大阪・京都・兵庫・奈良で住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を運営し、デイサービスや訪問看護事業、調剤薬局の経営まで幅広い事業を行う株式会社ライフケア・ビジョン。2021年に大阪府吹田市に高齢者向けの賃貸マンション「シニアアップデートマンション ライフケア吹田」を完成させ、新規事業をスタート。業界で注目を浴びています。

新規事業としてシニア向け賃貸マンション事業を始めることになった理由、そして最新のICT/IoT技術を使った見守りシステムなどについて、取締役副社長の大前さんにお話をお伺いしました。

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今、日本に足りないのはアクティブシニアにふさわしい住まい

――新しい事業をはじめられたきっかけについて教えてください。

大前さん:弊社は大阪・京都・兵庫・奈良で介護施設の運営をしています。近年、元気だけれども施設に移り住みたいというご相談が増えてきました。「施設ならいざというときに安心」「夫婦ふたりには今の住まいが大きすぎる」など、理由はさまざまです。しかし、私たちが運営する介護施設にご入居できるのは要介護の認定を受けた方だけです。つまり、介護保険サービスの利用者が対象で、こうしたご相談には応えられません。

現在、日本の65歳以上の高齢者のうち介護認定を受けていない、いわゆる「元気高齢者」と呼ばれる方々は約8割を占めると言われています。こうした方々の受け皿となる住まいが今の日本社会には少ないのではないか。そう気づきました。


――介護度に関係なく入居できる介護施設やシニア向け分譲マンションなど、元気な高齢者向けの住まいもありますが…。     

大前さん:たしかに介護度を問わず入居できる介護施設はあります。ただ、介護保険サービスを使わずに利益を出す必要があるため、どうしても高額になりがちです。また介護施設であれば食事や入浴のスケジュールも決められていますし、どうしても集団生活のルールに従うことが増えてしまいます。それではアクティブシニアの方のライフスタイルには合いませんよね。

一方、シニア向け分譲マンションに住み替えるとしても、数千万円で購入しなければならず、それだけの金銭的な余裕がないという方は大勢いらっしゃいます。

これは日本の住宅産業が抱える大きな問題でもあります。子どもたちが独立した後の住まいが自分たちのライフスタイルに合わなくなっているのです。そんな方たちに、これまで通り自由な生活ができ、金銭的にも負担の少ない住まいを提供したい。そう考えた結果、シニア向け賃貸マンション事業を始めようということになりました。



――「賃貸」へのこだわりがよくわかりました。さて、元気とはいえ、シニアにとって気がかりなのは病気や事故などの健康に関わる問題だと思いますが… 。

大前さん:その通りです。そこで私たちは遠隔の「見守りシステム」を導入することにしました。介護施設では見守り作業を主に介護スタッフが行いますが、このマンションではスタッフを置かずとも、最新の技術が見守りを代行してくれます。たとえば、ベッドに「睡眠センサー」が付けられているのですが、これはすでに約10年前から弊社の介護施設に導入されています。日本でもいち早く、施設の全居室に取り付けを行いました。

これはパラマウントベッド社の「眠りSCAN」という医療機器で、異常を検知すると施設内の介護ステーションに通知されます。このシステムを導入することで、夜間勤務のスタッフの負担が大きく軽減しました。

また、入居者様の健康状態のデータが自動で蓄積されることで、日常的な管理はもちろん、スタッフ間の引き継ぎがスムーズなどのメリットも大きい。こうした成功体験もあり、シニア向け賃貸マンション事業においても最新のICT/IoT技術を導入することにしました。



最新のICT/IoT技術を使った、画期的な見守りシステム

――ほかにどのような技術が使われているのか教えてください。

大前さん: 日本初の「浴槽の自動排水システム」を導入しました。高齢者にとって入浴はヒートショックにより意識を失うリスクが大きいと言われています。安心・安全に入浴するために、体調異常時には自動排水を行い、万一のときには救急手配まで行うシステムを取り入れました。

順を追ってご説明しますね。まず浴室には非接触センサーがあります。これにより入浴しているだけで心拍・呼吸・体動のチェックをすることができます。そして心拍が乱れているなどの異常を検知するとアラームが鳴ります。アラームは自分で止めることができるのですが、もし20秒以上鳴り続けると、自動的に排水が始まります。



自動排水が始まったことは、弊社の見守りセンターに通知され、同時に弊社のスタッフが持つスマートフォンへも通知が届くようになっています。通知を受け取ったスタッフは、ナースコールを通じて、入居者さまに呼びかけを行います。そして、呼びかけに応答がない場合はすぐさま救急車の手配をする、という一連のセーフティネットが働くしくみになっているのです。





――危険を察知してから、救急の手配までが実にスムーズですね。

大前さん:はい。先ほどご説明した通知を受けるスマートフォンを持っているのは弊社の訪問看護事業のスタッフですから、より的確な判断がしやすい状況になっています。スマートフォンであれば外出先からでも各居室への呼びかけができます。

