どうしようもない毒親の介護。「親を捨てる」と決めた時に大事なこととは?

実際に親の介護が降りかかったら、子どもの側はどうしたらいいのか? ましてや自分を長年傷つけてきた、憎き「毒親」だったら? 

「毒親」を介護する子ども側の苦悩や葛藤をリアルにつづった『毒親介護』(文藝春秋)を上梓した、ジャーナリストの石川結貴さん。「どうしようもない毒親なら、『捨てる』という選択肢もある」と言います。

毒親を持つ人も、そうでない人も……。親の介護と向き合う上で大切な心構えや、介護を楽にするためのヒントを数多くの家族問題を取材してきた石川さんにたっぷりと伺いました。

今回のtayoriniなる人
石川結貴さん
石川結貴さん ジャーナリスト。家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに書籍の刊行、雑誌連載、テレビ出演、講演会などで幅広く活躍。著書に『スマホ廃人』(文春新書)、『ルポ 居所不明児童~消えた子どもたち』(ちくま書房)、『毒親介護』など多数。日本文藝家協会会員。

自分の生活を守った上でケアプランを作成

――前回の記事で語っていただきましたが、親をなんとか説得して要介護認定を受けられたとしても、ここからがいよいよ介護の本番なんですよね。

石川
そうですね。介護度に合わせて、どのような介護サービスを受けるのか? ケアマネージャーさんと相談しながらケアプランを作成していきますが、自分たち子世代の生活を守った上で介護を進めていかないと、子も親もいずれ立ち行かなくなります。

例えば、「普段会社員として働いているから、簡単に休めない」「遠方に住んでいるため、毎日の見守りはできない」など、率直に自分の状況や事情をケアマネさんに話したほうがいいと思います。

――自分の状況や事情をはっきり主張していいんですね。

石川
もちろんです! もし言わないままケアプランを作られてしまったら、仕事を度々休まざるを得なくなったり、遠方からちょくちょく帰らなければいけなかったりと大変なことに。早晩、生活が破たんするでしょう。

実は私も、父が一人暮らしをしていて、居宅介護の支援を受けているんです。月1回、病院のへの通院があるのですが、居宅支援なのでヘルパーさんに付き添いをしてもらうことができず、「ご家族にお願いしたい」と言われてしまいました。

でも、実家まで往復1万円程かかる距離で、さらに私の仕事上、いつ依頼が入るか読めない状況……。「付き添いするのはかなり難しい」と、ケアマネさんに正直に伝えたところ、「それなら自費でヘルパーさんを頼むこともできますよ」と教えてくれたんです。自費でお願いすると1万円程かかりますが、いずれにせよ私が付き添っても交通費だけで1万円はかかるので同じだなと。それ以上に往復の移動もなくなり、負担も軽減されて相当助かっています。

――事情を伝えることで、代案を出してくれる可能性もあるわけですね。例えば、「親と不仲でずっと疎遠だった」など家族の込み入ったことも伝えたほうがよいのでしょうか?

「昔、親に虐待されていた」という事情も正直に

石川
プライベートなことを言うのは、はばかられるかもしれませんが、伝えたほうがいいです。「子どもの頃に虐待されていた。親とは何十年も会っていない」とか、「アルコール依存で手がつけられない状態だった」とか……。「ずっと憎んでいて、もし同居することになったら、自分が親を虐待してしまうかもしれない。だから一緒に暮らすのは到底無理です」などと正直に言ったほうが、結果的に親も子も幸せかもしれません。

その上でケアマネさんが、「そういうことでしたら、在宅での介護はやめてショートステイを利用しましょう」などと、現実に合わせたプランを作ってくれると思います。

――自分がどこまでならできて、これ以上は無理という線引きも大事ですね。

石川
本当そうです。本には書けませんでしたが、実際介護をしていて、たまらず親に暴力をふるってしまった、ネグレクトをしてしまったという人もいました。介護は決してきれいごとでは済まされません。特に自分にとって毒親ならば、なおさら現実をしっかりと見据えたうえで「できないことはできない」と、線引きをしていくことが肝心です。

もちろんケアマネさんからも「この部分は対処できませんか?」と言われることもあるでしょうから、多少の折り合いはつける必要はあると思います。

今は地域で介護者の会や家族会など、様々な介護のコニュニティがあり、そこで相談に乗ってくれたり、有益な情報を得たりすることもできます。何より心の支えにもなるでしょう。スマホ一つで情報を得られる時代なので、自分一人で苦悩を抱え込まないでほしいですね。

