二人で楽しんで、面白がる。結婚生活33年を迎えた研ナオコさん・野口典夫さんに聞く"よい関係"の築き方

子育てが一段落し自分の時間が持てるようになってくると、「これからどんな暮らしをしていこう?」と考えられるようになってくるのではないでしょうか。パートナーがいる場合は、これまでよりも「二人の時間」が増えるはず。せっかくなら、“よい関係”を築き続けながら、充実した生活を送りたいものです。

そこでお話を伺ったのは、結婚生活33年を迎えた研ナオコさん・野口典夫さん夫妻。

歌手・タレント・俳優など多岐にわたるジャンルで活躍し、2021年には芸能生活50周年を迎えられた研さんは、70歳を目前にしてYouTubeチャンネルを開設。自身のメイクの様子や仕事現場の裏側を紹介するなど、飾らない“素のまま”の研さんが見られることで人気を集めています。

そんな研さんの活動を支えるのは、YouTubeにもたびたび出演している夫・野口典夫さん。研さんが所属する事務所の代表でもある野口さんは、研さんが始めた新しい取り組みにも「好きな時間に好きなことができるっていうのが楽しそう」と語ります。

今回、新しい環境に飛び込むことをアクティブに楽しむお二人に、夫婦で充実した生活を送り続けるためのヒントを伺いました。(※取材はオンラインで実施しました)

今回のtayoriniなる人
研ナオコ・野口典夫
研ナオコ・野口典夫 【研ナオコ】
1953年、静岡県生まれ。1971年「大都会のやさぐれ女」で歌手デビュー。バラエティー番組出演や番組司会など、多岐にわたって活躍中。


【野口典夫】
1959年、茨城県生まれ。研が在籍する芸能事務所「ケンズファミリー」の代表を務めている。研とは1987年に結婚。

夫婦だからといって、必要以上に「干渉しない」

──研さんのYouTubeチャンネルでは、お二人の普段の様子が垣間見える動画をいくつも公開されていますよね。「穏やかな雰囲気がとても素敵」「こんな夫婦が理想だ」といったコメントも見られ、お二人の関係に憧れる方も多いように感じます。結婚生活33年を迎えられたということですが、お二人がいい夫婦関係を保つ上で、何か意識されてることはありますか?

研ナオコさん(以下:研)

うーん、なんだろう。たぶん、こっちが相当いろんなことを我慢してくれているんだと思いますよ(野口さんを指差しながら)。

野口典夫さん(以下、野口)

いやいや(研さんを指差しながら)。

──(笑)。我慢というのはどのような点で、なんでしょう?

私は割と自由人で、なかなかみんなが思ったように動かないタイプなんですよね。それでイラッとしてることもあるだろうな、というのは感じています。たぶん、「それは違うんじゃないのかな」と思っても、我慢してくれてるんじゃないかな。

もちろん、お父さんからの意見で「違うんじゃないのかな」と思うことがあっても、私が我慢することもありますよ。それはある程度仕方がないですよね、一人ひとり考え方って違うから。

──どちらかが「我慢」するのではなく、お互いの違いを理解して、折り合いをつけられるところはつける、ということなのかもしれませんね。

野口

うちの場合はそれに加えて、彼女がタレント・アーティストで、私がそのマネジメントをしているという関係性があるから、仕事においてはお互い「こうしていった方がよくなるだろう」という観点で我慢をしてる。だから嫌な我慢ではないというか……。たぶん、わがままの我慢ではないよね?

うん、そうだね。

野口

僕はそもそも、研ナオコというキャラクターを尊敬しているんですよ。こういう人をプロデュースできて面白いな、というのが自分の中にまずあるから、今お母さんが言った「我慢してると思いますよ」なんて、全然そんなの我慢のうちに入らない。

──なるほど。お仕事という側面から離れて、生活をともにするパートナーとしては、何か意見が対立したり、「我慢」をされることってありますか?

野口

あったかな。人としても価値観は似てる気がしますし、お母さんはまじめ過ぎるくらいまじめな人だから……あんまり対立、ってことはないよね。

うん。オフの日はお互いに構わずに、好きなことやってるもんね。

野口

ああ、そうね(笑)。どっちかって言うと僕は、庭をいじったり家の壊れたところを直したり、ゴルフに行ったり、何かしら動いていたいタイプなんですよ。でも、お母さんはずっとテレビとかYouTubeとかNetflixとか見てる。

──意外とインドアなんですね、研さん。

超インドアですよ。こないだ歩数計見たらね、1日で8歩しか歩いてない日があった。

──(笑)。でも、オフの日はお互いに必要以上に干渉しないというのも、いい関係性のひとつの秘訣かもしれませんね。

野口

それはあるかもしれないですね。

これまでに何かあったっけ、意見が分かれたことって?

