質問

むかし犬を飼っていた要介護の母は、ドックセラピーやアニマルセラピーをしている老人ホームに興味があるようです。介護施設で行われるアニマルセラピーとは、具体的にどんなことをするのでしょうか?
またどんな効果が期待できますか?

回答
竹内 恵子

アニマルセラピーとは動物を通して人に癒しを与えることで、病気や認知症などの症状緩和に効果が期待できる療法のことです。動物とのふれ合いによって意欲が湧いたり、自信をもつことができて会話が増え、表情に変化が見られるなど、様々な可能性があるようです。
犬を飼った経験のあるお母様は、触れ合ったときに心が落ち着いたりストレスが軽減するなどの癒しの体験をされているのでしょうね。

ここでは、老人ホームで行われるアニマルセラピーについて解説していきます。これをきっかけに「ペット入居可」や「ホーム犬のいる施設」などを探すきっかけになれば幸いです。 竹内 恵子(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

【目次】
  1. 1.老人ホームとアニマルセラピー
  2. 2.アニマルセラピスト
  3. 3.高齢者が動物と触れ合うことの効果
  4. 4.老人ホーム側のアニマルセラピーについての認識と理解
  5. まとめ

1.老人ホームとアニマルセラピー


動物と人間とのふれあいは、医療ではなし得ないことも可能にするといわれ、レクリエーションやイベントなどでアニマルセラピーを取り入れる老人ホームが増えてきました。

ボランティアが動物を連れて老人ホームを訪問したり、施設へセラピー犬を派遣する専門の団体もあるので、多くの入居者が動物と触れ合うことができます。

また、外部から動物を連れてきてもらうことで、老人ホームが飼育していなくても動物とふれ合えます。老人ホームなどの介護施設に訪問してセラピー活動を行う場合、犬を用いるドッグセラピーが主流です。

セラピーに用いられる場合は下記に該当する犬種であり、専門的な訓練がされています。

①元気と穏やかさを兼ね備えた犬種
②アレルギーを起こしにくい
③毛が抜けにくい、匂いがほとんどない犬種

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QOL(生活の質)の向上や精神の安定を目的としたレクを行う

老人ホームにおけるアニマアルセラピーの活動内容をみていきましょう。
・挨拶を交わして体に触れたり撫でたり抱いたりする
・ボールやおもちゃを投げて取らせる
・動物の名前を呼んで、そばに来させる   


               

動物の世話をする体験をする

・一緒に散歩をする
・餌やおやつを与える

それでは、動物と共に訪問活動をする人達をご紹介します。



2.アニマルセラピスト

セラピー活動を行う人をアニマルセラピストといい、老人ホームを訪問するセラピストたちは、高齢者の心のケアをする専門家ともいえます。

動物の知識や世話・健康管理・コントロールはもちろん、高齢者のQOL(生活の質)の向上を目指した行動なので、福祉や介護に関する知識も習得しています。

それでは、アニマルセラピストの活動が、高齢者にどのような効果を及ぼすのでしょうか。みていきましょう。



3.高齢者が動物と触れ合うことの効果


精神的・身体的リハビリの補助

動くことが億劫になったり、動くきっかけが少なくなった高齢者が、動物とふれ合うことにより、能動的に動物を撫でたり、近寄ったりすることで、精神的・身体的リハビリの補助となります。

歩行訓練の一環として、セラピードッグとホーム内を一緒に歩きますが、セラピードッグは歩幅をゆっくり合わせて歩くよう訓練されていますので、散歩のように無理なく楽しく歩行できます。

また、セラピードッグと一緒に歩くため、リハビリに励もうという前向きな気持ちになります。

中には、腕を動かしづらかった入居者も「犬の背中にブラシをかける」などの目的ができることで、上半身を自然に動かせることもあります。

このような心理的効果により意欲が向上し、免疫力アップにも繋がります。


情緒の安定

動物にふれることは、リラックス状態を生む神経を刺激する生理的効果があり、情緒が安定するといわれています。


責任感と意欲の向上

動物と一緒にいることで「世話をしなくては」と使命感を持ったり、動物から「頼られている」という責任感が自然とわき意欲が芽生えます。


社会的効果

セラピードッグと接することで、入居者同士が犬の話題で盛り上がるなど、コミュニケーションが活発になります。

それでは、アニマルセラピーを取り入れている老人ホームを選ぶ際に、どのような点を確認したらよいのかみていきましょう



4.老人ホーム側のアニマルセラピーについての認識と理解

アニマルセラピーを実施するホーム側にも事前準備は必要です。老人ホームはアニマルセラピー導入前に下記内容を確認し準備しておく必要があります。

・入居者の中に「動物が苦手」「アレルギーの有無」などを事前に確認し、健康管理にも十分配慮しているか。

・ホーム側で活動に協力できる人手の確保がされており、職員にもアニマルセラピーに対する知識教育が行われているか。

・セラピーに参加する動物のストレスも考慮し、休憩する場所を用意しているか



まとめ

愛情を注げる存在がそばにいるということは、生活に輝きが増しより豊かな生活を送ることができます。

高齢になり身体機能が低下すると、介護されることが多くなり、今までの健康な自分と比べて自信をなくし、落ち込むこともしばしばあるのではないでしょうか。

アニマルセラピーでは、逆に動物の世話をする立場に変わり、人なつっこい動物達を「可愛い」と慈しむ感情と、「世話をしてあげなければ」といった使命感や役割意識も自然と生まれます。

動物たちの無償の愛情を受け、自然と顔がほころびいきいきとした表情になります。発語が多くなったり、歩ける方は一緒に散歩をすることができ、足腰の筋力の維持や向上が見込めます。

このように、アニマルセラピーは、ふれあいによる心の癒しや身体機能の向上といった効果が無限にあるのではないでしょうか。老人ホームに入居されてからも、動物とふれあうことができたら素晴らしいと思います。

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このQ&Aに回答した人

竹内 恵子
竹内 恵子(福祉サービス第三者評価・評価調査員)

株式会社ATコンサルティング/AFP
金融商品仲介業、内部管理責任者、宅地建物取引士
資産運用相談、介護事業経営コンサル会社専任アシスタント