気管支炎とは?原因や治療法、予防法
空気の通り道である気管支で炎症が起こり、咳や痰などの症状が現れる病気をまとめて「気管支炎」と呼びます。悪化してさらに奥で炎症が起こると肺炎となって命を脅かすこともあるため、特に高齢者は気をつけたい病気です。ここでは気管支炎の原因、診断方法、治療法について解説します。
気管支炎とは
鼻や口から吸った空気は喉を通り、気管・気管支を通って肺までたどり着きます。
一般的な風邪はこのうち、喉(上気道)で感染・炎症が起こって咳や痰などの症状が現れる病気をまとめたものです。
一方、気管支炎は風邪よりもさらに奥の気管支(下気道)で炎症が起きることで症状が現れる病気の総称です。感染だけでなく、慢性的な病気がきっかけとなることもあります。
気管支炎は急性気管支炎と慢性気管支炎に分かれる
気管支炎は症状が現れてからどのくらい経過したかによって、「急性気管支炎」と「慢性気管支炎」に分かれます。
急性気管支炎は咳などの呼吸器症状が数日〜数週間続いているもので、ウイルス感染が原因となることがほとんどです。
一方、慢性気管支炎は呼吸器症状が数週間から数ヶ月間続きます。急性気管支炎と違い感染症よりも、タバコや大気汚染が原因となるCOPD( 慢性閉塞性肺疾患)などの慢性的な病気が原因です。
症状が出る期間 | おもな原因 | |
急性気管支炎 | 数日~数週間 | ウイルス感染など |
慢性気管支炎 | 数週間から数ヶ月 | COPDなど |
気管支炎の原因
急性気管支炎は大半がインフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナなどのウイルス感染が原因で、特に秋から冬に発生しやすくなります。
いわゆる風邪はウイルス感染が原因で発生した喉(上気道)の炎症ですが、さらに奥の気管支(下気道)にまで炎症が広がると気管支炎となります。また細菌感染が原因の気管支炎もごく一部あります。
この他に、慢性気管支炎の原因にはCOPDなどの病気が元々あり、これが気管支炎を発症するきっかけとなります。
気管支炎の症状
気管支炎の主な症状は呼吸器症状です。咳や痰、呼吸時に「ゼーゼー」と音がする喘鳴(ぜいめい)、息苦しさや息切れがみられます。
ウイルス感染による気管支炎の場合、喉の痛みや鼻汁、寒気などの風邪症状が現れたあとに、咳などの呼吸器症状や発熱・筋肉痛などの全身症状がみられることがあります。ときには喘息発作や肺炎に移行する場合があります。
診断方法と検査
気管支炎の診断は現れた症状をもとに行われますが、炎症を起こした原因を探る目的で検査も実施されます。
感染症が疑われる場合には、感染を起こしている場所や原因となるウイルス・細菌を特定するため、レントゲン、血液検査、喀痰培養(痰の中に菌などがいないかを調べる検査)などを行います。
また、慢性的な病気が疑われる場合には、その病気に合わせて呼吸機能検査などの必要な検査を実施します。
気管支炎の治療方法
急性気管支炎はほとんどの場合でウイルスが原因のため、その治療は現れた症状を抑える対症療法が中心です。咳に対して鎮咳薬(ちんがいやく)を使用したり、去痰剤(きょたんざい)を使って痰を出しやすくしたりします。
細菌による感染が原因と考えられる場合には、抗菌薬を使うこともあります。
このほか、感染以外が原因であれば、その原因に合わせた治療を行います。たとえばCOPDの場合は禁煙を促したり、気管支を拡張する薬を処方したり、自宅で使える専用の機械を使って酸素の投与を行なったりします。
予防は感染症対策と禁煙
気管支炎は悪化すると肺炎へ移行して命を脅かすこともあるので、高齢者は特に注意が必要です。長引く咳など気になる症状があるときは、かかりつけ医に早めに相談しましょう。
また、気管支炎にならないように気をつけることも重要です。感染症には十分注意して、日頃から十分な栄養と睡眠をとり、部屋が乾燥しすぎないように適度な加湿をして、手洗いやマスクの着用を徹底しましょう。インフルエンザが流行する前にワクチンを打つことも重要です。
喫煙は気管支炎を引き起こす慢性的な病気の原因となります。医療保険を使って禁煙治療を行うこともできるので、まずはかかりつけ医に相談しましょう。
イラスト:坂田 優子
この記事の制作者
著者:矢込 香織(看護師/ライター)
大学卒業後、看護師として大学病院やクリニックに勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、一般生活者のヘルスリテラシー向上のための情報発信を行っている。
監修者:茂木 孝(呼吸ケアクリニック東京・所長)
東京医療学院大学客員教授
日本内科学会認定総合内科専門医
日本呼吸器学会専門医・指導医
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会代議員
呼吸ケア指導士