野口

やっぱり子育てじゃないかな。対立、というわけじゃないけど、僕とお母さんで意見は分かれたよね。うちは、子どもが娘と息子の二人いるんです。世代もあってか、僕はどちらかというと、男の子はこうした方がいいんじゃない? なんて思ってしまう方だけど、お母さんからしたら二人とも同じ子ども、という感じで。

うん。私は「男だから」「女だから」という考えがまったくなくて。別にいいじゃん、好きなことやらせれば! って思ってた。でも、子育ては確かに……特に学校選びでは悩んだよね。やっぱり世間からは「研ナオコの子ども」って目を向けられるでしょうから、不自由さもあったろうし。

野口

そうだね。だから子どもが中学に進学するにあたっては、いろんな人の意見を聞きましたね。学校の先生はもちろん、芸能界の先輩たちや、子ども本人にも「どうしたい?」って。

親側の意見だけ押しつけちゃうと、子どもたちもかわいそうだしね。やっぱり自分たちだけで考えるのは難しいですよ。悩んだら、周りの意見も聞いた方がいい。

恐る恐る始めたYouTube。今では夫婦で一緒に楽しむ時間に

──昨年、芸能生活50周年を迎えられた研さんですが、コロナ禍をきっかけに立ち上げられたYouTubeチャンネルは、飾らない研さんの姿が見られることもあり人気を集めています。一方で野口さんも2020年にブログを始められるなど、ご夫婦でさまざまな新しいチャレンジを続けられていますよね。

やっぱりコロナ禍を機に仕事もほとんどキャンセルでやることがなくなっちゃって。みなさんに喜んでいただけるような仕事をもっとやっていかなきゃって考えていたときに、YouTubeやSNSというのはその手段のひとつかなと思ったんです。お父さん(野口さん)がブログを始めたのも、同じ理由だよね?

野口

そうそう。僕は芸能界でプロデュースやマネジメントの仕事をしているなかで、新しいものに対する興味はもともと強かった。コロナ禍で、それがより加速したって感じですね。

以前から、ひとりのタレントとしての「研ナオコ」をどうプロデュースしていこうかは常に考えていたので、SNSの流れには早めに乗っていった方がいいんじゃないかとは薄々思っていたんです。

でも、お母さん(研さん)はブログも10年以上前から続けてるし、新型コロナが流行しはじめた時点で、すでにいろいろやってはいたんじゃないかな。

うん。でもやっぱり、YouTubeの反響には驚いたよね。

野口

そうだね。YouTubeは最初、子どもに「宣伝のつもりでやってみたら?」って勧められて始めたんです。撮影をマネージャーさん、動画編集を息子がやってくれてるんですけど、はじめはすごく気合いを入れて企画のアイデアも出し合ったりしてね。

でも結局、外出自粛期間に入って、外では撮れなくなっちゃって。それなら屋上でキャンプするのはどう? って、僕のキャンプの腕前を自慢しようと思って撮った動画なんかも出したんですけど……。

この人がしくじってね。テントが全然うまく組み立てられなかった(笑)。

野口

(笑)。でもあれはだいぶ初期の動画だよね。

──現在、YouTubeの企画のアイデアはどうやって考えられているんでしょう?

いや、私ね、よく分かってないんですよ(笑)。

野口

最初はやっぱりよく知らない世界だから、恐る恐る始めたんです。でも最近はもう、思いつくとわりとササッと撮っちゃってて。日常にいるお母さんをそのまま捉えちゃえ、って感じです。いろいろやってみて、結局たどり着いたのがメイクをするだけって動画。

──研さんがすっぴんからメイクをされていく動画は、本当にバズりましたよね。再生回数が500万回を超えたとか。

びっくりしましたね。すっぴんなんて、インスタでも前からあげてたしね。

野口

マネージャーからはよく、そこまで見せちゃだめですよって言われるんです。僕も最初そう思ってたんだけど、最近はもういいんじゃない? って思うようになりましたね。

今までは、街へ行くと「コンサート行きましたよ」「テレビ見ましたよ」って声をかけてもらうことが多かったんですけど、最近は「YouTube見てますよ」とか「ブログ見てます」って声のほうが増えて。お母さんも楽しそうだし、見ている方にも喜んでいただけているのかなと思うと、やっぱりうれしいですよね。

