介護離職しないために。私が「苦手な親」の介護に備え、行動したこと

この記事は「苦手な親」の将来に備え、私が10代の頃から自分のために取り組んできた「介護対策」について書いています。親への感謝や愛は書かれていません。最初から最後まで、介護についての利己的な話をします。

親子関係が良好で、今でも週に1度は連絡を取るようなご家庭の方は、ご覧にならないことをおすすめします。

昔から、親と話し合うのが苦手です。
 
ただ、世の中ぐるっと見渡してみると、親と真面目な話をするのが得意な方も多くはなさそうですし、私と同じ思いの方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
 
親と話し合いがしづらい背景は、さまざまだと思います。私の場合は、親がスピ系(=スピリチュアル系。神や霊的な存在、風水などを信じ込み、生活の中心をスピリチュアルな信仰に置く人のこと)なため、好き嫌い以前に会話が成立しませんでした。
 
例えば「東に凶兆あり。関東の大学へ進学してはならぬ」という親を「アメリカから見れば日本は西なので」と説得した苦労を思い出すだけで、胃がキリキリします。ちなみに親はアメリカへは行ったことがありません。

10代の頃の私は親に対して、包丁を突きつけての立ち回りや、自殺未遂などの行動でしか自分を守れませんでした。しかしそのことで親から「狐憑き」として除霊の儀式を受け続けることになり、さらなる悪循環に。
 
幸い、16歳で実家を出ることができ、それからはずっと別居。以降はなるべく「いい感じの疎遠」を目指し、数年に1度だけの帰省で済ませています。
 
それでも、帰省後の数日はメンタルをやられて寝込みます。前回は実家に2泊しましたが、帰宅後はストレスが最大値。泣きながら古新聞に包丁を突き立てて感情を処理しました。

 嫌な親でもいつか要介護 その苦痛を和らげるために

さて、ここまでご覧になった方は思ったんじゃないでしょうか。「なんで絶縁しないの?」と。
 
その通り、長らく絶縁を考えた親子関係でした。ただ、私には大好きな姉が2人いて、親を捨てれば姉に負担がかかると考え、思いとどまりました。
 
とはいえ「この親が認知症になったらどうするんだろう」と不安で仕方がありません。スピ系×認知症なんて、思いつく限り最悪の組み合わせですし。
 
うちは長寿の家計なので、一族はあらかた90代まで生きています。しかし、人が健康で自立した生活ができる年齢(健康寿命)は、男女ともにおおよそ70代前半くらいまで(2018年3月に厚生労働省が公表した資料 より)。長寿家系で寿命が延びるほど、その後の「介護されて生きながらえる期間」はさらに延びるかもしれません。
 
介護が長引けば、介護者は仕事を辞めざるを得ないかもしれない。姉も私も失職したくない。そんなわけで、私の「介護対策」は10代から始まりました。

親が要介護になって動けなくても、自分で買い出しできる仕組みづくり

 多くの10~20代にとって、介護に対してはかなりあいまいなイメージしかないでしょう。しかし私は親族が祖父母を介護する風景を見て、インターネットが使えない世代の弊害を存分に見てきました。
 
例えば買い出し。

「ほうじ茶が飲みたい」
「違う、このブランドじゃないの。別のがいいの」

といったやりとりで何度もやり直しが発生し、ボツになった品物であふれ返るわが家。たかが買い出しに、介護される本人も家族も疲弊しきっていました。
 
「自分で好きなものを買う自由」がないことが、こんなに不自由だとは。こんなやりとりが続けば、いつか家族の方が倒れてしまいます。

パソコン知識ゼロの母に、基本から根気よくレクチャー

そこで私は、親にひたすらインターネットの使い方を教えていきました。
 
まずは、Amazon・楽天でのお買い物です。母はそもそもパソコンを使ったことがなく、Windows 2000での根気良いサポートが必要でした。
 
「あのね、パソコンの中には事務机が丸ごと入っているの。パソコンの中でフォルダを開くと現実と同じように書類や写真を保管できるのね。これなら、かさばらないし便利でしょう。欲しい画像もすぐに見つかるよ」
 
