自宅での介護から、老人ホームでの介護に切り替えるタイミングは多くの方が悩まれるポイントです。介護者の心身の健康が損なわれたら、あるいは仕事などが続けられなくなる前に、というのは大前提ですが「もう少し自分が頑張れば…」と考えてしまう方も多くいらっしゃいます。
そこでLIFULL 介護では、どのようなタイミングで施設への入居を考えたか、近しい方の老人ホーム入居を経験された方に調査(※)しました。介護生活の中で、決断するタイミングの目安になれば幸いです。
入居時の要介護度として最も多かったのが「要介護2」という状態で、全体の16.7%を占めました。これは立ち上がりや歩行などが自力で出来ない場合が多く、排せつや入浴などにも介助が必要な状態です。次いで「要介護1」の15.8%、「要介護3」の15.4%、「要介護4」の12.7%と続きます。
公的な介護施設である、特別養護老人ホームへの入居条件は原則として要介護3以上です。しかし、今回の調査では要支援1以上、要介護2以下で施設へ入居した方が54.6%を占めました。特別養護老人ホームへの入居要件に満たないうちから施設への入居を検討される方は少なくないことがわかります。
要介護2以下でも、特例として特養への入居が可能なケースはありますが、多くの場合は検討先が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅になります。
入居を考えるきっかけとなった被介護者の状況について聞いたところ、46.0%に「認知症」が、33.3%に「認知症以外の疾患」があったという結果になりました。また、「入院していた」は29.6%、「特に疾患がなかった」 は12.7%となりました。
それでは、具体的にどのような認知症の症状が入居を考えるきっかけとなったのでしょうか。
入居のきっかけに「認知症」をあげた920人に、介護施設入居に強く影響した認知症の症状を3つまで聞いたところ、「排せつの失敗をする」(32.3%)、「お金の管理ができない」(29.0%)、「怒りっぽくなる、暴力をふるう」(18.2%)が上位3項目となりました。
また、「異食」、「食事をとらない」などの食事トラブル(17.2%)や、外出して戻れない症状(16.7%)と回答した方も次いで多い結果となりました。排せつの介助が必要な場合は、夜間の介助が必要なケースも多いでしょう。また食事や外出にトラブルを抱えると日中常に見守りが必要な可能性があります。こうした症状が老人ホーム入居のきっかけとなっているようです。
認知症以外の症状が入居のきっかけとなったと答えた666人に、強く影響した症状を3つまで聞いたところ、「骨折」と「脳血管疾患」が共に17.0%でトップとなり、次いで「糖尿病」(15.9%)という結果になりました。
骨折や脳血管疾患は、それがきっかけで日常生活に影響が出ると考えられますし、糖尿病は食事のコントロールを専門家に任せたい疾患であるため、それぞれが上位にあがるのも納得の結果と言えるのではないでしょうか。
入居前にどれだけ自宅で介護をしていたかを聞いたところ、介護をしていたケースでは「1年以上〜2年未満」が18.5%で最も多く、次が「2年以上〜3年未満」の14.4%、「6ヶ月以上〜1年未満」が12.1%で続く結果になりました。
自宅での介護期間があるケースでは3年未満の合計が59.6%と、約6割のケースで自宅介護から3年以内に施設介護へと切り替えていることがわかります。
また、「自宅での介護期間はない」と答えた方は15.4%となり、全体では2番目に多いケースであることがわかります。ケガや病気で入院し、退院後に自宅で暮らすことが難しくなったケース などが考えられます。 老人ホームへの入居は自宅介護の末にたどり着くものというイメージが強いですが、突然入居が必要となり、急いで情報収集をしなければいけなくなることもあるのです。
老人ホームの入居相談を受けていた経験から、ご家族の入居を躊躇っている介護者の方には入居の決断タイミングの目安としてこんなことをお伝えしていました。「睡眠時間を削って生活に支障を来す、または精神的・肉体的な負担が限界を迎える前に、ご家族の入居を考えましょう」。介護はいつ終わるかわからないもの。続けられる介護であることが一番重要です。
また、自宅介護の期間がないまま老人ホームへ入居する方も一定数いらっしゃり、老人ホームの情報が突然必要になる場合も考えられます。親の介護が始まる前から、少しずつでも介護保険や老人ホームについての情報を入手しておくことをお勧めします。
※調査概要
調査時期:2023年7月4日~7月7日
調査対象:全国の20歳~79歳 男女2,000名 ※未既婚不問、有無職不問
・家族、親族の中で1年以内に介護施設入居者(*)がいる方
・家族、親族の介護施設の情報収集や選定に関与した方
*「介護施設」:介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(介護医療院)
調査手法:インターネットによるアンケート調査
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