これまでは恋愛結婚を経て、家族で支え合いながら老後を過ごすという形が理想として語られることも多かったと思います。昨今は「友人同士でシェアハウスをする」「結婚せずに一人で悠々自適に過ごす」など、老後に対してさまざまな選択肢が浮かび上がりつつあり、議論が進むことが待たれます。
ただ、友人同士など親しい人たちの間でも老後のことを話す機会はそう多くなく、漠然と考えるのを避けている人も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は「契約結婚」という形を選び、2018年から夫(仮)のサムソン高橋さんと同居されているエッセイストの能町みね子さんと、2019年にシェアハウスでの暮らしを卒業し、一人暮らしをしているブロガーのphaさんに、暮らしの選択肢や理想の老後について、自由に対談していただきました。
※取材は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じた上で実施しました
──能町さんは、2016年頃からサムソン高橋さんと恋愛感情のない「結婚」を前提にお付き合いを始め、2018年からは同居もされています。それまではひとり暮らしだったと伺っていますが、そもそも人と一緒に住もうと思ったのはどうしてだったんでしょう?
能町みね子さん(以下、能町)
ひとり暮らしが嫌になった、というのに尽きますね。私はそれまで20年くらいひとりで暮らしてたんですが、最後の方は家事もろくにしなかったし、生活サイクルもめちゃくちゃで、朝5時とかに寝ていて……。しかも朝まで起きて仕事しているわけでもなく、2時くらいから先はただ暗いことを考えてるだけみたいな。だから、誰かいたらいいのにって思ったんです。人といると、すこしはその辺も気を使ったりするんじゃないかと思って。
──同居を始められて、生活は変わりましたか?
能町
かなりしっかりしましたね。食事はサムソンさんに作ってもらっちゃってるんですけど、朝起きてごはんを食べて、ちょっとダラダラしてから家を出ても、遅くて11時くらい。ひとり暮らしのときなんて、ダラダラしていたら(午後の)2時半とかになってたので。
phaさん(以下、pha)
ああ……なりますよね。分かります。
能町
夜ももう1時台には寝てますね、最近。2時だとちょっと遅くなっちゃったなって感じで。
──健康的ですね。
能町
健康的ですよね。生活サイクルがしっかりしたのは、間違いなくひとり暮らしじゃなくなったからです。向こうがけっこう朝早いので、それに合わせちゃうんですよね。
──逆に、ふたり暮らしのデメリットってありますか?
能町
あるのかなあ。
pha
そんなに喧嘩もしないって言ってましたよね。
能町
うん、全然しないです。あえて言うならテレビのチャンネルが私の好みではないくらい。でも私もそんなにテレビ見る方でもないので、そこまでデメリットとは感じてないです。
──最近は、サムソンさんとの関係がちょっと「家族化」してきたことへの不安も感じると、過去のインタビューではお話しされていました。
能町
会話の内容がいわゆる「家族」っぽい感じになってきた、っていうのはあるんですよね。「今日こんなことがあって……」みたいな、オチもなにもないけど誰かに聞いてほしい、みたいな話を帰ったらとりあえずしちゃってます。でも、ひとりだとそういうのネットとかに書いちゃう気はするので、聞いてもらう相手がいるのはいいのかもしれない。
pha
それはいいなあ。僕ももう最近、ひとりで家で過ごすのつまんないなって思うようになってきて。
──phaさんは逆に、長年運営してこられたシェアハウスを離れて、2019年からひとり暮らしをされてますよね。
pha
そうです。僕は能町さんと逆で、シェアハウスに飽きたというか。それまでは人をいっぱい集めてワイワイやるのが楽しいと思ってたんですけど、だんだんそれにも疲れてきてひとり暮らしをしてみた感じです。でも2年くらいたって、能町さんがさっき言ってたことがわりと分かるようになってきた。最近いつも5時とか6時まで起きてしまってて。
能町
ああ、やっぱりそうなっちゃう……。
pha
ちょっとそうなってきちゃってますね。最初の頃はひとり暮らしの自由さが楽しかったけど、もうやりたかったこともだいたいやったし……家に一人でいるとネットを見るか本を読むかゲームをするかくらいなんですけど、これがずっと続いていくだけならそんなに面白くないなっていう。
能町
早いですね、飽きちゃうの。
──phaさんには1年前にもこの『tayorini』で取材させていただいたんですが、そのときはたしか、「将来にとくに不安はない」とお話しされてました。
pha
読み返してみたんですけど、あのときの僕楽しそうだなあって思います。当時は、ひとり暮らしも始めたてだし、趣味のバンドもやり始めたばっかりだったんですよね。もちろん、バンドはいまも楽しいけど、もう2年やってるので最初の頃のワクワクはなくなってきた。最近はやりたいこともそんなにないし仕事をやる気もないので、そうなるともう、ひたすら自堕落になっていくだけで、この先どう過ごしていったらいいか不安になる感じはでてきましたね。
──phaさんは同じインタビューのなかで、能町さんの『結婚の奴』を読み、「恋愛感情のない相手との結婚・同居」もありかもと思ったとおっしゃっていました。ひとり暮らしに飽きたいま、そういう選択肢も考えられていたりしますか?
