「家族に看取られて死ぬのは恐ろしい」 芸人・ヒロシさんが“1人でいること”を決めた理由

多様な生き方が標榜される現在でも、「老後を1人で過ごすこと」をどこかネガティブにとらえる向きはあります。結婚して家族を持つことを“正解”とし、孤独な晩年への恐怖を煽るような言説も少なくありません。しかし、本当にそうなのでしょうか?

今回お話を伺ったのは、芸人のヒロシさん。ソロキャンプ動画が人気のYouTubeチャンネル「ヒロシちゃんねる」は登録者数100万人を超えています。ヒロシさんの動画に見る「山で過ごす1人の時間」は、誰よりも自由で豊かな人生の楽しみ方を教えてくれているようにも感じられます。

2019年には著書『ひとりで生きていく』を上梓。子供の頃から集団行動に息苦しさを感じ、いつしか1人でいることを選ぶようになった経験をつづっています。今では人間関係のしがらみから脱し、“ソロ”の楽しさを満喫しているように見えるヒロシさんに、「1人で生きる将来のこと」をテーマにお話を伺いました。

今回のtayoriniなる人
ヒロシ
ヒロシ お笑い芸人。1972年1月23日生まれ。熊本県出身。九州産業大学卒業後、一度は保険会社に就職するも、仕事が合わず退職。その後、お笑い芸人としてのキャリアを本格的にスタートさせ、2004年ごろに「ヒロシです」のネタで一躍ブレイク。2015年には「ヒロシちゃんねる」を開設し、YouTuberとしても活動を開始。著書に『働き方1.9〜君も好きなことだけして生きていける〜』(講談社)、『ヒロシの自虐的幸福論』(大和書房)、『ひとりで生きていく』(廣済堂出版)などがある。

自然と「棒を支える役」に回された子供時代

――ヒロシさんが“ひとりで生きていく”ことにした根本には、昔からずっと感じていた人間関係の面倒くささがあると伺いました。遡れば、小学生の頃から集団で行動することが苦手だったと。

ヒロシさん(以下、敬称略)

小学校とか中学校の時って、絶対に団体行動じゃないですか。そのことに、ずっと疑問は抱いていました。特に大嫌いだったのが体育の授業。例えばサッカーをやるとしたら、僕は“人気のないポジション”にいつの間にか配置させられるんです。能力を確かめる予選をやったわけじゃないのに、先生や同級生が雰囲気で「こいつは下手そうだ」って決めてたんですよね。もう、その頃くらいから「あ、みんながいると自分がやりたいことはやれないんだな」とは思っていたような気がします。

――確かにグループのなかで、なぜか損な役を当てられがちな人もいれば、逆においしいポジションばかり回ってくる人もいるように思います。

ヒロシ

そこで楽しいポジションとか、ちやほやされる場所に配置されていたら、こんな人間にはなってなかったと思います。サッカーだけじゃなく、何事においてもそういう感じだったから。小学生の時に野球チームに入らされていたんですけど、それも嫌でしたね。野球に興味はないけど、子供だから従うしかない。しょうがなく行ったら、バットも触らせてもらえなかったりして。

それも、近所のでしゃばりのおじさんが監督の真似事をしていて、その人自身に何の能力があるわけでもないのに「お前はこうしろ」って決められて。僕は大抵、やりたくない役回りをやらされるんです。運動会の棒倒しでも、自然と「棒を支える役」になってたし。そんなの何にも面白くないじゃないですか。

――次々とエピソードが……。団体行動に対しての恨みは、かなり根深いものがあるようですね。

ヒロシ

だから次第に団体行動は時間の無駄だと思うようになりました。集団だと、大抵テンションの高い人が面白い方をやるんですよね。だったら1人の方がいい。1人なら自分で自由にできるわけじゃないですか。こうした経験を経て、大人になってからはなるべく集団を避けるようになりました。

――著書のなかでは、人間関係を考えるポイントとして「友人に期待しない」とも書かれていました。これも、小学生時代の体験に起因するそうですが。

ヒロシ

例えば「仲が良い人同士で班を作りなさい」と言われた時に、自分は選ばれないわけですよ。僕は友達だと思っていたけど、人数制限がかかるとそこに入れないことが明確になる。それってすごい屈辱的だし、ショックなことですよね。でも、逆に考えると勝手にこっちが友達だと思って期待していたから凹むということでもある。だったら最初から友達に過剰な期待はせず、1人でいる方がいい。いつしか、そう考えるようになり、「人間関係って面倒くさい」に行き着いたんでしょうね。

ーー面倒くさいと感じつつも、多少の無理をしてでも集団になじもうとしている人も多いように思います。

ヒロシ

僕はそれをやりたくなかった。でも、昔はあっちが正しいと思っていたので、集団に合わせようとはしていましたよ。子供時代だけでなく、わりと最近までそういう息苦しさは感じていました。ここ数年くらいですかね、社会的にも個人が尊重される、1人でいることが許される空気が感じられるようになってきたと思うんですけど、そうなって苦しさが緩和されたような気がします。