「親を捨てる」と決めた時に大事なこと

――ご著書にありましたが、究極「親を捨てる」という選択肢もあると。

石川
はい。どうしようもない毒親で介護したら自分も親も破滅する……。そういう場合は「捨てる」という選択もあるでしょう。ただ、要介護状態にある親を放置すれば、保護責任者遺棄罪に問われる可能性もありますから、まずは地域包括支援センターなど行政に相談に行くのは大前提です。事情を話してみて、「じゃあ、こういう施設がありますよ」と何かしらの案が出てくるはずです。

――「捨てる」とはいえ、完全に関係を断ち切るわけではないということですよね。

石川
そうです。「捨てる」と言うと過激に聞こえますが、私がお伝えしているのは親を完全に放置して見捨てるということではなく、「一定の距離を確保してみてはどうですか?」ということなんです。

親に施設に入ってもらうにしても、契約のための保証人になったり、身元引受人になったりすることは避けられません。距離を保った上で、月に1回ぐらいは面会に行くとか、一切会わなくても月に1万でも2万でもお金を出すとか。いざという時に看取ってお葬式だけ出してあげるというのでもいいと思うのです。

最後まで憎み続けて、亡くなった時に「あの人、やっと死んだよ。せいせいした」とダークな想いだけが残るのか。それとも自分ができる範囲で関わって、「まぁ色々あったけど、なんとか最後だけは送り出せてよかった」と思えるのかでは、その後の人生が変わってくると思うんです。本当の意味での納得ではないにしろ、自分なりに「ここまではやった」という想いがあれば、清々しく生きられる気がします。

親からの愛情や承認を求めて介護を背負うパターンも

――毒親と一線を引けず(捨てるに捨てられず)、むしろ懸命に介護をしてしまうケースもあるようですね。

石川
毒親のもとで育った人は親に愛されなかった、認めてもらえなかったという独特の心理があります。「せめて死ぬ前に一言謝ってほしい」「最後にありがとうと言わせたい」など切実な想いがあるからこそ、懸命に介護を担ってしまう。親を捨ててしまったら、その一言が得られなくなってしまうからです。

本人も心の底で「こんな親、面倒を見るに値しない」とよくわかっているけれども、子どもにとって親からの承認や愛情は何にも代えがたい重みがあるものなのです。だからこそ、どんなにひどい親でも離れられないんですよね。

――どうしたらその状況に希望を見出せるでしょうか?

石川
本人も捨ててしまえばいいとわかってはいるけれども、抜け出せない状況にありますから、親が死ぬまで介護はやめないでしょう。でも、そんな親ですから、優しい言葉の一つも出てこない可能性は高い……。

親に認めてもらえなくても、感謝の一言がもらえなくても、最終的には自分で自分のことを認めてあげてほしいですね。「あんなにひどい親だったけど、なんとか面倒を見て、葬式も出してあげた。私、よくやったよ」って。そうして自分で自分を認めることが救いになると思います。

 第一に、自分の人生を大事にしていい!

――石川さんのお話を聞いていると、もっともっと自分の人生を大事にしていいんだなと思えてきます。

石川
そうですか、うれしいですね。やっぱり自分の人生を大事にできたほうが、相手の人生も大事にできると思うんです。「お父さんにはショートステイに行ってもらっているけど、その分、私は好きな仕事を続けさせてもらっている」と思ったら、親に優しくもなれるし、感謝もできますから。

ショートステイから帰ったら、おいしいごはんでも作ってあげようかな、とかね。一昔前の「親孝行が大事」という呪縛から解放されてもいいのではと思います。子どもには子どもの人生があるので、第一に自分の人生を考えていいと思います。

本にも書きましたが、そもそも子どものいない人は、介護してくれる子どもがいないわけですからね。そういう視点を持つと、「親は私が面倒を見なくてもどうにかなるわ!」って、ほどよく境界線を引けて、過剰な罪悪感からも解放されると思うのです。

<毒親もそうでない親も、介護が楽になるヒントが満載の書籍>

毒親介護

著者:石川結貴
出版社:文藝春秋
発売日:2019年11月20日
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編集・ライター:伯耆原良子
撮影:佐々木睦
 

伯耆原良子
伯耆原良子 フリーライター・エッセイスト

人材ビジネスの営業や企画を経て、日経ホーム出版社(現・日経BP社)にて編集記者に。2001年に独立後、雑誌や書籍、Web等で執筆多数。企業のトップから学者、職人、芸能人まで1500人以上に人生ストーリーをインタビュー。働く人の心に寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。12年に渡る、両親の遠距離介護・看取りの経験もある。介護を終え,夫とふたりで、東京・熱海の2拠点ライフを実践中!

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