【知って予防】膝痛の改善|自宅で楽しくできる効果的な運動法

多くの方々が悩みを持つ膝の痛み。しかし、その原因は何なのか、また痛みを改善させるためのリハビリ方法や、介護予防を目的とした体操のやり方はあまり知られていません。

ここでは痛みの原因を解説したうえで、自宅で行える簡単なトレーニングや体操方法をご紹介します。これを継続することで痛み改善にも効果的です。

ページ後半では動画を用いて体操方法を分かりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

関節痛は要介護の一因にも

多くの高齢者は膝の痛みに悩まされています。

「東京大学医学部22世紀医療センター」によると、日本ではレントゲンで調べたところ変形性膝関節症が2,400万人いると推測されています。

また、2019年の厚生労働省の調べによると「介護が必要となった主な原因」を要介護度別にみると、要支援では「関節疾患」が18.9%で最も多い割合となっています。

これらの情報から、およそ5人に1人程度の割合で、膝などの関節に痛みを抱えている人がいることが分かります。では、これだけ多くの方々が悩まされている痛みの原因とは、どのようなものがあるのでしょうか?

その原因をみていきましょう。

膝の痛みの場所と原因

膝の痛みは、関節の内側が痛むか外側が痛むかによって、考えられる原因は異なります。

膝の内側が痛む原因

痛みの原因として最も主要なものは変形性膝関節症です。

これは膝関節に発症する慢性の関節炎で、多くの場合が外傷などの明確な原因がなく、自然に発症してくるものです。レントゲンを撮ってみると、関節のすき間(関節裂隙<かんせつれつげき>)が狭くなったりして痛みを生みだしていたりします。

この症状をもつ男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢になるほど変形性膝関節症になる可能性は高くなります。

症状は、「初期、進行期、末期」の3期に分かれます。

1.初期
関節の軟骨がこすれ合い、年齢的な要因もあり、軟骨の表面が傷ついてきます。そのため、立ち上がり・歩き始めなど動作の開始時のみに痛みが生じ、少し休息すれば痛みが消えたりします。
 この時期の治療としては、湿布を貼ったり、痛み止めの内服や関節注射(ヒアルロン酸)を行います。また、リハビリでの運動療法や温熱療法も有効です。
2.進行期
関節の軟骨がすり減ったり、軟骨がはがれてしまうことで、骨に負担がかかり、関節が変形してしまい、正座や階段の上り下りが難しくなります。
 この時期の治療としては、初期の治療と変わらず、痛み止めの内服や関節注射を行います。また、膝の痛みが強い人に関しては膝の装具も効果的となります。
3.末期
関節の軟骨がなくなり、骨が露出するため、骨同士が直接こすれ合ってしまい、関節が硬くなり、変形も進行します。痛みに関しても強く、安静時にも痛みが取れず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行することが難しくなる場合があります。
 この時期の治療としては、痛みが強い場合は、人口膝関節置換術などの手術を行います。

膝の内側が痛むほかの原因

・内側半月板<ないそくはんげつばん>
・前十字靭帯<ぜんじゅうじじんたい>
・内側側副靱帯<ないそくそくふくじんたい>
といった靭帯の損傷が多く考えられます。

また、別の原因として、膝の下にある脛骨<けいこつ>(いわゆる 脛<すね>)の内側部分にある筋肉の、炎症やハリなどによって膝の内側が痛むことがあります。

膝の外側が痛む原因

膝の外側が痛む原因は、外側半月板<がいそくはんげつばん>や外側側副靱帯<がいそくそくふくじんたい>などの損傷が考えられます。

また、別の原因として、太ももの筋肉である大腿四頭筋<だいたいしとうきん>の外側に位置している脛の外側の骨である腓骨<ひこつ>に付く腸脛靭帯<ちょうけいじんたい>という大きな靭帯が痛みの原因になっていることもあります。

