突然の母さんの手術! たーくんはどこに預ければ…?- 岡崎さんちのダブルケア(4)

認知症の父さんと、まだ幼い長男のたー君を抱えたライターの岡崎杏里さんは、育児と介護を同時進行で行う、まさに「ダブルケア」の当事者です。

育児も介護も大変な状況がクローズアップされがちですが、幼い孫と認知症のじいちゃんが織りなす日々は、意外にも笑える場面が多かった!岡崎さんちの日常をお届けします。

母さん、手術することになったから!
私が立ち会わなきゃだけど…
不安をブログにつづる
義両親の旅行は来週だった!

その電話はあまりに突然でした。

「明日、緊急手術することになったから」と母さん。「はっ? どういうこと?」と詳細を聞いてみると…。

母さんは以前服用していた薬の副作用で若くして白内障になり、両目にその手術を受けています。私が緊急里帰りしていたときも、目の調子が悪いことを訴えていましたが、さらに調子が悪くなった左目が網膜剥離になり、緊急手術をしないと失明すると眼科医に言われたというのです。

それはたー君が生後3か月ごろの出来事。疲労やストレスもその一因らしく、私の里帰りで無理をさせたことも原因になっているかもしれません。

緊急性を訴える医師に「1日だけ時間をください」と懇願し、1日のうちに父さんをショートステイにお願いしたり、入院の準備と入退院の付き添いはご近所さんにお願いするなど、いろいろと自分で段取りをしていました(ご近所さんには感謝しかありません)。

一方で、手術には私が家族として同意のサインや立ち合いをしなくてはなりません。そのあたりのことは母さんの頭から抜けているようでした。

翌日に迫った母さんの手術と、生後3か月のたー君のことをどうしたらいいのか。

頼りにしているヒロさんのご両親は海外旅行で不在、近くに親戚はおらず、この時点ではママ友もいませんでした。何か策がないかと考えていると「ファミリーサポート(※)」をいうサービスを利用してピンチを乗り越えた友人のことを思い出し、彼女にその詳細を聞き、地域の事務局に電話をしました。

ところが、利用には事前登録が必要で、首の座っていない子どもは対象外と断られてしまいました(※地域により異なる)。ですが、事務局の人から、役所が緊急時に子どもを預かってくれるNPOを知っているという情報を教えてもらい、最終的にそのNPOがたー君を預かってくれるという流れになりました。

ところが、急にたー君を何も知らない人へ預けることへの不安が押し寄せて来たのです。そこで、たー君が寝ている隙に頭の中を整理するために現状をブログにアップしていると、奇跡!? が起きたのです。

海外旅行中の義母さんから「大変なことになっているじゃない!」と電話が。私は旅行の日程を違いしていたようです。偶然、ブログを見た義母さんが、その後すぐに駆け付けてくれました。それにより無事に母さんの手術に立ち会うことができました。

このときは奇跡的に困難を乗り越えることできました。だけど、一人でさまざまなことを担っているダブルケアラーの緊急事態などに対するサポートは、ないに等しい状況です。身をもって、そんなダブルケアラーの現実を感じた出来事でした。

※「ファミリー・サポート・センター事業」のこと。内閣府の「地域子ども子育て支援事業」の一環として、全国の市区町村で実施中の子育てを地域で相互援助する活動

漫画/栗生ゑゐこ

茨城県つくば市出身。池袋の近くと横浜市の内陸部を経て、つくば市在住。書籍編集・ライティング→IT関連企業を経て、2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動中。
書籍・雑誌・WEB・広告などの媒体をメインにイラストを提供しています。著書に「赤子しぐさ」「赤ちゃんのしぐさ」(共著)があります。

岡崎杏里
岡崎杏里 ライター&エッセイスト

ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)として、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。2013年に長男を出産。ホームヘルパー2級。著書に23歳から若年性認知症の父親の介護、ガンを患った母親の看病の日々を綴った『笑う介護。』や『みんなの認知症』(共に、漫画:松本ぷりっつ、成美堂出版)などがある。

ブログ続・『笑う介護』 岡崎杏里さんの記事をもっとみる

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