YouTubeで大人気!90歳のゲームファン「ゲーマーグランマ」の長寿の秘訣は、人を喜ばせたい想い

「人生100年時代」と言われる今の時代。ところが、寿命をまっとうする以前に多くの人に「健康寿命」が訪れ、体や精神がままならない晩年を過ごすことが一般的だ。

どうせなら死ぬまでいきいきと暮らしたい。そのためには、会社を退職しても、家族と死別しても、絶えず居場所や生きがいを持つことが重要だと言われている。

そんなとき、何かの趣味に熱中し、そこに居場所を見つけた人の生き方は、人生100年時代を楽しく過ごすヒントになるのかもしれない。

今回は、90歳の「最年長ゲーマー」としてYouTubeのゲーム実況が話題の森浜子さんに、長年の“ゲーム愛”をお聞きしました。新型コロナの感染予防のため、対面の取材を避け、リモート取材でお届けします。

今回のtayoriniなる人
ゲームファン歴39年 森浜子さん(90歳)
ゲームファン歴39年 森浜子さん(90歳) 1930年生まれ。東京都台東区浅草出身。80年代初頭から家庭用ゲーム機で遊ぶようになり、ゲーム歴39年! ゲーム以外の趣味は、水泳と編み物。水泳は80歳まで続け、全日本マスターズで2位になったこともある。2014年末からYouTubeで「ゲーマーグランマ」としてゲーム実況を開始し、チャンネル登録者は17万人を超える。

なんとなくやり始めたゲームが、いつしか生き甲斐に

世代的にゲームに不慣れなこともあってか、高齢の方でゲーム好きという人をあまり見たことがないのですが、90歳にしてゲームを趣味にしている森さんのことを知って驚きました。しかも、ただゲームで遊ぶだけでなく、YouTubeで「ゲーマーグランマ」としてゲーム実況をされていて、もはやゲームがライフワークですよね。

――「最年長ゲーマー」とも言われていますが、ゲームで遊ぶようになった最初のきっかけを教えてください。

最初は、オモチャ屋さんの前で子どもたちがゲームで遊んでいるのを見たのよね。それで私もちょっとやってみようって思ったんです。当時はまだ若かったわね。50代前半だったと思います。昼間は仕事で忙しかったけど、夜は暇だったからゲームをやるようになった、ただそれだけなんですよね。

――なんとなく始めたゲームが、90歳まで続いたわけですね。その間のゲーム遍歴を教えてください。

最初に遊んだゲーム機はファミコンだと思っていたけど、よくよく思い出してみると、カセットビジョン(※1981年発売の家庭用ゲーム機)なんですよね。ファミコンは今でも持ってますけど、最初に買ったゲームソフトは思い出せない。『スーパーマリオブラザーズ』でよく遊んでましたね。

――カセットビジョンの発売当初から遊んでいたとすると、ゲーム歴39年ですか!

家庭用ゲーム機でいうと、カセットビジョン、ファミコン、PCエンジン、スーパーファミコン、PlayStationと一通り遊んできて、パソコンのゲームもやりましたね。ジャンルで言うと、ロールプレイングゲームが中心なんだけど、とにかくいろいろ遊んでるので、数が多すぎてタイトル名が出てこない。昔のことはだんだん忘れていきますからね(笑)。

――ゲームは日々の生活にどんなふうに関わっていましたか?

40代まではとにかく仕事で手一杯だったんだけど、ゲームを趣味にするようになってからは、暇を見つけてはゲームっていう毎日を送ってましたね。ゲームがあれば退屈も感じないし、ストレス解消にもなる。仕事で嫌なことがあっても全部忘れられるんですよね。私はゲームの他にも水泳や編み物を趣味にしていたんですけど、趣味があると生き甲斐になりますよね。

――これまでに一番ハマったゲーム、あるいは思い出のゲームというと?

『The Elder Scrolls V: Skyrim』(※2012年リリースのオープンワールドRPG)ですね。自由に人生を変えられる人生劇場みたいなゲームで、のんびりプレイできるし、もう一回やりたいのよね。

森さんの思い出のゲームが、この『Skyrim』。世界中で200以上の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を受賞した名作だ。

――ゲームもファミコンの時代からものすごい進化を遂げていますよね。近年の実写映画さながらのゲームをどんなふうに感じていますか?