上記のように膝の痛みは大きく内側・外側と分かれますが、その多くは内側に痛みが出やすくなっています。紹介した内容が、全ての膝の痛みの原因とは限りませんが、主要な原因とされる部分です。覚えておきましょう。

自宅でできる簡単筋トレ法

次に、医療機関等のリハビリで行う筋肉トレーニング方法をお伝えします。膝の痛みを起こさせないように、このトレーニング方法を実践してみましょう。

膝の痛み緩和には筋肉トレーニングが有効

痛みを緩和するためには、筋肉をつけることが重要です。

膝のまわりの筋肉が強くなることにより、膝の動きが安定し、関節や骨、靭帯、腱などにかかる負担が減るため痛みを和らげることが期待できます。

しかし、トレーニングといってもどのように行えばいいのか理解している人は少ないと思いますので、今回は5つポイントをお伝えします。ぜひ意識して行ってみてください。

筋肉トレーニング時の5つのポイント

①実施回数は本人の疲労感に合わせて決定する
筋肉トレーニングの回数は何回と決めても良いですが、人によって行える回数は変わります。そのため、回数は筋肉トレーニングを行って疲労感が出てくるまでの回数とします。その回数が実施回数の目安となるためしっかり覚えておいて下さい。
②何セットかに分けて行う
筋肉トレーニングを行う際は1度に多くの回数を行わずに、何セットかに分けて行うようにします。効果が高いと言われているやり方というのは、1種目につき2~3セット、セット間の休憩は1~3分で行うのが良いといわれています。
③頻度は週に2~3回程度にする
筋肉トレーニングが最も効果的な頻度は週に2~3回となっています。頻度がこれより多すぎても、少なすぎても効果が低くなると言われています。
④正しいフォームで行う
フォームが崩れると、鍛えたい筋肉に対して負荷がかからなかったり、目的と違う場所に負担がかかることで怪我をしてしまう危険性もあります。
⑤鍛えたい筋肉を意識する
鍛えたい筋肉を触ったり見たりして意識をするようにして下さい。鍛えたい筋肉を意識すると、筋トレの効果が上がることがわかっているため、しっかり意識するようにして下さい。

筋肉とレーニングを行う時に意識する点が理解できたかと思います。つぎは実際のトレーニング方法をみていきましょう。

太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)の鍛え方

  • 1.両足を伸ばした状態で座ります
  • 2.鍛えたい方の足の膝の下にタオルを丸めて入れます
  • 3.つま先を上に向けながら膝の裏でタオルを下に押し付けます
  • 4.タオルを下に押し付けた状態で数秒間姿勢を維持します
  • 5.これらを1回として、15~20回程度の回数で2~3セット程度行います

*ポイント
タオルを下に押し付けた状態で力を抜かずに、膝をしっかり伸ばしきった所で姿勢を保つようにします。
この方法は太ももの前面の中でも特に内側の筋肉(内側広筋)に効果があります。

足の付け根を含めた全ての足の筋肉の鍛え方

  • 1.仰向けで寝て両足を伸ばします
  • 2.つま先をしっかり上に向けます
  • 3.膝を曲げずに伸ばしたまま、足を上げていきます
  • 4.足の上げ下ろしをゆっくり繰り返して行います
  • 5. これらを1回として、10~15回程度の回数で2~3セット程度行います

*ポイント
足の上げ下げを行う時は膝を曲げることなく、しっかり膝を伸ばしたまま行うようにします
腰痛がある場合は、腰への負担を軽減させるために、足の上げ下げを行う時に逆の上げ下げを行っていない方の足を曲げて、膝を立てた状態で行うと、腰への痛みを軽減させることができます。

