老後はやっぱり田舎で暮らしたいーー。シニア世代が幸せな地方移住を果たすためのコツ

老後は田舎でのんびり、悠々自適に暮らしたい――。セカンドライフをより実りあるものにしたいと、地方移住や田舎暮らしに憧れるシニア世代は少なくありません。

では、実際に地方に移り住んだ人はどんな暮らしをしているのでしょうか? また、シニア世代が地方移住で注意すべきポイントとは何でしょうか? 

全国45道府県の地域情報を揃え、自治体と連携しながら移住希望者のサポートを行う、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター・理事長の高橋公さんに、シニア世代が幸せな地方移住を果たすためのコツについて伺いました。

今回のtayoriniなる人
高橋公さん
高橋公さん 認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長。1947年生まれ、福島県出身。早稲田大学中退、77年全日本自治団体労働組合(自治労)入職。97年より連合へ出向、社会政策局長に。麻生内閣「暮らしの複線化」研究会委員、菅内閣「新しい公共」推進会議委員、環境省中央環境審議会臨時委員、食を考える国民会議委員、農水省「食と地域の『絆』づくり」選定委員会委員、東日本大震災義援金配分割合決定委員会有識者代表委員、いわき応援大使などを歴任。神道夢想流杖道5段。

悠々自適な田舎暮らしに憧れを持つシニアは多い

――地方移住というとシニア世代が中心というイメージがありますが、最近の傾向はいかがでしょう。

高橋
2008年に始めた調査によると、当センターの利用者(移住希望者)は50代以上が7割を占めていましたが、年々若い世代が増え、2020年には20~30代の利用者が5割を占めるほどになりました。

ただ、全体的に移住希望者の総数が増えているので、シニア世代の人数が減っているわけではありません。地方暮らしへの憧れを持つシニア世代は、以前と変わらず一定数いるのは確かです。

――シニア世代は、移住後どんな暮らしをしている人が多いですか。

高橋
移住の目的として、「田舎で悠々自適に過ごしたい」「こだわりの野菜を作って自給自足に近い暮らしがしたい」という人はやはり多く見られます。

農地付きや広めの庭付きの一軒家を借りて、自分で育てた有機野菜や無農薬野菜を友人知人に宅配で送り、多少の収入を得ている人もいますね。

年金にプラスして、生活に少し余裕を持たせるためにパートタイムで働く人も多く見受けられます。

例えば資格を持っている人は、図書館で司書の仕事をしたり、介護施設でヘルパーとして働いたり。これまでの知識や経験を活かして、地域のカルチャーセンターで講師をしたり、個人で学習塾を開いて子どもたちに勉強を教えたりする人もいます。

現役世代のようにフルタイムで働くというより、自分の好きなことや得意なことをできる範囲で取り組み、地域の人たちとゆるやかにつながっていく。そうして自分なりのライフスタイルを追求しながら、移住生活を楽しんでいる人が多いのではないでしょうか。

地域の人間関係になじめるかが移住成功のカギ

――まさに地方暮らしの憧れですね。移住先として人気のエリアはありますか。

高橋
当センターのアンケート調査によると、長野や山梨、静岡県が「移住希望地ランキング」の上位に度々入っていますが、中でも長野は以前から根強い人気があります。

おそらくシニア世代の多くが、若い時に登山やハイキングで現地の美しい自然に触れ、「いつか住んでみたい」と憧れを持ち続けていたのかもしれません。

また、長野は早い段階から移住者を受け入れていることもあり、先輩移住者が数多く暮らしています。移住者同士の横のネットワークがあるので、新しく住み始めた人もなじみやすいという利点はあるように思います。

やはり地域の人間関係になじめるかが、その後の暮らしを楽しめるかどうかの重要なカギになりますから、先輩移住者が多い、あるいはコミュニティが発達している地域は、比較的移住しやすいと言えるでしょう。

――シニア世代が地方移住をする際に注意したほうがいいこととは何でしょう。

高橋
シニア世代に関わらず、どの年代でも言えることですが、「誰と、どこで、何をして暮らしたいのか?」、自分の理想の暮らしのイメージをしっかり持つことが肝心です。

夫婦で移住したいのか、それとも単身で行きたいのか。また、「田舎で畑を耕して自給自足の生活がしたい」「海辺の街でのんびり暮らしたい」など、自分が望む暮らしの形を思い描くことが幸せな移住のスタート地点になります。

ただ単に、地方だと生活費が安く済むからとか、景色や空気がいいからとか、漠然としたイメージだけだと後で後悔しかねません。実際に住んでみたら、気候や食文化が合わない、地域の風土やコミュニティになじめない、などミスマッチが起こる可能性があるからです。