これは緊急時にはとても大事なことです。たとえば救急隊員がマンションに入室したくてもご本人が出られない状況では中に入れません。そんなときは連絡を受けたスタッフが玄関のスマートロックのワンタイムパスワードを隊員に伝えることで、スムーズに居室に入ることができ、スマートフォンで遠隔で誘導することまで可能です。

他には先ほどお話しした睡眠センサーも全居室のベッドに取り付けています。これによって、心拍や呼吸などのデータが担当部署のiPadに随時共有されるようになっています。もし、異常を検知したら、入浴時の緊急事態と同様に訪問看護スタッフのスマートフォンに通知が届き、ナースコールで安否を確認、必要に応じて救急手配を行います。また、これらの見守りシステムは特許申請中です。



――ITの技術をうまく使いながら、いざというときには介護のプロの力をきちんと活用できる。そこが御社ならではの強みですね。

大前さん:弊社には多くの優秀な訪問介護スタッフがすでに多く在籍しております。入居者さまに緊急事態が発生したとき自社のスタッフに繋げられることは、入居者さまにとっても、またそのご家族さまにとっても大きな安心材料ではないかと思います。

また、もし入居者さまが要介護認定を受け、有料老人ホームなどの介護施設への住み替えを検討される場合は、弊社が運営する各施設へのご案内が可能です。その場合も、入居者さまの担当ケアマネジャーと連携を取り、スムーズな転居ができるようサポートさせていただきます。介護施設という次の住み処までご案内できるのは、施設運営を行う弊社だからこそできることです。こちらのマンションへ入居することで、将来の「万が一の出来事」にも備えられるのです。


――そのほかに特徴的なものはありますか?

大前さん:ファインバブル専業メーカーのサイエンス社と共同開発した「ミラバスガーディアン」という浴槽を完備しています。ファインバブルという特殊な泡が毛穴の奥の老廃物などに吸着し、お湯に浸かっているだけで体の汚れが取れます。高齢になると、自分の体を洗うことが身体的に難しくなったり、おっくうになったりします。でも、これなら浴槽に浸かるだけでOK。ラクだし、健康的だし、一石二鳥ですよね。

そのほか、スマートフォンで施錠・解錠ができるデジタルキーや通販で注文した荷物が玄関先まで配達できる仕組みもあり、快適な生活をサポートしています。



楽しみを見つける場所づくりをサポート

――マンションの1階にオープンカフェのような空間がありますが、どういう場所でしょうか。

大前さん:ここは弊社のNPO法人「WAIKI(わいき)」が運営する、厨房設備とテラスを備えた多目的スペースです。入居者さまが何か新しいことに挑戦したり、仲間と楽しい時間を過ごしたりできる場所としてご用意しました。入居者さまなら誰でも食事会や趣味活動などに無料で使っていただくことができます。

最近、「フレイル」という言葉がよく使われていますが、フレイルには、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的な変化や社会的なつながりの減少も影響要因に含まれます。たとえ快適さが担保されても、ひきこもりがちになるのは良くありません。他者と交流し、社会参加できる場所づくりを行うのも私たちの大切な使命だと考えています。そうした思いもあり、高齢者の生きがいづくりと地域社会と供生することを目的にNPO法人「WAIKI」を設立したのです。




この場所では定期的に「子ども食堂」も開催しています。今後は健康体操の場など、地域に開かれたオープンスペースとして、コミュニティの起点となる場所にしていきたいと思っています。入居者さまにもぜひご参加いただき、地域のボランティアの方たちと一緒に、より良いコミュニティを築いて欲しいと思っています。





――住まいを含めたライフスタイルの提案ですね。

大前さん:「シニアアップデートマンション」という名の通り、これからの老後をアップデートする暮らし方や生き方を提案していきたいと考えています。人生100年時代になり、どう元気に楽しく老後を過ごすのかは、多くのシニア世代が直面している問題です。

シニアの方々は人生経験も豊富ですので、その経験や知識を若い人に伝えていって欲しいと思います。しかし、自分からアクティブに社会と接点を持とうと思っても、案外難しいものです。私たちは、そのきっかけづくりをお手伝いしたいのです。



もちろん、マンション自体も新しい技術を取り入れ、どんどんアップデートしていく予定です。現在、注目しているのがレーダーによる呼吸や心拍を計測する技術です。自動車の自動運転システムにも応用されている技術で、部屋の天井につけておくだけで居住者の心拍などの健康データが計測できるそうです。こうした最新の技術を取り入れて、さらに見守り機能のレベルをアップデートしていきたいと考えています。

よりアクティブな暮らしを叶えたいと考えているシニアの方や遠距離で親の見守りが心配な子世代の方は、興味を持たれましたらぜひ一度ご見学にお越しください。最新の設備について、じっくりとご説明させていただきます。ご希望の方には宿泊体験もしていただけますので、お問い合わせください。ご本人さまもご家族さまも安心できる快適な暮らしをぜひこのマンションで実現させてください。     


(記事中のサービス内容や施設に関する情報は2022年1月時点の情報です)