昔のゲームはもっと単純でしたよね。今のゲームは難しいけど、それこそ映画を操作できる感じで、すごいと思いましたね。

若い人のコメントを読むと、気持ちが若返る気がする

家で一人でゲームをしていても、ゲーム実況を通して大勢の人とつながれる。今やチャンネル登録者数は18万人に迫る勢い!

「ゲーマーグランマ」としてYouTubeでゲーム実況をされるようになってから、「最高齢YouTuber」としても話題になっています。しかもチャンネル登録者が17万人以上もいて、森さんがゲームをする様子を何万人もの視聴者が見ている。

――80代になってから世の中の脚光を浴びるなんて想像もしなかったと思うのですが、ゲーム実況をやろうと思ったきっかけは?

ゲームはずっとやっていて、何年か前からYouTubeのゲーム実況も見ていたんですよね。それでゲームは一人でやるより、みんなに見てもらったほうが面白いだろうと思って、ゲーム実況を始めてみたんです。

――ゲーム実況を配信する際、気を使っていることや、やり甲斐を感じていることは?

本当は一発勝負がいいんだけど、なかなか上手くいかないゲームもあって、何回もやり直すことがあるんです。もちろん失敗し続けているときは、YouTubeには出さない。「なにコレ? 下手だなあ……」って後味が悪くならないように気をつけてますね。私がゲームをしているのを見た人が「楽しかったなあ」と思えるようにしたいんですね。やり甲斐を感じることは、みんなが応援してくれて、一緒に楽しんでくれることです。YouTubeに寄せられるコメントを読むと、苦労もふっ飛んじゃう。一気に疲れも取れて、若返った気がするんですよね(笑)。

チャンネル登録者から寄せられるコメントを読むことが、やり甲斐になっているという。

――日々、どんなゲームライフを送っていますか?

長いときで1日10時間くらいプレイしてます。数日置きにYouTubeの動画の撮影をするんですけど、何回やっても緊張しますね。だから終わったときは、ほっとするのよね(笑)。

――お孫さんがゲーム実況の動画の編集をされているそうですが、一緒にゲームを遊んだりもされるんですか?

孫とは一緒にゲームで遊ぶことはないですが、撮影と編集で協力してもらってます。あとはパソコンやゲームで若い人が使う言葉の意味がわからなかったりするので、孫に聞いて教えてもらってますね。パソコン用語やゲーム用語の通訳みたいな感じです。

――何歳になってもゲームが上手くなるコツや、ゲーム攻略の秘訣は?

やっぱり練習ですよね。体操と同じで、手の動かし方も毎日やらないと上手くならない。なんでもそうだけど、特に趣味はそういうものですよね。攻略法は、楽しみながらやること。楽しいと思って取り組まないと、続かないですからね。だからゲームは暇な人向きよね。年を取ったらゲームは本当にいいわよ。

――ちなみに今、ハマっているゲームは、どんなゲームですか?

『バイオハザードRE:3』(※ゾンビと戦うホラーアクションゲーム)ですね。敵の動きが早くて難しいんだけど、失敗ばかりで出来なかったことが、上手く出来るようになることにハマるんです。今はどこまで出来るか挑戦しているところで、途中で投げ出しちゃうかもしれないけど、焦らずやっていくつもりです。

ゲーム実況をするときは真剣そのもの。ぜひチャンネル登録して森さんの白熱のプレイを見てみよう。

――年を取ると孤独になりがちですが、むしろ森さんはYouTubeのゲーム実況によって、交流の輪が広がっているようですね。

この年にもなると交流関係もなくなってきますよね。私も外との交流はないけど、ゲーム実況をやっていると、たくさんの人からコメントがもらえるから、世間が広くなったように感じるんです。若い人のコメントを読むことで、今の人の気持ちがわかるようになったんですよ! 本当はコメントに返事を書きたいんですけど、一人に書いたら全員に書く必要があるから、多すぎて出来ない。でも、コメントは全部読んでます。私たちの時代とは、まったく時代が変わっていることを実感しますね。