うん、楽しんでやってる。生活をそのままさらけ出してるだけで、あんまり作り込むみたいなことはしてないよね。ただ、私がちょっと抜けてるだけ(笑)。

野口

いや、抜けてるんじゃないんだよ。この人、すごいんですよ。キチッとした段取りがなければないほど面白くなるんです。例えばドラマの撮影でも、当日の朝まで一切台本を読まないで、行きの車の中で台詞を覚えたりするんですよ。

──えっ!? それで覚えられるんですか。

寝たら忘れちゃうんだよね。だから当日に車で覚えて、現場でマネージャーと軽く合わせてもらうだけ。

野口

バラエティーでも、事前に知ってるのは、放送時間やMCの方の情報くらいなんです。台本もほとんど見ない。だから「研ナオコさんどうぞ~!」って言われたら、そこからはほとんどフリーで、現場の空気だけでザッっと中に入っていく。

うん。楽しんで入っていってます。だから翌日の予定も、マネージャーしかちゃんと把握してないんです。「明日なんだっけ?」っていっつも言ってる。

野口

お母さん、寝る寸前まで「明日なんだっけ?」って言ってるよね(笑)。

前日に考えるのは洋服くらいかな。ファッションはやっぱり好きだし、お仕事をするにも自分の気に入った服を着ていたいから、そこだけはこだわりなんです。

新しい出来事も、何もしない日常も、二人でポジティブに捉える

──お子さんが独立された今は、お二人で過ごされる時間も以前より増えたのかなと思います。今後、お二人で新たにやってみたいと考えられていることって、何かあったりしますか?

野口

「これってどうしようか?」って相談は、大きい話から小さい話までいつもしてるよね。具体的には進んでいかないことも多いけど。

最近よく話すのは、東京に住んでる意味、実はもうそんなにないんじゃない? とかね。

野口

今はリモートで仕事ができるし、コンサートは全国でやりますから、どこに住んでいてもそんなに変わらないですしね。いま、家には僕ら二人とマネージャーが住んでるんですけど、子どもが巣立ったいま、東京にこだわる意味がそこまでなくなってきたんですよ。都会はたまに来ればいいんじゃないかなって。

息子がアメリカにいるので、海外に住むのもありかもね、なんて話したりね。

野口

そうだね。お母さんは海外がいいって言ってるよね。あと、他にこれからやりたいこと、何かある?

うーん……とりあえずYouTubeをガンガン更新して、登録者数を100万人にしたい。

野口

あくまで目標としてね(笑)。お母さんはやっぱり、いちばんの趣味が仕事だもんね。ときどきはまる趣味はあるけど、しばらくやると落ち着いちゃうんですよ。

そうなんだよね。

野口

だからこの約2年、コロナ禍でいろいろな仕事が延期や中止になったので、本当にずっと家にいるんです。

長続きしてるのは芸能界だけですね。歌だけじゃなく、ドラマや映画の出演とかいろんなことをやらせてもらっているから、ほんとに楽しくて飽きないんですよ。

私は学生時代、毎日同じ時間に同じ先生の顔を見なきゃいけないのがとにかくしんどかったんです。でも芸能界って時間はバラバラだし、行く場所も出会う人も毎回違うから楽しい(笑)。

野口

でも、いざ休めるとなると、それはそれで気持ちが楽だって言ってたよね。

うん。もちろん収入は入ってこないんですけど、精神的な状態はすごくいいんですよ。いろんなことを新しく考えられるのもいいし、人の少ない時間にホームセンターに行って、買ってきたお花をちっちゃいテラスに飾ってみたりもしていて。

デビュー以来ずっと休みなくやってきましたから、こんなに休むのが初めてで楽しくて。最近は外で打ち合わせする機会が減ったから、晩ごはんもお父さんが作ってくれますしね。私、本当にな~んにもしないでずっとテレビ見てるの(笑)。

野口

(笑)。そういう意味では、YouTubeはやっぱりよかったよね。好きな時間に好きなことができるっていうの、楽しそうにしているもんね。

そうだね。すごく楽しい。

野口

でも、僕たちの周りの同年代の方は、やっぱりみなさんYouTubeとかは難しいみたいなんです。周りの人たちがよく「見たよ!」って言ってくれるんだけど、「ありがとう! チャンネル登録もしてくれた?」って聞くと、「登録……?」ってなるんだよね。