pha
ありかもしれない。おもしろそうですよね。僕はそもそも、愛し合うふたりがつくる幸せな家庭みたいなノリがなんか苦手で、とはいえひとりは寂しいからシェアハウスに人をいっぱい集めてたところがあって。
──じゃあいままで、ふたり暮らしを検討したことはなかった?
pha
なかったですね。ふたりで暮らすとなると、恋愛みたいな魔法っぽい結びつきがないと無理なのかな、でも僕はそういう魔法はちょっと苦手だな、と思ってました。でも、『結婚の奴』を読んで、恋愛とかじゃなくても信頼できる人とふたりで住むっていう選択肢がありうるんだ、それもいいかもなって初めて思った。能町さんの結婚は「結婚」といういろいろな要素が合わさっているものを解体して、よさそうなところだけ選んでる感じがすごくおもしろかったんですよね。
──なるほど。能町さんは、「結婚」相手にサムソンさんを選ばれるにあたって、どんなことを重視されたんですか?
能町
嫉妬しない相手、というのは意外と大きかったかもしれないです。これは私の心の狭いところなんですけど、女同士で同居したとして、相手に彼氏ができたりしたらちょっと嫌な気分になってしまいそうだなと思ってたんですよね。でも相手がゲイの人だったら、彼氏ができても別に変な気持ちにならないなと。
それに加えて、趣味の方向性が一致してて、ある程度話が合う人の方がいいなと思ってましたね。……なんかこうやって話してると、言い方はあれですけどけっこう「選抜」してますよね。
──確かに。いわゆる「理想のパートナー」選びっぽいですね。
能町
そうですよね。サムソンさんには、結婚の理由でよく言う「一緒にいて楽」みたいな感覚はあって、すごくちょうどよく一緒にいられる。だからお互いに恋愛感情がないだけで、まあまあふつうの結婚と変わらないような気もして、正直、自分でもよく分からなくなってきてます。
pha
いわゆる普通に結婚している人でも、だんだん恋愛感情じゃなく生活のパートナーっぽくなっていくと聞きますよね。
──能町さんは独身時代といまとで、「結婚」へのイメージって変わったりしましたか?
能町
独身のときは、「結婚してる人」と「してない人」のあいだに線が引かれてるような感じが勝手にちょっとしてたんですけど、いざ自分がいまの形態を思いついて「結婚」と言い張るようになったら、別に大したことなかったなって開き直れた感じはします。結婚していない人が何か欠けてるみたいにはまったく思わなくなった。だから、こういう実験みたいなことをしてみてよかったなって。
──逆に、一度したからもう「結婚」をやめてもいいや、と考えたことはありますか?
