レクリエーションの最前列で、満面の笑顔を見せていた入居者の間瀬さんは、現在97歳。「ツクイ・サンシャイン成城」のオープン当初から入居しています。

「音楽療法士の先生、いい方ですよね。いつも楽しみにして、先生より先に行って待ってるんですよ。私は演歌がすごく好きで、昔は押入れの中でよく歌ったりしたんですよ(笑)。」

過去に脳梗塞などの大きな病気をいくつも患っていたようで「こんなに長生きするなんて思わなかった!」といたずらっぽく笑う間瀬さんに、ホームでの生活について質問してみました。

――入居のきっかけを教えてください。

間瀬さん:「数年前に足を怪我して入院していたんです。退院して家に帰った明くる朝にまた転んで、救急車を呼んでしまいました。院長先生にまた来たのかって言われましたね(笑)。

ちょうどその時に、病院の看護婦さんがツクイ・サンシャイン成城のパンフレットを持っていたんです。奨められたので電話してみたら、ここのスタッフの方が面接に来てくれて。それから1週間くらいで入居したんですよ。」

――入居はご自分で決められたのですか?

間瀬さん:「そう。自分で決めたの。私は言い出したら聞かない性格だから(笑)。入居まであんまり急なので家族もみんなびっくりしてたのよ。」

――実際に暮らしてみてどうですか?

間瀬さん:「割り合いのびのびできるわね。テレビ見てると老人ホームのイメージってすごいじゃないですか。部屋にときどき監視の人が来たり細かい規則とかうるさくって。

ここ、そういうのあまりないですからね。お部屋も個室でけっこう広いんですよ。きれいだし、前に遊びに来た友達がホテルみたいねって言って驚いていましたよ。」

約11畳の居室には、収納家具などを標準装備している【約11畳の居室には、収納家具などを標準装備している】

間瀬さんは早朝4時に起きて、時代劇『暴れん坊将軍』を観るのが日課。その後詩吟のおけいこをしたり、掃除をしたりして過ごします。からだを動かすと朝ごはんをおいしく食べられるからだそう。

お昼はさまざまなレクレーションに参加したり、テレビドラマを観て過ごしたり。寝る前にはセルフストレッチも怠りません。「やっぱり人ばっかり頼らないで、自分でやらないとね。」と言って笑います。

間瀬さん:「スタッフの方も親切ね。だから自分からいろいろ相談するようにしています。そうするとちゃんと教えてくれますよ。こう言うとお世辞になっちゃうけど、ホーム長の吉村さんはなんでも話しやすいわね(笑)。」

――最後に吉村さんと間瀬さんのお二人から、これから入居を希望される方へメッセージをお願いします。

吉村さん:「たとえばある方が100年生きた中の、最後の最後にこの場所を選んでいただけたってことが、すごく光栄なことだと思います。入居すれば良いこともそうでないことも、いろんなことがあると思います。そういった日々の生活を、心を尽くしてサポートさせていただきます。」

間瀬さんからは、先輩としてこんなアドバイスを。

間瀬さん:「入居してわずかな期間で施設を嫌いにならないことですね。少し居てみてはじめてそこの良さがわかりますから。いいところが必ずあるんだから、生活に慣れてその良さをひとつでもはやく見つけることだと思います。」

取材を終えて:さりげない日常の中にある温もり



今回の取材でいちばん印象的だったのは、間瀬さんが私に語ったこの言葉でした。

「私はここで死ぬことになっているんですよね(笑)。すっかりここの雰囲気に慣れちゃったし、もうどこも行きたくないですよ。」その語り口があまりにも軽やかで、ああ、間瀬さんにとってここは安心して自分を委ねられる居場所なのだな、と感じました。

自宅のように穏やかで心からほっとできる場所。そんな居心地のよさが生まれる理由のひとつは、入居者とスタッフの間に確かな信頼関係が育まれているからだと思いました。みなさんも、ぜひ一度『ツクイ・サンシャイン成城』で老人ホームの居心地の良さを体感してみてはいかがでしょうか。

(記事中の内容や施設に関する情報は2016年12月時点の情報です)