ピッ、ってボタンを触るだけでいいのに。

野口

触ったら何か消しちゃうんじゃないかって思ってるみたいなんだよね。

うん。でも娘も言ってたよね、「とりあえずなんでもやってみなきゃだめだよ」って。

野口

「失敗しても戻せるし、消えないから」ってね(笑)。僕も、最近ようやく慣れてきた。

2022/03/14

自分の「ごきげんポイント」を押さえて、50代以降もやりたいことを追求する──スープ作家・有賀薫さん

一緒に長く過ごしたいから。自分の健康より、相手の健康が気になる

──お二人とも、新しいことに取り組む姿勢がとてもポジティブだなとお話を聞いていて感じます。年齢を重ねていくことに関しては、あまり不安に思われたりはしないですか?

うん、私はそういう不安は全然ないんですよ。周りは気にしてくれてるんだけどね。逆に、いまだからこそできることがあるんじゃないか、って考える方です。

野口

いや、周りはね……やっぱり心配ですよ。近くで見てると、当然だけどどんどん歳をとっていくじゃないですか。やっぱり健康でいてほしいから、大丈夫かなってすごく思う。

僕は、歳を重ねるのが不安で仕方ない方なんです。この前も、目が充血してたので眼科に行ったんですよ。そしたら「ちょっと視力が落ちてるみたいだから、白内障の検査もしておきますか?」ってお医者さんに言われて、正直「白内障!? そんなおじいちゃんみたいな病気になるわけないよ」って思ってたの。でも念のために受けてみたら白内障の気があるってことで、目薬をもらって帰ってきて……。

そのときも、真っ先にお母さんに「検査してきなよ!」って言ったんです。自分がどうこうというよりは、お母さんに教えてあげたくて。

あのね、「おじいちゃんみたいな」って言うけど、もうジジイだからね!

野口

(笑)。でもさ、病名をいざ聞くとついにきたか、って思うじゃない。結婚当初は、健康のことなんて考えもしなかったから。

忙しかったもんね、とにかく。当時はお父さんもお父さんで役者をやってたからね。少しはそれ、自慢した方がいいよ。

野口

NG8連発で出してね。それで裏方に回ったっていう。

お父さんは早いんですよ、諦めるのが。

野口

いや、この人がすごいんですよ。持ってる。何やっても面白いんですから。

自分じゃ分かんないけど(笑)。まあでも、これだけ何十年も一緒にいるとこうやって、あのときはこうだったよねって話をして、それで大笑いできるのが楽しかったりもするんですよ。

野口

お母さん、「120歳くらいまで生きたい!」とか平気で言いますからね。

それならもっとちゃんと動きなさいよってね(笑)。娘にも言われました。でもやっぱり、このくらいの歳になってくると、自分の健康よりも相手の健康を気にしますよ。お父さんはひどいアレルギー持ちだし、前に病気もしてますから、そういうところは心配です。

──お互いにこれからも長く一緒に歩んでいきたいからこその心配、ということですよね。

野口

うん、そうですね。お互い、結婚してから何度か入院・手術も経験しているし。僕が入院したときにお母さんが本当に熱心に看病してくれたのも知っているので、あんまり心配はかけたくないんですよ。

でもやっぱりお母さんのことは心配だから、自分が元気にしていたり、健康面に気を使っているのを見て、せめて真似してくれないかなって……。お母さんも多分、考えてるのは同じことだよね。

そう。やっぱり相手に長生きしてほしいですからね。うちのマネージャーの方が私たちより少し若いんだけど、マネージャーより長生きしてほしいから。「マネージャーは私が死ぬときに一緒に連れていくから」って言うと、やめてくださいっていっつも言われるの(笑)。

──そこは野口さんを一緒に、ではないんですね(笑)。

野口

お母さんとしては、なんかそこは違うみたいですね(笑)。でも、男女の平均寿命が約6歳差だから、もしかしたら同じ年にいけるかもしれないね、なんて話すこともあってね。

やだ、そうなったら周りの人たちは大変じゃん。だからどっちかが残っちゃったら、残された方がマネージャーを一緒に連れていこう(笑)。

取材・構成:生湯葉シホ

編集:はてな編集部

インフォメーション

梅沢富美男劇団 梅沢富美男・研ナオコ特別公演

会場:新歌舞伎座(大阪)

公演期間:2022年6月17日(金)~28日(火)

チケット料金:1階席 10,000円、2階席 6,000円、3階席 3,500円、特別席 11,000円(すべて税込み)

※最新情報については公式サイトよりご確認ください

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