能町
うーん……私たちの「結婚」って、法的なものではなく、ただ結婚だって言い張ってるだけなので、やめるとしたら別居くらいしかやり方がないんですよね。でもいまのところ、同居してる現状を変えたいわけではない。だからこれを「結婚」かどうか判断するのは、見てる人側の問題というか。
──なるほど、法的に婚姻関係にあるわけではないですもんね。そう考えていくと、結婚ってなんなんでしょうね。
pha
なんなんでしょうね。
能町
ほんとなんなんでしょうって思います。
pha
法的に見たら、財産をどう共有してどう相続するか、みたいな面が大きそうですけどね。それを除いたら、ほんとなんなんだろう……。
能町
でも「結婚しました」って言い張ってみたら、みんな案外ふつうに受け止めてくれた感じはしていて。私たちが恋愛関係でもなんでもないという事情を分かった上で「おめでとう!」って言ってくれる人もいたりしたんですよね。
──「おめでとう!」と言われるのは、居心地悪くはなかったですか?
能町
なんかおもしろかったですね、これはおめでたいことなのかと思って。
pha
単に「ふたりで一緒に住むことにしました」だけだと「おめでとう!」にはならない気がしますよね。「結婚しました」だとやっぱり「おめでとう!」なのか……。おもしろいな。
能町
そうなんですよ。結婚って言うとみんな問答無用で「おめでとう!」なんだなって。でも考えてみたら、結婚以外に問答無用でおめでとうって言われることってあんまりないですよね、人生のなかで。会社で昇進したとか賞をもらったみたいなことに対しても、さすがに親族みんなが集まって祝ってくれはしないじゃないですか。親族総出で「おめでとう!」って結婚くらいでしか言われないから、みんなあんなにがんばって結婚式の準備とかするのかなって思いました。
pha
確かにあんなに祝われる機会、結婚式くらいしかないですもんね。
能町
そう考えてみたらちょっと納得したというか。あそこまで自分が主役になれる瞬間ってなかなかないから、みんな結婚したがるのかなって。
pha
なるほどなあ。
──話題はすこし変わりますが、将来への不安を最近感じるようになってきたとphaさんはさきほどおっしゃってましたよね。それって、どういった点に対する不安なんですか?
pha
僕はひまなときでも、散歩さえしとけば楽しいしお金もかからなくていいやってずっと思ってたんです。でも最近、散歩に出るのが少し億劫になってることに気づいたんですよ。
能町
疲れちゃうんですか?
pha
そうですね。体力が落ちてるんでしょうね。もともと体はずっとだるかったんですけど、それが最近さらにひどくなってきててやばいのではって思ってます。自分が年老いて60歳とかになるのが昔はイメージできなかったんですけど、このまま体力が落ちていってどんどん老けてきて、いずれ60になるんだなって思うようになってきました。もちろんまだその先もあるんだろうけど。
──能町さんはいかがでしょう。将来や老後への不安ってありますか?
能町
私はもともと体が強くないので、老後のことは不安しかないですね。運動も本当は嫌いなんですけど、ちょこちょこストレッチしたり筋トレしたりはしてます。ある程度お金をかけてメンテナンスしないと、どこかでまた病気になるんじゃないかって思うんですよね。
pha
そうかあ。そういう不安って昔からありました?
能町
ずっとあった気がします。というか昔は、30くらいで病気とかで死んじゃうんじゃないかと思ってました。それがなんか、意外と生きてしまって。
pha
ああ、意外とそうですよね……。このままもう少しだらだら生きそうな感じもしますよね。
──phaさんがおっしゃったような、60歳やその先がイメージできるようになってきたという感覚って、能町さんにはありますか?
能町
そこまではまだないかな。でもこの前、好奇心半分で、サムソンさんとちょっと高めの物件を見に行ってみたんですよ。担当の方がローンの組み方のプランをいろいろ熱心に説明してくれたんですけど、ああいうのって35年ローンじゃないですか。もしもいまローンを組んだら、払い終わるときは70越えてるのかあって。それはちょっと衝撃でしたね。
pha
70……70なんてもう、仕事がどうなってるかとか、全然分からないですよね。
能町
仕事がどうなってるかなんて、3年後とかでも分からなくないですか?
pha
そうですね。なんで自分がいま文章書いて食えてるのかも分からないのに。
能町
なんかそう考えてたら最近、体が動くいまのうちにお金を使っておもしろいことしておかないともったいないんじゃないか、みたいな気持ちになってきちゃったんですよね。
pha
ああ……それもちょっと分かるなあ。
能町
近場にけっこう楽しそうに生活されてる50~60歳くらいの先輩も多いので、そういう人たちを見て気持ちを盛り上げていかないとな、みたいな感覚があります。
──いいですね。周りにはどんな先輩がいらっしゃるんですか?
