【はじめての方へ】COPD|推定500万人が罹患している呼吸器の病気

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は主にタバコなどの有害物質を長年吸い込み続けることで、肺に炎症を起こす病気です。悪化すると着替えだけでも息が切れることもあります。

40歳以上で喫煙歴がある場合は要注意です。ここではCOPDの症状や原因、検査や治療、予防について、わかりやすく解説します。
 

COPDは細い気管支と肺胞で炎症が起きている

COPDを発症するメカニズムをみていきましょう。正常な肺は空気の通り道である気管支が徐々に枝分かれして、無数の風船のような小部屋に行きつきます。

この小部屋が肺胞と呼ばれる、酸素と二酸化炭素の交換場所です。COPDはタバコなどの有害物質によって、細い気管支と肺胞で炎症が繰り返されます。この2つの炎症が組み合わさって、呼吸がしづらくなるのです。

気管支の炎症

細い気管支(径が約2mm未満)で炎症が起こると、気管支の壁が厚くなります。これに加えて痰が気管支の内側にたまるようになるため、空気の通り道が狭くなります。
 
同じように気管支で炎症が起こる病気として喘息がありますが、喘息はもっと太い気管支や気管で炎症が起きており、炎症の原因も異なります。

肺胞の炎症

正常な肺には肺胞が約3億個ありますが、肺胞の壁に炎症が起こることでこれが壊され、徐々に肺胞の数が減り、肺の中に大きな穴ができます。この状態を「肺気腫」と呼びます。肺全体が伸び切ったゴムのように張りがない状態になり、息は吸えても吐き出す力が弱くなります。

COPDの症状と増悪(ぞうあく)

日本にはCOPDの患者が、じつは500万人ほどいると推計されています。COPDはゆっくりと進行するため症状を自覚しにくく、治療の開始が遅れてしまうことも少なくありません。

40歳以上で喫煙歴がある方の場合は特に注意が必要です。また最近は幼児期に喘息や呼吸器の感染症を繰り返した場合、大人になってからCOPDになりやすいこともわかってきました。

また症状の重症度とは別に、「増悪(ぞうあく)」とよばれる状態があります。COPDの管理をするうえで増悪を予防することは大切です。
ここでは重症度 別にどのような症状が出てくるかをみていきましょう。

軽症~中等症

ほとんど無症状の場合もありますが、進行するにつれ長引く咳と痰がみられます。症状の出始めは風邪と間違われることも少なくありません。しばらくすると、同じ年齢の健康な人に比べて、身体を動かしたときに息が切れやすくなります。

中等症~重症

病気が進行すると日常生活に支障をきたすようになります。具体的には次のような症状・所見が出現します。

  • 着替えや洗面などの日常動作でも息切れする
  • 低酸素によるチアノーゼ(唇、顔面、指先などが青くなる)、呼吸不全
  • 呼吸で体力を消耗することによる食欲不振や体重・筋肉の減少
  • これらが続き、筋力が低下したことによる寝たきり

増悪(ぞうあく)

今まで行っていた治療法では対応できないほど息苦しさ、咳、痰などの症状が急に悪化して、追加の治療が必要な状態を増悪と呼びます。増悪を起こすことで、COPDの状況は一段と悪くなります。細菌やウイルスの感染が原因となるため、日頃の感染予防がとても重要です。

診断には呼吸機能検査や画像検査をおこなう

喫煙歴があって長引く咳や痰、息切れが気になるときは、かかりつけ医や呼吸器内科を受診しましょう。子どものころに重症喘息などを経験している人もCOPDになりやすいので要注意です。

COPDの診断には、過去の病歴や長年の喫煙歴の有無を問診で確認したうえで、空気の通り道が狭くなっているか、他の病気はないかなどを検査で確認することが必要となります。

呼吸機能検査

「スパイロメーター」という機械を使った検査です。どれくらいの空気を吸い込めるのか、1秒間にどのくらいの空気を吐けるかなどを調べることで、気道が狭くなっているか、息の吐きづらさがあるかを確認します。

レントゲン・CT

肺気腫や気管支の炎症が起きているかなど、肺の状態を確認します。またCOPDがあると、健康な人に比べて肺がんのリスクが3〜6倍高くなるといわれています。このような合併症の有無も確認します。

血液検査・パルスオキシメーター

血液の酸素の濃度を測ります。

そのほか、COPDが重症化すると心臓に負担がかかるため、必要に応じて心臓の検査を行うこともあります。

治療は症状改善とリスク減少を目指す

COPDは完治を望めない病気ですが、きちんと治療ができていれば病状はコントロール可能です。治療は現在の症状の改善と体力の維持(運動能力・身体活動性)、将来のリスク(主に増悪と合併症)を減らすことを目的に行われます。

ここでは治療についてみていきましょう。

禁煙

まずはすべきことは禁煙です。禁煙は症状の改善や増悪の予防につながり、死亡率を減少させます。「もう年だから今さら」とあきらめる必要はなく、いくつになっても禁煙の効果は望めます。

薬物療法

息切れ、咳、痰などの症状や病態に応じて、気管支を広げる吸入薬・内服薬、痰を減らす薬、吸入ステロイド薬を組み合わせて使います。

ワクチン接種

インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種で、感染をきっかけとした増悪を予防します。

呼吸リハビリテーション

息苦しさから活動量が減り、さらに健康状態が悪くなることを防ぎます。病気や自己管理法について学ぶセルフマネジメント教育、運動能力の維持・向上を図る運動療法、栄養状態の悪化を防ぐ栄養療法を行います。

在宅酸素療法

血液中の酸素の濃度が低く重症な場合は、在宅酸素療法を行います。

COPDのほとんどは禁煙によって予防可能

COPDの最大の原因は喫煙です。日本では患者の約90%に喫煙歴があり 、発症率は年齢やタバコの量とともに増加します。そして、禁煙によってほとんどのCOPDは予防可能といわれています。受動喫煙もCOPDの原因となり得るため、ご自身だけでなく家族の健康のためにも、喫煙している人は禁煙を始めましょう。

医療機関では、飲み薬または貼り薬を使用した禁煙治療を受けることができます。治療期間は約3ヶ月で、5回通院します。一定の条件を満たしていれば健康保険が適用されるので、気になる人は一度、かかりつけ医や呼吸器内科で相談してみましょう。

イラスト:坂田 優子

この記事の制作者

矢込 香織

著者:矢込 香織(看護師/ライター)

大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。

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noteKaori Yagome*看護師

Twitter@KaoriYagome

茂木 孝

監修者:茂木 孝(呼吸ケアクリニック東京・所長)

東京医療学院大学客員教授
日本内科学会認定総合内科専門医
日本呼吸器学会専門医・指導医
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会代議員
呼吸ケア指導士

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