義父母の介護をメインで担っていても、お嫁さんは「相続人」ではありません。
※本特集で紹介する制度などに関する情報は、2020年2月末時点のものです。
「お嫁さん」は、相続人ではない!
義父母の介護をメインで担っていても、お嫁さんは「相続人」ではありません。
相続人でないと、どうなる?
このケースの場合、法律的に信太郎さんの財産を相続できるのは、配偶者の美代子さん、次男の信二さんです。長男の配偶者である浩子さんには、財産を相続する権利はありません。
民法(相続法)が改正されたのは、ご存知ですか? 前回の改正は昭和55年ですから、約40年ぶりです。今回の法改正の一つに、特別寄与制度の創設があります。創設とは、新しく創られることです。
なぜ、新しい制度を創る必要があったのでしょうか?
相続専門の税理士である廿野幸一(つづの こういち)さんのお話しを伺って、ポイントを整理します。
特別寄与制度とは、相続人でない親族の介護などの貢献について金銭が請求できる制度です。ここでのキーワードは、「相続人ではない親族」です。
「相続人ではない親族」とは、どんな人のことをいうのでしょうか?
4コマの場合だと、浩子さんご自身です。夫の両親と同居をしていて、妻が介護の担い手である。これはよくあるケースだといえるでしょう。人生100年時代、義理の両親よりも夫が先に亡くなってしまうこともありえます。この時、お嫁さんは「相続人ではない親族」にあたります。
そもそも、「寄与」という日本語自体、使い慣れないですよね? 今、調べてみると、こんな感じの言葉でした。
寄与する: 力を出し切ることで、社会や人の役に立つこと |
力を出し切るって! 「介護の現実」は、力を出し切る感じなことは、容易に想像がつきます。今回の法改正は、「介護などで寄与した分は、相続でも、それなりに評価をしよう」という意味合いの法改正でした。
では、特別寄与制度が創設される前は、どうだったのでしょうか?
改正前は、寄与分は相続人にだけ認められていました。つまり、寄与は「相続権あってこそ」でした。
信太郎さんが亡くなり、長男の信一さんが亡き今は、法定相続人は配偶者の美代子さんと次男の信二さんだけです。信一さんの妻である浩子さんは、たとえ献身的な介護をしていたとしても、「相続」という土俵では、いないも同然。 財産分与の話し合いに参加する権利さえない状態だったんです。
改正後は、親族(浩子さんのような立場の人)が、特別寄与料を請求することができるようになりました。(令和元年7月1日以後に開始した相続から適用されます)。 なお、「親族」とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します。
介護に貢献した人をフォローする制度ができたのは、画期的だと思います。ただ、実際に相続の現場に多く立ち会ってきた私からすると、『いたたまれない人が救われる法律的な手立てがひとつできた』という印象です。
えーっと。 それは、どういう意味ですか? 何か、問題があるのでしょうか?
実際にイメージして頂くとわかりやすいのですが、浩子さんが信二さんに寄与分を『請求』する時点で、多くの場合、ザワっとした雰囲気が出る可能性があります。
喧嘩を売るのか? みたいなね。でも、当事者間で協議をし、まとまる場合は、まだ良いのです。話がまとまらない場合は、家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求する流れとなります。請求期限は、以下の2パターンです。
・特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月以内
・相続開始の時から1年以内
そして、この『請求』をするためには、特別寄与料の金額の算出をする必要があるんです。
寄与の時期、方法および程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して計算
ここで重要になってくるのは、証拠です。つまり、家庭裁判所ではどれだけ介護をしたかという証拠(寄与の時期、方法および程度)を証明する必要があるんです。
でも、そもそも論として、心から介護をしている人は、最初から証拠集めなんかしないですよね? 『介護をした分は、後から請求しよう』と思うような人は、介護となった時点で逃げてしまう……。これが、多くの現実なのではないでしょうか?
では、どうすれば良いのでしょう?
介護が始まる時点で、介護される側の人が遺言を書いておけば、この問題は防げます。『浩子に預金のうち●●を遺贈する』と、介護が始まるあたりで信太郎さんや美代子さんが、こう遺言書に明記しておけば、浩子さんは財産を遺贈することができます。
介護していたのはお金が目的というわけではなかったんですが….
お金が欲しくて介護をしていた訳ではないけれど、介護が終わって、ふと気がつくと何も残っていなかった。かえって、気分の悪い、割り切れない気持ちだけが残ってしまった』という方が一定数いらっしゃるのは事実です。本当に財産が要らなければ、浩子さんは、遺贈を放棄することもできますしね。
そうなんですね。
「あとあと揉める」を防ぐために、遺言書が有効なんです。残された人のために、介護された側の人間が、財産の相続について、決めておく。そして、それを法的に有効な文書にしておく。遺言は揉めるから書くのではなく、書いておけば揉めないんです。自分の介護をしてくれた人を、きちんと法的に守るために必要な書類が、遺言書なんです。
―税理士さんに遺言書を作ってもらう相場はどれくらいですか?
「私が依頼を受ける場合は、相続財産にもよるのですが、30万円が目安です」
―遺言書はいつ作るのが良いですか?
「私は、『遺言の必要性を感じた時に直ちに』と、ご案内しています。知って頂きたいこととしては、遺言書は何度でも書き換えをすることはできますが、法的な効力のある書類なので認知症など判断能力がなくなってからでは作ることができません
イラストレーター、Webデザイナー。
記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。 わかりやすく面白いイラストを心がけています。趣味は登山・キャンプ・ゲーム・インターネット。
ウェブサイト「主婦er」運営。夫は長男、私は長女。「親の介護」が集中する(であろう)家庭の主婦です。双方の両親は、お陰様で「まだ」元気。仕事をしながら息子3人を育てている今、「介護」は脅威でしかありません(笑)。そんな私が、「知りたいこと」を記事にしていきます。
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