能町
例えば、文筆家・イラストレーターの内澤旬子さん。内澤さんは私の12歳上なんですけど、ずっと住んでらっしゃった東京から移住して、いまは小豆島でひとり暮らしされていて。自分のやりたいことを追いかけられているいい先輩だなと思ってます。
あと、音楽家の大友良英さんがいまされているバンドに50代~60代の女性もいらっしゃったりするんですが、この前お会いしてすごく楽しそうだなと思いました。
pha
いいなあ。僕はあんまりそういういいモデルが見つかってなくて……。若いときから桜玉吉さんっていう漫画家のエッセイ漫画が好きなんですけど、40歳くらいの頃の玉吉さんが仲間とワイワイ楽しそうに遊んでるエッセイ漫画に、20代の頃の僕はすごく憧れてたんです。でもいま、玉吉さんは60歳で、伊豆に移住されて山のなかにひとりで住んでるみたいで、最近の漫画、自分以外に出てくるのがムカデとか猿とかしかいないんですよね。
──(笑)。
pha
その漫画もおもしろいんですけど、それを読むたびに、僕も60になったら山の中で孤独に暮らしているのかもしれない、それはちょっと寂しいかもな、と思ったりしています。50とか60のひとり暮らしの男の人、みんなどんなふうに暮らしてるんだろう……。
能町
確かにそのくらいの年齢のひとり暮らしの男性って、みなさんあんまり私生活を言わないイメージありますね。
pha
楽しく暮らしてる人、いないことないと思うんですけどね。
──でも、だからこそ60歳になったphaさんが書かれるそういったエッセイを読みたい方はたくさんいると思います。
pha
そうですね。老いぼれて体もボロボロで生活も大変だけど、それでもなんとか楽しくやってるぞ、みたいなのを書きたいですね。
──「老い」の延長線上には、介護をする・されるという問題もあると思います。能町さんは、サムソンさんと介護についての話や老後の話をされたりしたことってありますか?
能町
そこまで具体的にはないかな……。でも、自分に介護が必要になったとして、サムソンさんにはやらせたくないですね。もうちょっとドライな関係の人にやってもらわないと自分がつらくなっちゃいそうなので、そのときはお金を払ってプロの方にしていただく気がします。
pha
申し訳なくなりそうですもんね。僕も親しい人に任せるのは嫌だなって思います。ただ、介護を頼んだりする気はないけど、もしこの先入院したりすることがあったら、ちょこちょこ見舞いに来てくれる人くらいはほしい。そのくらいのネットワークはどうにか維持したいなって思います。
能町
ああ、それはそうですよね。私も同居人がいるおかげで、体調を崩したりしたときは本当に助かってます。でも介護となるとそれが日常になるわけだから、お互いに相当ストレスが溜まりそうですよね。それこそ、うちの親はずっと自分で祖母の介護をしていたんですが、めちゃくちゃ大変そうだったので……。
──そうだったんですね。ご両親はいまもご健在ですか?
能町
いまのところ元気なんですけど、70代半ばなのでもうなにがあってもおかしくないなとは思っています。……でも変な話、自分のことは家族に任せたくないって思うんですが、親の介護は自分がやった方がいいのかなってなぜか思っちゃいますね。
──プロの介護職の方に任せるのにはなんとなく抵抗がある?