結婚はしたくない。死ぬ時は1人がいい

――ヒロシさんは「結婚したくない」とも公言されています。

ヒロシ

結婚したことないから分からないけど、離婚って相当面倒くさいらしいじゃないですか。そりゃ、もともと他人なんだし別れるとなれば相当もめますよね。それを考えると非常に面倒くさい。

――離婚を前提に考えてしまうわけですか。

ヒロシ

うまくいく人も、もちろんいるんでしょう。でも、少なくとも僕には無理ですね。結婚に絶大なる信頼は置けない。結婚どころか、お付き合い自体にも疑問を持っています。お付き合いしましょう、と約束したところで浮気されて振られたりしていますからね。若い頃は盲目的に、付き合ったら浮気はされないもんだと思っていたけど、ことごとく裏切られてきた。それも結局、人に対して“過剰な期待”をしていたってことなんでしょうね。そういうことの一つひとつが、人を過剰に信じない今の僕を形成してきたんだと思います。

――孤独死が怖いからと結婚を選択する人もいますが、ヒロシさんは逆に「家族に看取られて死ぬなんて恐ろしい」とも述べられていますよね。なぜ、そう思うのでしょうか?

ヒロシ

だって、周りは生きているのに“自分だけ死んでいく”んですよ。怖くないですか?

――確かに……。正直その発想はありませんでしたが、想像すると恐ろしいかもしれません。

ヒロシ

そう、周りは生命力に溢れてキラキラしているんですよ。たぶん、「こいつが死んだら遺産が入ってくる」と思っているやつもいるでしょう。いや絶対いる! 嫁や子供ですら多少は思うんじゃないですかね。悲しいのは悲しいでしょうけど、ちょっとは頭によぎるはず。僕、そういうの、すぐ気づくんですよ。

それで、死んだ後に「この人も好きなことやって幸せだったよね」とか、勝手なこと言われるんですよ。その後、すぐに通帳ですよ。お悔やみもそこそこに、お金の計算が始まる。そんな状況で、安らかに死んでいけないですもん。

――家族に看取られながら命を終えることが最良であると考えている人は多いと思います。しかし、ヒロシさんの見解にも納得してしまいます。

ヒロシ

だから、なおさら結婚しようという気にならない。既婚者が揉めている話を聞くたびに、結婚は大変だなと思いますしね。……あとは、結局お金ですよね。僕の寿命は70歳くらいだろうから、あと20年を1人で逃げ切れればいい。気楽ですよ。

「これを買うと誰が儲かるか?」を基準に、お金を使うか決める

――1人だと自由に使えるお金も多いと思いますが、ヒロシさんはあまり無駄遣いをしないそうですね。その金銭感覚は、月収3万円だったというホスト時代に身についたものですか?

ヒロシ

月3万円で生きるって節約どころじゃないですからね。サバイバルですよ。そういう生活が長かったから、今も貧乏性なんでしょう。お金を使うことに対して、ずっと慣れてないんです。

――それはYouTubeのソロキャンプ動画を見ていても感じます。ヒロシさんは高級な道具よりも、安くても良いものを大切に使っている印象があります。

ヒロシ

ブランド物より、安くても自分の色が出る道具を買うようにしていますね。例えば、夏にメインで使っているテントは1万円くらい。何十万円もする有名ブランドのテントよりも、全然かっこいいと思っています。

――貧乏性というより、しっかり吟味して物を買うタイプということですよね。衝動買いで浪費するようなことは全くないですか?

ヒロシ

いや、ないことはないですけど、一時期は物を買う時に「これを買ったら、誰が儲かるか?」を考えていました。例えば、お店で気に入った服を見つけても、その商品の“先”を辿ってデザイナーやメーカーの社長がチャラくて気に食わないと思ったら買わないとか。それでも欲しいと思えば別ですけど、まずは一回そう考えてみると、意外と我慢というか無駄遣いをセーブできるんですよ。だって、そいつが儲かってモテるために僕がお金を落とすなんて腹が立つじゃないですか。

――すごいルールですね……。でも、買った後で応援したくない人や会社が関わっている商品だと知ったら、確かに悔しいかもしれません。

ヒロシ

実際にその商品が店に並ぶまでにはいろんな人が関わっていて、なかには僕とすごく性格が合う人もいるかもしれません。でも、なるべくお金の流れをシンプルに見て、どこにお金を使うべきかは考えますね。“敵”のお金がどんどん増えていくなんて、嫌じゃないですか。乱暴で無茶苦茶な考えかもしれませんけど、これをやると無駄遣いせずに済みますよ。

