孫の影響でリハビリを頑張った父。介護度は下がったが…?- 岡崎さんちのダブルケア(2)

認知症の父さんと、まだ幼い長男のたー君を抱えたライターの岡崎杏里さんは、育児と介護を同時進行で行う、まさに「ダブルケア」の当事者です。

育児も介護も大変な状況がクローズアップされがちですが、幼い孫と認知症のじいちゃんが織りなす日々は、意外にも笑える場面が多かった!岡崎さんちの日常をお届けします。

たーくんのことが大好きな父さん
デイサービスの体操の時間に積極的に参加するように!
その甲斐あって介護度が要介護4→3に改善!
でも、要介護3だと4万円分の介護サービスが使えなくなるっ!!

独特な「指パッチンあやし法」で、相変わらず無表情のまま初孫たー君をあやし続ける父さん。デイサービスから帰宅しても孫の前を素通りしたり、孫よりも食事に夢中になったり、家族が増えてもあまり変化がないように見えていました。

ところが、デイサービスのスタッフさんが送迎の際に、こっそり教えてくれたのです。

「岡崎さん、『孫が生まれたんだよ』って、みんなにニコニコしながら報告していますよ。最近は、どんなに誘っても参加しなかった体操に参加するようになりました」

デイサービスでは“じじバカ”なおじいちゃんに! 大嫌いな体操に参加だって!?

主治医からも、「最近、調子がいいみたいだね。糖尿病の数値も安定しているし、最近、活き活きしているんじゃない」と、お褒めいただくほどに。

さらにたー君が1歳になったころに行われた介護保険の要介護度の認定調査では、調査員に対して「孫が生まれてから、調子がいいんだ」と自らもその変化に気が付いていることを知り、私と母さんはのけぞりました。

そして、父さんは要介護4から要介護3になってしまいました。介護度は、数字が少ない方が介護状態が軽いということなので、父さんの調子が良いことが数字の上でも裏付けられたということです。なんと、孫パワーで介護状態が改善しちゃったではありませんか! またもやダブルケアの奇跡!?

一方で、要介護4が要介護3に改善したということは、公的な介護保険でひと月あたりに1割負担で使える限度額が減ってしまい(※1)、それにより使える介護サービスも減ってしまうのです。

要介護4ならば30万8,060円分までのサービスを1割で利用することができますが、要介護3だと26万9,310円までしか1割負担で利用することができません(※2)。これまで利用していた介護サービスを4万円分も切り詰めないといけないのです。

(その分を10割負担で使用することも可能ですが、そんなの経済的に岡崎家では無理)

父さんの介護状態が改善していることは喜ばしいのに、なぜかもやもやする母さんと私。いいことばかりじゃないのね、ダブルケアによる弊害!?

そして、母娘は「孫が生まれたからって、あんまり頑張らなくてもいいからね~」と、父さんの耳元で悪魔のささやきをするのでした……。

※1 収入により2割負担の場合もあり

※2 限度額については2018年11月現在のものです

漫画/栗生ゑゐこ

茨城県つくば市出身。池袋の近くと横浜市の内陸部を経て、つくば市在住。書籍編集・ライティング→IT関連企業を経て、2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動中。
書籍・雑誌・WEB・広告などの媒体をメインにイラストを提供しています。著書に「赤子しぐさ」「赤ちゃんのしぐさ」(共著)があります。

岡崎杏里
岡崎杏里 ライター&エッセイスト

ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)として、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。2013年に長男を出産。ホームヘルパー2級。著書に23歳から若年性認知症の父親の介護、ガンを患った母親の看病の日々を綴った『笑う介護。』や『みんなの認知症』(共に、漫画:松本ぷりっつ、成美堂出版)などがある。

ブログ続・『笑う介護』 岡崎杏里さんの記事をもっとみる

同じ連載の記事

おすすめの関連記事

介護が不安な、あなたのたよりに

tayoriniをフォローして
最新情報を受け取る

ほっとな話題

最新情報を受け取る

介護が不安な、あなたのたよりに

tayoriniフォローする

週間ランキング

ページトップへ