2025年 新年のごあいさつ
新年あけましておめでとうございます。
ホームでは毎年元日に「新春の集い」を行っており、ご入居者の皆さまにおいしいお節料理を楽しんでいただいています。その後は、こちらも恒例の館長舞初を披露させていただきました。
本年は長唄『鷺娘(さぎむすめ)』を、ボランティア日舞体操でお世話になっている藤間誉紫子先生に10分に編集していただき、稽古を付けていただきました。皆さま毎回真剣に鑑賞してくださいます。
ご入居者の岡田様が写真を撮影してくださいました(写真の白無垢)。岡田様は昨年、大きなけがが元で数か月の間入院生活を送られましたが、以前のように写真撮影ができるまでに回復されました。
●エピソード ~鷺娘の衣装にまつわる不思議~
2024年夏、20年間ここでお過ごしになられたご入居者の佐藤和子様がご逝去されました。享年91。持病が多い方でしたが、最期は見事な老衰でのお看取りをさせていただきました。
ご逝去後に佐藤様の身内代わりのご友人が鷺の絵柄の着物をお持ちになりました。娘時代、『鷺娘』用にお母様が仕立ててくださった衣装で、60年前に染物屋のご主人が手書きで染めてくれたものだそう。佐藤様から毎年の舞初の話を聞き、そのご友人がタンスに眠っていた着物を持ってきてくださったのです。
優しい色合いのその着物に袖を通すと、いきいきと飛び立つ2羽の鷺が描かれており、日舞用に大きめに仕立ててありサイズは大丈夫でした。せっかくなので、来年は鷺娘を踊ろうか、でも帯はどうしよう……、自分の帯では合わせられるものがないと悩んでいました。
いよいよ12月になり、稽古も進んでいないが衣装は決めなければなりません。数年前に「あなたの趣味でないのは分かっているが、この帯だけは持っていなさい」と佐藤様から預かった帯を思い出しました。もしかしたら。その半幅の帯を着物に合わせると、なんとぴったりであつらえたようです。
このときのために「あなたが持っていなさい」と預けてくださったのではと思いました。佐藤様には礼儀作法から始まりギャラリーの作品飾り付けまで、本当にたくさんのことを教えていただきました。
ホームに勤務して20年になりますが、皆さまとの長いお付き合いの中で不思議なことが起こります。「ご縁はつながっている」、そう確信する瞬間でした。
令和7年1月1日
代表取締役館長 鴨下和美