"京大卒元ニート"phaさんに聞く老後の話ーー見通しはないけど不安はない。

「京大卒の元ニート」こと、ブロガーのphaさん。2019年、40歳を機に、2008年から運営してきたシェアハウスを離れて一人暮らしを始めました。その背景には、年齢を重ねる中で生じてきた精神的なギャップがあったといいます。
 
そんなphaさんに自身の老いや老後について聞くと、これといった見通しはないものの特に不安はないとの答えが。

「なんとかなる」。取材中、何度もそう口にしたphaさん。老後に対して必要以上に“深刻ぶらない”、その軽やかな生き方、考え方についてお聞きしました。

今回のtayoriniなる人
pha
pha 1978年大阪府生まれ。京都大学総合人間学部を卒業後、国立大学の職員に。数年後に退職してからは「ニート」を自称。2008年にギークハウスプロジェクトを開始後、定職につかずシェアハウスで長年暮らす。2019年にシェアハウスを出て、一人暮らしに。現在は文筆業が収入源。著書に『持たない幸福論』(幻冬舎)、『しないことリスト』(大和書房)などがある。

40歳を過ぎて「漫画喫茶」や「ファミレス」が似合わなくなってきた

―― phaさんは現在41歳。40代になって、何か変化を感じますか?

pha

体力のいることや狭くてうるさい環境が苦手になってきましたね。昔は青春18きっぷの旅をよくしていましたが、今はちょっとキツいです。

単純に体力がなくなってきたのもありますし、年齢的に似合わなくなってきているというのも感じますね。若者がやってるとカッコがつくこともおっさんがやってたら微妙、みたいな。

同じ理由で、漫画喫茶で漫画を読んだりブックオフで延々と立ち読みをしたりするのをやらなくなりました。牛丼屋とかファミレスは相変わらず行ってるけど、うるさくて昔より落ち着かないと感じるようになりました。

―― 昨年、シェアハウスをやめられたのも、年齢によるところが大きいのでしょうか?

pha

シェアハウスって、やはり「若者のもの」という感じがあって、歳を取るとだんだん似合わなくなってくる感じがしましたね。僕以外の住人は少しずつ入れ替わっていって、だんだん若者ばかりになってきたので、もう自分が無理してやるものではないな、と感じて、やめようと思いました。

シェアハウスは11年もやって飽きたから、別のことを始めてみたいという思いもありました。

―― 現在は一人暮らしですか?

pha

はい。寂しくなるのかなと想像したけど、別に平気でしたね。

シェアハウスの時はいつも家によく分からない人がいっぱいいて、それはそれで面白かったけど、今の暮らしくらいの方がバランスがよくて快適ですね。3日に1回くらい人と会って、残り2日は一人で家にこもる。これくらいで、ちょうどよかったんだなって。猫がいるから寂しくないだけなのかもしれませんが。

―― 猫はシェアハウス時代も飼っていたそうですが、より依存が強くなった?

pha

そうですね。「おはよう〜」とか「今日もかわいいね~」とか、よく猫に話しかけるようになりました。部屋に一人でいて猫をずっと撫でていると、自分と猫の境界線が分からなくなってきますね。猫が自我の延長で、自分の一部のような気がしてきます。もう、猫がいない生活は想像できないけど、いなくなったら寂しくなってまた同居人がほしくなるのかもしれないですね。

僕は昔から半年以上先のことを想像する力がないので、実際にそうなってみないと分からないんです。将来に向けて何か準備をするってことが苦手なんですよね。

40歳でバンド活動を開始。目標はない。今が面白ければいい

―― phaさんが39歳の頃のインタビュー記事で「40歳になったら動き出す」と語られているのを拝見しました。当時は、どんな心境だったのでしょうか?

pha

そんなこと言いましたっけ? 全然覚えてないな……。なんか、ノリで話しただけな気がしますね。いつも「来年になったら本気出す」とか言ってるから。実際には、別に何もやらないんですけど。

ただ、その時は40歳を前にして、新しい刺激がないことに焦っていたのかもしれませんね。20代30代の頃は世界が狭いから、常に新しい発見があった。でも、だんだんそういうのがなくなっていくことに、危機感を覚えていたんだと思います。

―― もう、焦りはなくなったのでしょうか?

pha

新しい発見がないという状況は今も変わっていないんですけど、慣れてしまったというか、いつしか「別に何もしなくていいんだな」と思うようになりました。いざ中年になってしまうと、まあこんなもんだし、これでやっていくしかない、これも悪くないって思えるようになる。新しい発見がなくても、今までに知ってるものの中で楽しくやっていけばいいかな、と。

―― では、今の「面白いこと」は何ですか?

pha

去年から「エリーツ」というバンドを始めました。メンバーはみんなアラフォーの作家なんですが、そのうち初ライブをやろう、と、ときどきスタジオに集まって練習しています。同じメンバーで頻繁に集まる理由ができたのが楽しくて、バンドがシェアハウスの代わりになっているかもしれません(※編集部注:2020年2月に取材した内容です)。

あとは、同人誌を作って即売会に出たりとか、麻雀を定期的にやったりとか、人と会うためにいろいろ自分から動くようになりました。変化といえば、それくらいですかね。60歳くらいになっても、こんな感じじゃないかな。

―― phaさんの生き方は常に肩の力が抜けていて、「大人はこうでなければいけない」といった気負いがまるで感じられません。

pha

若い頃は、40代ってもっと大人っぽくてしっかりしていると思っていました。でも、別にそんなことなかったですね。同世代を見渡しても、「しっかりした大人」ってあんまりいないんですよね。10代20代の頃にイメージしていた40代の姿って、ただの幻想だったのかなと今は思っています。