能町
そうですね……自分の親のこととなると、そこまで客観的になれないですね。特にうちの親は「自分たちでなんとかする」とか言いそうなので、それはそれで心配になっちゃうし。でも、本当にいざとなったら施設という選択肢もありますし、自分ひとりで全てを抱えようとは思ってないです。
たぶん、家族とか友達に頼ってしまうこと自体がよくないんじゃなくて、頼る相手が少ないのがよくないんだと思うんですよ。もっと大量に頼る相手がいて、いろんなところに分散しているといいのかなって。そうするとだいぶお互いの心理的負担が軽くなる気がします。
pha
そうですね。だから、近所に住んでる友達とかをもっと増やしたいですよね。なんとなく、みんな60代とかになってきたらそういう話も具体的にし始めそうな気がする。
能町
確かに。「もうちょっと歳をとったらみんなで一緒に住もうか」みたいなことをよく言ったりしますけど、実現したらよさそうですよね。
pha
60代くらいになったら、結婚してても離婚したり死別したりしてひとりに戻った人とか、子どもはいるけど家族には頼りたくないみたいな人がちょこちょこ出てくる気がするんですよね。だからそういう人たちがみんなで近所に住んで、連絡がないときは様子を見に行くくらいの感じはよさそうですよね。そういう集まりは作りたいな。
──もっと先の話になりますが、おふたりは終活について考えられたりすることはありますか?
能町
私はあんまり考えたことないですね。そんなに計画的には死ねない気がしてるので、きちゃったらしょうがないと思ってます。なんか、「死ぬ前にパソコンのブックマークは消しとかなきゃ」って冗談で言う人とかいるじゃないですか。でも私、死んだら別に自分のどんなものを見られようが気にならないですね。どうせ自分じゃ分からないですし。
pha
確かにどうでもいいな……。終活って、一般的にはどんなことをするものなんですか?
──お墓の準備とか、財産相続の準備などですかね。
能町
あ、でも確かに財産のことは先に考えておいた方がいいような気がしてきました。財産っていうほどの財産はないですけど、自分のお金を誰に渡すかとかで親族にもめられたら嫌だなとは思います。できるだけ他の人に負担がかからない死に方だといいなとは思いますね。……なんか私、理想は孤独死なんですよ。
──えっ、そうなんですね。サムソンさんと今後も一緒に生活されるとして、看取られたいとはあまり思わないですか?
能町
ああ、そうですね……看取られるのは嫌かも。向こうの負担になっちゃいそうだし、そんなにセンチメンタルな関係じゃないと思ってるので、ベッドの横で見守られるとかちょっと気持ち悪いなと思っちゃうかもしれない。
pha
逆だったらどうですか? もし、年老いたサムソンさんが死にかけていたら。
能町
ああ……看取りたい、とは思わないな……。もちろん向こうが病気になったら病院に付き添ったりはすると思いますけど、それは同居してるからってだけで、あんまりこっちが義務っぽく捉えていたら向こうも嫌だろうなと思っちゃう。
pha
そうかあ。なんか、家族や同居人がいても誰もいないときにいきなり倒れてばったり死ぬこともあるだろうし、うまく死ぬのってなかなか難しそうですよね。臨終のときに家族みんなが集まって「おじいちゃん、がんばって」とか言われてるのを想像してもあんまりしっくりこない……。臨終がくるかこないかで大勢の人が一晩中待ってたりするのも、なんか嫌ですよね。
能町
うん、嫌ですね。
pha
涅槃(ねはん)に行きそうなフワッとした感覚のときって、人が周りにいてもいなくても分からないような気がするし……ああでも、いまちょっと考えてみたんですけど、僕はけっこうひとりでいたいかもしれない。周りの声とかノイズが入ってくるより、その瞬間をひとりで楽しみたいというか。
──薄れていく瞬間を(笑)。
pha
そんな気持ちのいいものじゃないかもしれないですけど。そういうときに周りから「がんばって」とか声かけられたら、「いや静かにしてて」って思いそう。
能町
「がんばって」はなんか恥ずかしくなっちゃいそうですよね。
pha
そうですよね。でもさすがに、家でひとりで死んで何カ月も発見されないとかは嫌なので、数日以内に発見されるシステムだけを整えてひとり暮らしっていうのが理想かもしれないな。友達のネットワークでもいいし、そういう見守りサービスがあったら使ってもいいし。
能町
それはよさそう。なんかもうちょっと、死ぬこととか病気になることとかに、なるべくセンチメンタルじゃない感じでいたいですよね。
pha
ほんとにそうですね。
取材・執筆:生湯葉シホ
撮影:小野奈那子
編集:はてな編集部
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