「わからないことばっかりだから、基本操作を教えてほしい」
数ヵ月前、スマホデビューした60歳の母が、そういって私の家にやってきた。
まずは、LINEのアプリをダウンロード。そこからあれこれ教えてみるものの、わかっているような、いないような微妙なリアクションに、ついイラっとしてしまい、気まずい空気になってしまった…。
数日後、母から「ドコモの無料スマホ教室に行ったら、同世代の人がたくさんいておもしろかったから、しばらく通ってみます」とメッセージがきた。調べると、ドコモショップでは全国でスマホ教室を実施しているが、一部店舗で、60〜80代の講師がレクチャーする「シニア講師によるシニアのためのスマホ教室」があるという。
一体どんな教室なのか様子を知るべく、「ドコモショップLuz大森店」を訪れた。
教室は、店舗内の一角で行われる。
クラスは内容やレベルごとに、「スマホ入門編」「スマホ応用編」「全機種応用編」「LINE前編」「LINE後編」の5つから選択できるシステム。Luz大森店では、11時〜、13時〜、15時〜と各1時間の教室を、毎日3回開講している(2020年1月現在)。
ちなみに全国約2300店舗あるドコモショップを合計すると、毎月約40万人以上が参加。年齢を問わず何歳でも受講できるが、60代以上が全体の85%以上を占めるそうだ。
取材日の講師は、橋本眞さん(68歳)。定年までは営業一筋だったそう。プライベートでは、92歳の母親にもスマホをレクチャーしているという。
この日見学した「スマホ応用編」の参加者は、男性3名、女性4名の合計7名。当日空きがあれば飛び入り参加も可能だが、ほとんどの人がネットで事前予約してからやって来るそうだ。
橋本さん
「まず、アプリってなんのことかわかりますか?」
参加者の女性
「……わかりません(小声)」
橋本さん
「みなさんリアクションをお願いします〜。積極的に参加しましょう〜(笑)」
こんなやりとりから、教室は和やかにスタートした。まずは、多数決をとって、「アプリ」「カメラ」「ネット検索」など、どんな項目から進めるか決めてゆく。
この日は、まずは「アプリ」についてのレクチャーから始まることに。
ドコモショップ共通のテキストが配られるが、橋本さんは「レッスン中はあまり見なくていいです。実際にスマホを触って覚えていきましょう」と呼びかけていた。
「朝起きてからの一日を想像して、自分に必要なアプリを考えましょう。例えば、天気、交通情報、レシピなど。スマホ自体に元からそういったアプリが入っていますが、欲しい機能がない、または物足りないなどあれば、新しいアプリを入れてみましょう」(橋本さん)
アプリをダウンロードする場面。アプリストアの存在を知らない参加者のほとんどは、「どこにあるのですか?」と聞きたくなるだろう。
しかし、橋本さんはあえてすぐには教えず、「まずは、自分で探してみてください」と話す。時間がかかってしまっても、できるだけ自分の手で操作した方が飲み込みが早くなるからだ。そこから、「アプリは色と形で覚えてください」「緑色っぽいのがプレイストアです」などと指導を進めてゆく。
「有料のアプリは値段が書いてあります」
「ごくたまに月々請求されるアプリもあるので、そこだけ気をつけてください」
「私自身、もう4年以上スマホを使っているけれど、有料アプリは使ったことがありません。基本は無料アプリで大丈夫です。CMが入るのはしょうがないと思ってください、中にはアプリを起動していなくても流れるCMがあるので、もしあったら教えてください」など、橋本さんのリアルな体験を交えた講座は、あっという間に1時間が経った。
参加者に教室の感想を聞くと、「講師も周りの人にも親近感が持てるので、緊張することなく通えるのが嬉しい」「ここで友だちができた」「教えてもらったことをすぐには覚えられないけど、明日もくるのが楽しみ」などと話してくれた。
講座後に橋本さんに話を伺った。
――講座中、参加者のみなさんがよく笑っていて、とても楽しそうな様子でした。
レッスン後に、参加者同士で立ち話をしている人たちもいますね。コミュニケーションの場にもなっているようです。ただ、講座中は隣の人と盛り上がりすぎてしまうと困るので、「何かあったら手を挙げて私に聞いてください」とお願いしています(笑)
――みなさんは、どんな悩みを抱えていることが多いですか?
「何回やっても覚えられない」という声は多いですね。その日の講座内容を全部覚えようとする人もいるけれど、私は最初から、「今日やったことの1〜2個だけでいいから、忘れずに覚えていてくださいね」というスタンスです。まぁ、だいたい忘れちゃうけどね(笑)
――優しいですね(笑) 覚えられる人とそうでない人の違いはどこにあると思いますか?
スマホのいろいろな画面を開いてみるなど、慣れようとする意思がある人は早く慣れると思います。なかなか覚えらない人は、おそらく講座の時間しかスマホを触っていないんじゃないかな。あと、テキストに一生懸命書き込んでいる人も要注意ですね。もちろん、ポイントを書き込むのは良いのですが、やっぱり実際に手を動かさないとね。
――もちろん個人差はあると思いますが、どれくらい通うと一通りの操作ができるようになるのでしょうか?
約10回で一通りレクチャーは終わりますが、それ以上に通われる方がほとんどですよ。
――指導の際に、心がけていることはありますか?
メモはポイントだけとってもらって、自分の手でちゃんとスマホを操作してもらうこと。あとは、カタカナの言葉をわかりやすい日本語に変えて、たとえ話にして説明するようにしています。
――具体的にどんな風に言い換えたり、たとえたりするのですか?
よく使う「アカウント」は、「情報」のことだと説明します。サイトに入るときに「ID」と「パスワード」を要求されるけれど、「ホテルでいうと、IDは部屋番号。パスワードは部屋の鍵です」という感じですね。私だって、いきなり初めて聞くカタカナで説明されたら、きっとわからなくて嫌になっちゃうもん(笑)
――確かにわかりやすいですね。実は私も母にスマホ操作を教えたことがあるのですが、だんだん喧嘩っぽくなってしまって、後から反省したことがあるんです…。
私も4年前に妻と一緒にスマホに切り替えたのですが、その日は質問攻めにあって大変でした。あと、92歳の母もスマホを持っているので、頑張って教えましたね。身内は遠慮がないですもんね(笑)。そんなときこそ、ドコモスマホ教室を活用してください。
――最後に、シニア世代がスマホを楽しむコツを教えてください。
とにかく日常的に触れることですね。気になるお店を調べたり、カメラで好きなものを撮ったり。私自身も、Twitterは趣味の情報収集、Facebook、Instagramは日々の記録など使い分けてSNSを楽しんでいますし、スマホを使えるようになると生活がより楽しくなるはずです。ドコモスマホ教室がそういったきっかけになると嬉しいです。
電話やカメラ、LINEやネット検索のほか、音楽や動画の楽しみ方やキャッシュレス決済まで、幅広いニーズに応えられるカリキュラムを用意している講座は、ドコモユーザー以外でも受講できる。親がスマホ操作に苦戦していたら、ぜひ勧めてみてはいかがだろうか。
編集:ノオト
撮影:小野奈那子(8枚目、11枚目以降)
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。ヨガウエアやオーガニックコスメの販売経験から、好きな分野は美容、健康、料理、ライフスタイルなど。現在は、企業のオウンドメディアを中心に活動中。
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