ずっと一人でも、「インターネットおじいちゃん」として快適に生きられる

―― 老後の生活や居場所をイメージすることはありますか?

pha

具体的なイメージはないですね。ただ、もしかしたら70代くらいになったら、またシェアハウスをやってもいいかなという気はします。同年代で独り身の人や配偶者を亡くされた人とかと、見守り合いながら暮らしていくのはありかなと思います。シェアハウスじゃなくて、アパートの隣の部屋に住むくらいの距離感でいいんですけど。

孤独死が怖いわけではないんですけど、ちょっと困ったときに協力し合える人が近くにいたらいいなと思います。今も友達と、もしどちらかが入院することになったら着替えを持っていくとかして助け合おう、と話をしています。年寄りになったら、一人暮らしの不安も今より増えそうですから。

―― 老人ホームではなく、やはりシェアハウスがいいと。

pha

知らない人と暮らすよりは、仲のいい人と暮らした方が安心だし楽しいと思います。まあ、人と一緒に暮らす方法はいろいろありますから、シェアハウスという形でなくてもいいですけどね。ひょっとしたら結婚したりするのもありかもしれないし。

最近読んだ能町みね子さんの『結婚の奴』(平凡社)という本の中で、恋愛感情のない相手との結婚・同居について書かれていたんですけど、そういうのもありかなと思います。恋愛をして、「この人と何もかもを共にする」みたいな結婚にはおそらく向いていないんですけど、誰かと生活を共有するために同居するというくらいの、シェアハウスみたいなゆるい結婚生活だったら僕でもうまくいくかもしれない。

―― いわゆる“一般的な結婚”が不向きだと感じるのはなぜですか?

pha

人と一対一でいると息が詰まって一人になりたがるところがあるので、そのへんが最大のハードルですね。ただ、僕も歳を取って少し丸くなってきたから、昔よりはましになっている気がするし、機会があれば試してみたいという気持ちも少しありますね。

―― そうした心境に至った背景には、単身で老後を迎えることへの不安もあるのでしょうか?

pha

それはないかな。不安ってよく分からないです。でも、自信満々で「不安がない」というよりは、先のことをイメージできないから、あまりピンときていないだけなんですが。実際、もっと老化したらやばいのかもしれないけど。……ただ、まあなんとかなるんじゃないかな。たとえこのまま一人だったとしても、インターネットがあれば大抵のことはできる気がしますしね。

―― 確かに、買い物も友達とのコミュニケーションも、ネットがあれば不自由しません。

pha

僕らの世代は死ぬまでネットやガジェットを使っていくでしょうし、年老いても「インターネットおじいちゃん」として快適に生きていけるんじゃないですかね。まあ、もしかしたら今の僕らには想像もつかないサービスやガジェットが出てきて、そのうちついていけなくなるのかもしれないけど。「おじいちゃん、まだスマホ使ってるの?」みたいな。できるだけ、ついていきたいですけどね。

へんに深刻ぶらず、いつまでも「軽くありたい」

―― 老後に漠然とした不安を抱える人は多く、自己防衛としての「備え」を煽るような社会の空気もあります。だからこそ、phaさんの刹那的な生き方に憧れる人も少なくないのではないでしょうか。

pha

20代のうちから、老後のことを考えて資産作りをしている人とかいますもんね。将来への備えを否定するわけでは全くないけど、僕には絶対できないです。備えたところで、年を取った時に自分がどうなっているかとか世界がどうなっているかなんて全く分からないじゃないですか。だから、今すぐ考える気が起きないんですよね。いつも先のことを不安がってる人は、不安になるのが趣味なんじゃないかって思ったりもする。

先に対する想像力をどれだけ持てるか、未来をどれくらい恐れるかって、遺伝子で決まっている気がするんですよね。

僕みたいな考えの人ばっかりだとあまりに備えがなさ過ぎて世界が駄目になるかもしれないけど、考え過ぎる人ばっかりだと悲観的で窮屈な世の中になってしまうと思います。だから、人類の中に両方のタイプの人がいることで、ちょうどいい社会になるんじゃないですかね。

―― お金に対する不安も、本当に全くないんですか?

pha

ないですね。あまりお金を使わないから貯金はある程度ありますが、目標を持って貯めているわけではありません。仕事も、今は文章を書くことでたまたまお金がもらえているけど、そんなのいつまで続くか分からないと思ってます。本当はもっと不安になった方がいいのかな? でも、駄目になったらその時に考えるくらいしか僕にはできない。何の根拠もないけど、まあ死にはしないだろうと。

―― 将来や老後に対して重く捉える風潮がある中、phaさんの楽観的な観測は新鮮で、少しうらやましくも感じられます。

pha

こういう軽い意見を、いつまでも言っていたいですね。へんに深刻ぶらずに軽さを保ったまま、50代60代になりたいんです。ちゃんとした人には「見通しが甘い!」と叩かれるかもしれないですけど。

実際に甘いのかもしれませんけど、なんとなく、なんとかなるような気がするんですよね。29歳で会社をやめて無職になったときも、やめたあとの見通しは何もなかったけど、まあなんとかなるだろうって思っていたら、実際なんとか生きてこられましたし。そういうなんとなくの実感を大切にして生きていきたいですね。

取材・構成:榎並紀行(やじろべえ)
撮影:小野奈那子
編集:はてな編集部 

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