筋肉トレーニングの方法は他にも沢山ありますが、まずは少ない種類をしっかり行うようにして、少しずつ筋肉トレーニングの種類を増やすようにしていきましょう。

※決して無理はせずに、継続できる範囲内で実施してみてください。もしも痛みなどが生じた際はトレーニングを止め、医師の診断を受けましょう。

【動画でわかる】介護予防体操

膝の痛みに関しては、筋肉のトレーニングだけではなく、以下で紹介する体操も効果的です。

この体操は椅子に座った姿勢で行うことができるので、筋肉トレーニングを行うことが難しい身体状態の方にもおすすめできます。

また、膝の痛み改善だけではなく、健康寿命を伸ばすための介護予防としても効果的です。

【動画でわかる】ひざ裏のマッサージ・ひざの開閉運動

【ふくくる体操レク動画①】ひざ裏のマッサージ、ひざを抱える運動

【ふくくる体操レク動画②】ひざの開閉運動・内もものマッサージのしかた

※動画協力「ふくくる」~介護現場ですぐに活用できるお役立ち動画配信サービス~
https://www.fuku-kuru.tv/taiso

ひざに効果的な体操・マッサージ方法

①膝の裏のマッサージ

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.マッサージを行う方の膝を軽く伸ばします。
  • 3.伸ばした膝の裏を両手で揉むようにしっかりマッサージを行います。
  • 4.しっかりマッサージをしたら反対側の足も同じようにマッサージを行います。

*マッサージは気持ちよさを感じる程度の力で行います

②膝を抱える運動

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.片方の足の付け根、膝を曲げて、胸に当たるように寄せていきます。
  • 3.胸に当たるように足を上げて10秒間しっかり止まります
  • 4.足を下ろしたら反対側の足も同じように胸に当たるように足を寄せていきます。

*できる方は左右の足で2セット程度を目安として下さい。

③ひざと足首の運動

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.片方の膝をまっすぐ伸ばします。
  • 3.膝をまっすぐ伸ばしたままで足首を上下にゆっくり5回程度上げ下げを行います
  • 4.足を下ろしたら反対側の足も同じように膝をまっすぐ伸ばした状態で足首を上下に動かします

④足を押し合う運動

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.座ったままの姿勢で左右の足を交差させます。
  • 3.交差させた足の上にある足は下向けに下にある足は上向けに力を加え、5秒間押し合いを行うようにします。
  • 4.足を下ろして逆の交差方向でのトレーニング2セット程度行います。

⑤膝を開く運動

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.左右の膝を外側に開く方向に力を入れていきますが、両手で膝の内側に閉じる方向へ抵抗を加えます。
  • 3.この運動を10秒1セットとして2セット程度行います。

⑥膝を閉じる運動

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.左右の膝を内側に閉じる方向に力を入れていきますが、両手を交差して外側に開く方向へ抵抗を加えます。
  • 3.この運動を10秒1セットとして2セット程度行います。

⑦内もものマッサージ

  • 1.椅子に両方の足を床に付けてしっかり座ります。
  • 2.足を軽く広げて、両手で太ももの内側を揉むようにしっかりマッサージを行います。
  • 3.しっかりマッサージをしたら反対側の足も同じようにマッサージを行います。

*マッサージは気持ちよさを感じる程度の力で行います

今回、紹介したメニューを全て行うのが難しい方は、メニューの数や、体操の実施回数を減らすなどして調整してみましょう。

※決して無理はせずに、継続できる範囲内で実施してみてください。もしも痛みなどが生じた際は体操を止め、医師の診断を受けましょう。

まとめ

今回ご紹介した、痛みを改善するための筋肉トレーニングや介護予防体操をしっかり行うことにより、筋力が向上し膝の痛みが和らぐことが期待できます。
痛みが和らぐことで、歩くことや外出にも前向きに取り組めるようになりますね。

膝の痛みと上手に付き合いながら、日常生活が前向きに送れるように、自宅でもトレーニングや体操をしてみましょう。

イラスト:安里 南美

この記事の制作者

野田 政誉士

著者:野田 政誉士(理学療法士)

(理学療法士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター2級)
およそ10年間、理学療法士として病院に勤務。現在は臨床と管理業務の両方を行っており、医学的知識だけではなく、マネジメント業務にも力を入れている。

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