――そうした節約も含め、1人で生きるにはお金についても“自衛”する必要がありそうです。

ヒロシ

独身は既婚者よりは金を持ってますからね。金を使わせよう、使わせようとしてくるマーケットやコミュニティからは離脱した方がいいと思いますよ。

まあ、これは独身に限りませんけどね。例えば、ママ友のランチとかもそうじゃないですか。ドラマでしか見たことないから実際にあるのかは知らないけど、同じマンションに住んでいるからって2000円のランチに付き合わないといけないとか結構きついですよね。家庭により事情は違うのに、集団につられて無理すると、ろくな目に合わない。「あそこの奥さん、貧乏よね」って言われても、僕はそんなの気にしないで1人になった方がラクな気がしてしまいます。

「自分を偽らなくていい趣味」を見つける

――ヒロシさんも、1人で生きることに大きな不安を抱えていた時期があったと伺っています。そして、その不安を緩和してくれたのが趣味のソロキャンプであったと。

ヒロシ

ソロキャンプに出合えたのは大きいですね。家に一人でいるのと違って、山の中でのソロキャンプはやることがいろいろあって忙しいんです。そんなふうに過ごしながら、知らないうちに死んでいく。それはそれで、別にいいかなと思ったりします。

――1人だからこそ趣味に没頭できて、人生が豊かになるという側面もあるかと思います。ヒロシさんも、ソロキャンプに辿り着くまでは、さまざまなことを試してみたそうですね。

ヒロシ

興味があることは片っ端からやりましたね。そのなかでソロキャンプとYouTubeがヒットして仕事にもなりました。つまらなかったら速攻でやめていいし、参加したコミュニティが合わなかったら離れればいいから、将来に不安を感じている方は、いろんなことに手を出してみるといいんじゃないですかね。自分を偽らなくていい趣味が、そのうち見つかると思いますよ。

ただ、最初は1人というところがポイントだと思います。1人でやると、道具が安物でも気にならないですからね。僕、釣りも好きだったんですけど、あるとき一人で釣りをしていたら、お揃いのTシャツを着た釣りクラブの集団に遭遇したんです。そのうちの一人が「こんな竿でよく釣れたね」って声をかけてきて。面倒くせえなと思いましたよ。下手にコミュニティに属しちゃうと、みんな高い竿を持ってるから、自分も買わないといけないって思うんでしょうね。

――確かに面倒かも。コミュニティに入ってしまうと、やめづらくなりますしね。

ヒロシ

自分に合う趣味仲間って、たまたまの巡り合わせでできるものだと思うんです。無理に作るものじゃない。合わないやつらとキャンプに行くなんて地獄じゃないですか。

――ヒロシさんは芸人さん仲間と「焚火会」というグループを作っていますが、彼らとのキャンプ動画を見ていると非常にいい関係性であることが伺えます。1人を好むヒロシさんにとっても、焚火会のメンバーは特別な存在ですか?

ヒロシ

そうですね。焚火会はソロが好きな人たちの集まりなので、心地よい距離感で接してくれます。一緒に山に集まることもありますけど、基本はソロキャンプなので参加したくなかったらしなくていい。誰も文句は言わない。小学校の時みたいに変な圧をかけられないし、みんな自立した存在だから各々が主役になれるんですよ。

――1人であることを尊重しあえる仲間。不思議ですが、確かに心地良さそうです。

ヒロシ

みんな本当に気が合うし、一緒にいて苦痛じゃないし、楽しいです。だからといって、例えば西村くん(バイきんぐ)と一緒に暮らせるかといったら絶対に無理でしょうね。なぜかというと、みんなしっかりと自分を持ってるから、生活を共にするとぶつかり合う。一緒に山にいて、それぞれが好きなことをやっているくらいが丁度いいんです。

――それだけ大切な仲間であっても、さらに距離を詰めることには抵抗があるのでしょうか?

ヒロシ

そこは小学校時代の苦い経験があるから、やっぱり期待し過ぎないよう気をつけています。ソロキャンプ仲間といる時は、見返りを求めないようにしていますね。「僕はあいつにこれをやってあげたのに」とか思ってしまうと、この関係性は成立しない。互いに心の中で距離をとって、それでも一緒にいられる人としか遊ばないようにしています。焚火会には社交的な人もいるんですけど、表向きでは分からない根っこの部分で共通点があるように感じますね。

――付かず離れず、そうしたゆるいコミュニティをずっと続けながら年を重ねていくのが理想ですか?

ヒロシ

理想ですね。山に一人ぼっちでキャンプするのもいいけど、ずっとそれだと楽しくない。たまには人と関わりたいです。その相手は厳選しますけど、付き合いはゆるくしたい。そういうコミュニティが複数あったら安心ですね。

自立した高齢の単身者が住むシェアハウスとかがあるといいんじゃないかな。老人ホームはみんなで折り紙をやるようなイメージがありますけど、そうじゃなくて各々が好きなことをやる。で、たまにホールに集まって喋ったり、出かけたり。そんな共同生活なら、僕にもできそうです。

取材・構成:榎並紀行(やじろべえ)
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部
 

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