「マウスっていうのは、手の代わり。右のボタンを押しながら引っ張って、ほら写真が移動したでしょう」
 
「インターネットっていうのを使うとね、よそのお家へ行けるんだよ。ネットにはたくさんのお家があってね、そこでいろいろ展示してるの。ここは商品を売ってるね。商品を売ることもできるし、回覧板で交流もできるのよ」
 
と、地味で根気強いレクチャーを繰り返しました。スピリチュアルとITリテラシーなんて相性悪いだろうと思っていた私ですが、すぐに母へスピリチュアル系のサイトを見せ、「そっちの世界」へ耽溺してもらいました。
 
パソコンからウェブサイトを見たり、買い物したりできるようになるまでに10年かかりましたが、幸いそのタイミングでiPadが登場。マウスを介せず触って操作できる機能性に、母はしっかりハマりました。ありがとう、スティーブ。

「電話代が浮く」の一言でLINEの導入がスムーズに

iPadを使いこなして数年……次のステップは、LINEの導入でした。ここで私は、姉と共謀します。
 
「お姉ちゃんも私も、LINEでしかやりとりしないから」と強硬手段に出たのです。最初はメールでのやりとりと並行していましたが、親からのメールを全て無視する暴挙により、ついにLINE中心のやりとりへ移行。
 
さらに、上の姉は海外在住者。姉とリアルタイムで話したいとき、国際電話の代わりにLINEの無料通話やGoogle ハングアウトを使えば電話が浮くと知って、親はすぐ動きました。「安くなる・タダになる」より人を動かすものはないと、痛感した次第です。
 

そうして、親にインターネットを教え始めた2000年から20年が過ぎ、今年はついにGoogle カレンダーでのスケジュール同期と、Zoomを導入。リアルタイムで画面を共有しながら通話できる楽さときたら!

少なくとも両手が動く限りは、自分で何とかできる親になりました。

実は母より手ごわかった父のITバリア

さて、実はITリテラシー・ゼロで始めた母よりも、会社でパソコンを使っていた父の方が、もろもろのツールを使いこなすまでが大変でした。
 

父は会社を定年まで勤め上げ、現在は再就職。普段からパソコンを使います。ですがその実情は、メールとMicrosoft Office(Word, Excelなど)は使えるものの、それ以外はからきし。会社から支給されていたのはガラケーで、いまだに指を連打してのメール通信が手一杯。ガラケーに固執する父は、音声入力で楽々LINEを送信できる母とは対照的でした。
 
そんな父が心変わりするきっかけが、タクシーアプリでした。私がイギリスにいた2016年ごろは、タクシーアプリ「Uber」の全盛期。私には姉が2名おりますが、上の姉はイギリスの永住者。当時、親がイギリスに住んでいる姉家族に会いに来たため、タクシーで案内しました。
 
その道中、スマホでポチポチするだけでタクシーを予約し、数分後に乗車できることに父が感動。ついに「スマホもいいかもな……」と言い出しました。

いかんせん親世代、だからといってすぐにスマホへ移行できるほどフットワークは軽くありません。が、それから数年にわたり「スマホはいいよ」と説得し続け、なし崩しのガラケー卒業を狙っています。

カネがなければ疎遠にもできぬ 親に金を稼がせろ

 

 ITリテラシーの問題が片付いたとしても、「カネ」の問題が残ります。
 
親に金がなければ、どうあがいても誰かの家で介護するしかありません。昨今は病床も減っており、老人が病院で死ぬのすらぜいたくになりそうです。親との疎遠を目指す身としては、在宅介護だけは避けたい。
 
そのためには金……! 金が必要っ……!
そうでなきゃ私は……生涯……奴隷だ!
(ざわ… ざわ…)
 