長寿の秘訣は、真剣に楽しんでゲームをやること

たしかに時代も変わりましたね。昔はゲームというと、子どもの遊びだと思われていましたけど、今はゲームが趣味という大人も多い。子どもの頃からゲームに親しんできた世代が高齢になったとき、森さんのように何歳になってもゲームを楽しむお年寄りが増えると思うんです。

――年を重ねてからのゲームとの付き合い方を教えてください。

かっこいいことは言えないけど、ゲームって時代がわかる気がするんです。最新のゲームをやっていれば、世の中の進歩もわかる。それがゲームのいいところだと思いますね。

――ゲームは指も使うし頭も使うので、脳の機能低下の予防にもなりそうですよね。

ぜんぜんで出来なかったゲームがいくらか出来るようになったりするので、頭には良いかもしれませんね。多少は効果があるんじゃないですか? でも、出来るようになるまでに若い人の100倍くらい時間がかかる(笑)。それでもやり続ければいいと思います。私の場合、ゲームをしているとイライラすることがなくなるし、嫌な夢を見ないでぐっすり眠れるようになりましたね。

日頃からゲームをやっていると、ストレス解消になってイライラすることもなくなり、安眠できるそうだ。

――人気ゲームから過激な内容のゲームまで、いろんなゲームの実況をしてますよね。90歳になっても新しいゲームにトライし、情報発信するその元気の源は?

大袈裟なことじゃないんです。みんなは何を喜ぶかな?って日頃から考えているだけなんですよ。私ならこれが面白いと思うけど、みんなはそうでもなかったりして、当たり外れがありますからね。それであえてホラーゲームをやってみたりしてね(笑)。

以前、ゲーム実況されていた『Days Gone』は、未知のウイルスによるパンデミック後の世界を舞台としたサバイバルゲームですが、新型コロナで戦々恐々とする今の社会情勢を思い浮かべてしまいました。

――今回の新型コロナ騒動については、どんな考えをお持ちですか?

結局のところ、天変地異っていうのは昔から常にあるのよ。天災が起こらなかったとしても、戦争のときなんて、食べるものもなく、毎日、防空壕に入れって言われていたわけですから。だから、驚かないと言えば驚かない。大事なのは、日頃から覚悟しとく心よね。

――外出自粛の日々が続いていますが、そんなとき、家で遊べるゲームはちょうどいいストレス解消になりますよね。この状況を切り抜けるアドバイスをお願いします。

アドバイスできればいいけど、これについては私だっていい方法があれば教えてほしいくらいです。買い物さえどうにかできれば良しとして、この際、家の中を掃除してピカピカにするとかね。あとはやっぱりゲームがあればいいわよね。結局、他所様に「こうしちゃいけない」とか「ああしなさい」とは言えないもですよ。ひとつだけ言えることは、普段からクヨクヨしないことが大事だと思いますね。

「普段からくよくよしないことが大事」と森さん。ゲームにトライし続ける前向きな気持ちが、長寿の秘訣かもしれない。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

PlayStation5が出たら、やりたいですね。もっと画面がきれいなモニターも欲しいです。あと、もうちょっとYouTubeで人気が出たらいいな……って思います(笑)。

――老後はゲーム三昧というのも楽しそうですね。本日はありがとうございました!

将来、私たちも森さんみたいに何歳になってもゲームに夢中になっているのかも。
浅野 暁
浅野 暁 フリーライター

週刊求人誌、月刊カルチャー誌の編集を経て、2000年よりフリーランスのライター・編集者として活動。雑誌、書籍、WEBメディアなどでインタビューや取材記事、書評や企画原稿などを執筆。カルチャー系からビジネス系までフィールドは多岐に渡り、その他、生き方ものや旅行記など幅広く手掛ける。全国津々浦々を旅することがライフワーク。著書に矢沢ファンを取材した『1億2000万人の矢沢永吉論』(双葉社)がある。

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