入院した時に頼れる存在。MSW(医療ソーシャルワーカー)とは? どんな相談に乗ってもらえる?

皆さんは、身近な人が病院に入院した際、困りごとをどこに相談しますか?

病院に入院した際、必要な申請や手続き、在宅復帰や転院のことなど、悩むことがたくさん出てくると思います。

そんなときに相談ができる、病院の中で頼りになる存在がMSW(医療ソーシャルワーカー)です(※MSWの仕事は、病院によっては別の職種が行っている場合があります)。

今回は、JCHO東京山手メディカルセンターのMSW園田恭子さんに、MSWの仕事について、うかがってきました。

JCHO東京山手メディカルセンター

JCHO東京山手メディカルセンターは、平成26年設立(昭和22年に設立された社会保険中央総合病院から組織変更)された、東京都新宿区にある全418床の急性期病院です。

1日平均1,000人を超える外来通院の方と、1日平均300人を超える入院の方を受け入れています。

病院によってさまざまな名称・機能の相談窓口がありますが、JCHO東京山手メディカルセンターでは、通院時や入院前の相談窓口として、看護師などが対応する総合医療相談室があります。

総合医療相談室では、病気やけがによる受診相談・案内、療養生活に関する不安、介護保険や福祉サービス等の心配ごとを受けつけます。

入院時に相談が必要と判断された方については、ソーシャルワーク室にいるMSWに依頼が入ります。

MSWの園田恭子さん
JCHO東京山手メディカルセンターに勤務する、MSWの園田恭子さん

MSWは園田さんをはじめ全員で3名おります。

MSWは、まず本人・家族など支援が必要な方と面談を行います。

そのうえで病院内の他の職種、例えば、医師、看護師、状況に応じてリハビリ科や栄養科等、地域の医療・介護職、自治体の方などと相談しながら必要な支援を行っていきます。

「相談内容は多岐にわたります。」と園田さんは言います。

一番多い相談はやはり退院支援。高齢者に限らず、いろいろな方の支援があります。

退院支援と一口に行っても、内容は幅広くあります。例えば退院後の行き先。その方の状況によって、在宅復帰の支援を行うのか、リハビリなどのために転院・転所を行うのか、老人ホームなど自宅以外の住処を考えるのかで、支援方法は大きく異なります。

ソーシャルワーク室

その他にも、介護保険や障がい者福祉、各自治体のサービスの申請手続きの相談や、入院中や退院後の療養費や生活費などの相談、退院後の療養生活のこと、退院後の生活の不安など、退院支援で持ち込まれる相談は本当に多岐にわたるそうです。

「最初の相談は、例えば老人保健施設に入所したいという具体的な場所の相談より、家族に迷惑をかけているのが心苦しいなど、今の気持ちをそのままお話しされる心理的な相談の方が多いですね。」と園田さんは言います。

その気持ちに寄り添い、話を聞いていくうちに、相談者自身が自分で困りごとを消化していくそうです。

ソーシャルワーク室相談スペース
ソーシャルワーク室相談スペース

MSWは、相談者が自分で困りごとを解消するところのお手伝いをすることが、とても大事だとのこと。

そんな個別の相談を、MSWは多い時には1日に5件~8件ほど行うそうです。

面談以外の業務もさまざまあります。

例えば、在宅復帰の為の支援では、介護保険の利用者だと、地域のドクターや訪問看護師、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員たちと退院後の生活を想定してサービスの調整を行います。

本人や家族を交えて、病院側の関係者と在宅で支援する側の関係者が一堂に会し、退院前のカンファレンスを行うことも多くあります。

場合によっては、退院支援看護師と退院後の様子を自宅に見に行くこともあるそうです。

転院・転所の為の支援では、その方に合った転院・転所先を一件ずつ探していきます。また、退院時の介護タクシーなど移動手段の手配を行う場合もあります。

院内の他の職種との情報交換も欠かせません。退院支援看護師や医師との打ち合わせ、病院内の各委員会への出席などの業務を日々精力的に行っております。

難病の方の支援では、東京都の難病支援センターを案内して、退院後の就労支援を行うこともあるそうです。

新宿区という土地柄、就労などで来日し、体調を崩して入院された外国人の相談も多いとのこと。その場合も、さまざまな関係機関に連絡をとりながら、困りごとの解決をするそうです。

本当に、多岐にわたる業務内容ですね。

MSWがまとめたソーシャルワーク室の概要
MSWがまとめたソーシャルワーク室の概要

「入院をきっかけにして、何か問題があった時に、そこで浮き彫りになることを、本人・家族と一緒に解決していきたいです。」と園田さんは言います。

ほとんどの方にとって、入院はある意味で、非日常な出来事です。何かとわからないことも多く、見通しが立たないなか、不安になる方も多いと思います。その中で、本人・家族の話を聞き、寄り添い、時には向き合い、入院中・退院後のさまざまなことを一緒に考えて解決してくれるMSWは貴重な存在ですね。

もし、身近な人が病院に入院した際、不安に感じることがあったら、病院の窓口や医師に相談して、MSWにつないでもらいましょう。その不安が少し解消するかもしれません。

次回も、介護や暮らしの頼りになる場所・人を紹介していきます。

JCHO東京山手メディカルセンター
東京都新宿区百人町3-22-1

https://yamate.jcho.go.jp/

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森岡真也
森岡真也 株式会社モテギ新宿ケアセンター長/モテギケアプランニング新宿管理者/主任介護支援専門員/社会福祉士

東京都新宿区で活動する現役ケアマネジャー。 居宅介護支援事業・訪問介護事業・地域密着型通所介護事業を運営する株式会社モテギ新宿ケアセンターを統括している。 本業の傍ら、区内の専門職や住民のネットワーク作りに奔走する。 実は家事・育児が本業との噂もある。

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