そんなわけで、私は20代から決意しました。この親に、どうにかして金を稼がせねばならない、と。
 
幸い、親は典型的な団塊の世代。「生涯現役!」がモットーの、バリバリ仕事をしたい派でした。しかしながら、スピリチュアル系に偏り過ぎた母は、戦略立案が苦手。
 
そこで私がP&Gで培ったマーケティングのスキルを、ここで活用することになります。人生、何がどこで役立つか分かりませんね……。
 
親は65歳でベンチャーを立ち上げています。そこで私はターゲット顧客の選定、売上アップ策の立案を担当。親が野村證券さんと同じく営業のお手紙を毛筆でしたためそうだったところ、ペライチの自社ウェブサイトを作り、相手先のお問い合わせフォームからメールする営業に変更。

とはいえ手書きのお手紙が刺さる会社もあると考え、親と同年代の社員が多そうな会社へは毛筆のお手紙、最近できた会社へはお問い合わせフォームへメールを送る営業へと切り替えました。おかげで、営業にかかる時間が激減しました。
 
とはいえ、親がスピ系なので、私の提案よりは神の思し召しに従ってしまいます。私の提案が通る勝敗は3割くらいです。しかし、苦労は買ってでもしておくもの。親のスピリチュアルに全ての戦略をひっくり返される経験のおかげで、自分の仕事ではどんなに理不尽な営業先に出会っても楽に感じられるようになりました。(良くない)
 
最終的には数千万円くらい純利益を出して、引退してくれないかなあ……と願っています。親に金があれば、老人ホームに入れます。そうすれば姉も私も、仕事を辞めないで済む。身もふたもありませんが、これが現実です。

あらかじめ家族と介護のことを話し合っておく

最後に、何よりも大事なのが家族との話し合いです。冒頭に書いた通り、私はスピリチュアルな親との話し合いが大の苦手。とはいえ、いま泣きながら古新聞へ包丁を突き立てるくらいのストレスを受けようとも、終活は後回しにしたらもっとつらくなると確信していました。
 
親に「あなたは、いつか死ぬ。それに、その前の10年は自由に動けないのよ。どうしたいの? 私に文句を言われながらウンコのついた尻を拭かれたいの? それが嫌ならいくら必要か分かってる?」と事実を突きつけ、選択肢があるうちに動いてもらいました。(私はこんな口調ですが、愛があったらもう少しましな言い方ができるのでしょうか)
 
引退後の再就職だって、できるうちしかやれません。60歳ぐらいから死について話しておかないと、のちのち地獄を見るのです。
 
そして、連携できる家族がいるならば「親の介護、誰が主に担当する?」という、重過ぎる話題に触れておくべきです。介護の主な担当を誰かに任せるなら、他の家族は仕送りをしたり、遺産の割合を介護者に多くしたりと、介護を引き受けた人にもメリットがあるようにしておかねばなりません。
 
そんな物騒な話はできない……と、介護の話題を避けてきた仲良し家族がもめにもめて、遺産相続で便座1枚まで奪い合った話を聞いたことがあります。
 
介護を担当する家族は、目の前のタスクで手一杯になりがち。だったら他のメンバーはケアマネジャーさんへの連絡、国の補助などの情報収集、そして現金の仕送りなど別の負担を背負う。そうすることで、重荷は分担できるのです。

愛がある方が、いっそつらいのかもしれない

そんな準備を淡々として、ようやく一息つけたのが今年。苦手な人と、苦手な話をするのはしんどい。そう思う半面、「親を愛している方が、こういう手続きはつらいのかもしれない」と思わされました。
 
私がここまでドライに動けているのは、親子で相性が悪かったから。いわば、偶然の産物です。愛がある方が、いっそつらいのかもしれない。親の資産リストをGoogle スプレッドシートの共有フォルダにぶち込みながら、今はそんなことを考えています。
 

トイアンナ
トイアンナ

大学卒業後、外資系企業で約4年勤務。 その際消費者のヒアリングへ参加したことを期に、現在までに1000名以上の人生相談を聞く。現在はライターとして独立。

Twitter@10anj10ブログトイアンナのぐだぐだ トイアンナさんの記事をもっとみる

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