特にシニア世代は、自分の健康状態や万が一のことも考慮すべきです。持病がある場合は、適切な医療機関が近くにあるか。車の運転ができなくなった際にバスやタクシーといった、ほかの移動手段はあるのか。また、いざとなった時に介護サービスや施設など、地域の福祉体制がどうなっているか、なども調べておく必要があるでしょう。

自分の希望する暮らしと、抱えている課題(健康状態、収入、運転の可否など)を考慮した移住先選びが重要です。

<シニア世代の地方移住で注意すべきポイント>

1.誰と、どこで、どんな暮らしがしたいのか、理想の暮らしをしっかりとイメージする

2.自分の健康状態(持病の有無)を考慮して、適切な医療機関が近くにあるかどうかを調べる

3.自家用車以外の移動手段があるかどうかを調べる(高齢者専用の町内バスや乗合タクシー、福祉送迎サービスの有無など)

4.万が一の時のために介護サービスや施設など地域の福祉体制について調べる

移住先を決めるまでの大切なステップとは

――それは大事なポイントですね。移住したいと思ったら、どのような手順で行うとよいでしょうか。

高橋
まずはWebや雑誌などで地方移住に関する情報収集をしながら、どういう暮らしがしたいのか(誰とどこで何をして暮らしたいのか)、イメージをしておくことが大切です。その上で、自治体などが行っている移住セミナーや相談会に参加し、気になる地域の詳しい情報を集めて、吟味していくとよいでしょう。

私どもが運営している「ふるさと暮らし情報センター・東京」では、全国42道府県2政令市の相談員が常駐し、個別の移住相談を行っています。また、各道府県による移住セミナーも年間500回ほど、オンラインを中心に開催しています。

そうした個別相談やセミナーに参加することで、移住後のリアルな暮らしぶりや住宅、仕事の状況など、より詳しく知ることができると思います。

また、移住先を決定する前にぜひやっていただきたいのが、現地でのお試し移住です。

各自治体では、空き家を活用した移住体験ツアーを行っているケースが多く、1泊1,000円~1,500円ほどの安価で宿泊することができます。お試し住宅に1週間あるいは、1カ月など一定期間、住んでみると、その土地の風土や暮らしが自分にマッチするかどうかが判断できるはずです。

そこでこれから先も暮らしていけると自信が持てたら、移住を決めて家探しを始める。そうすることでリスクが軽減され、本当に納得いく移住が実現できるでしょう。

最初の住まいは「空き家バンク」を活用するのも手

――なるほど。移住先では、住宅を購入するケースが多いのでしょうか。

高橋
いえいえ。当センターを利用する移住希望者の7割近くの人が、「賃貸物件」を望んでいます。

やはり移住先でいきなり住宅を購入するのはリスクが高いですからね。もし不動産の購入を考えているなら、2、3年程度賃貸で住んでみて、生活の見通しがついてからがよいでしょう。

自治体の多くは、それぞれ独自の「空き家バンク制度」を整備しているので、そうした空き家バンクに登録して家を探すのも一つの手です。

まずは空き家など、比較的安価な賃貸住宅を借り、例えば夫婦2人ならどんな間取りや広さが住みやすいのか、毎月の収支はどのぐらいになるのか、など自分たちの生活状況や要望をしっかりと把握してから物件購入を考えても遅くはありません。

東京・有楽町にある、ふるさと暮らし情報センターでは全国の地方移住に関する資料やパンフレットを常設するほか、各地域の相談員がより具体的な地方暮らしの情報を提供。移住後のライフプランの立て方なども相談に乗ってくれる

――移住先を決めるのも家を購入するのも、少しずつ段階を踏んでいくことが成功の秘訣ですね。

高橋
そうですね。先ほどもお伝えしましたが、大切なのは自分が地方移住で何を求めているのか、理想の暮らしのイメージを持つことと事前の情報収集です。

自治体によっては、引っ越し代や家賃、住宅の購入・改修に補助金を出してくれるなど、さまざまな支援をしているところがあります。シニア世代を歓迎している地域もあるので、そうした情報にもアンテナを張っておくと、移住先選びの判断材料になると思います。

ぜひ、自分の希望やライフスタイルに合った移住先を見つけて、幸せな地方暮らしを実現していただきたいですね。

伯耆原良子
伯耆原良子 インタビュアー、ライター、エッセイスト

日経ホーム出版社(現・日経BP社)にて編集記者を経験した後、2001年に独立。企業のトップから学者、職人、芸能人まで1500人以上に人生ストーリーをインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。12年に渡る、両親の遠距離介護・看取りの経験もある。介護を終え、夫とふたりで、東京・熱海の2拠点ライフを実践中。自分らしい【生き方】と【死に方】を探求して発信。

Twitter@ryoko_monokakinotenote.com/life_essay 伯耆原良子さんの記事をもっとみる

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