「介護が始まり何から手をつければ……」をサポートしてくれる東京都の「介護と仕事の両立支援策」とは

親が交通事故やガン、脳梗塞などで介護が必要になり、仕事を辞めなくてはならないかも!?という危機は、世代問わずだれにでもやってきます。では、働き続けるために、どんなことが必要なのか、だれが助けてくれるのか――。この連載では、さまざまな視点から、「介護離職」の問題を解きほぐしていきます。

今回は行政が介護離職についてどんな対策をとっているのか、東京都の労働環境関連部署に取材をしました。道府県によって公的支援の内容は異なりますが、ぜひ東京都の例を参考にしてください。

今回のtayoriniなる人
猪口純子
猪口純子 東京都産業労働局雇用就業部労働環境課長。同課では、「ライフ・ワーク・バランス」を推進するさまざまな施策を行っている。

「いきなり介護!」に対応する電話とメール相談

電話でのサポート

――東京都は人口が多く、また、近隣の県から東京の企業に勤務するために流入する人も多いですね。東京都の就業者数は768万2千人で、日本の総人口は減少しているのに、前年に比べ16万5千人(2.2%)増加しています。

猪口

そうですね。東京都は就業者数が多い分、介護と仕事を両立しながら働いている方は、とても多いと思います。

総務省が発表している全国の介護離職者数は約9万9000人(平成29年就業構造基本調査)。東京都はそのうち7800人です。前回の調査に比べると漸減していますが、依然として高い状況にあります。 東京都としては、介護に直面した方が離職せずに、働き続けられる職場環境の整備を推進しています。

――なぜ、介護離職を防ぐための環境づくりをするのですか?

猪口

介護離職は、働く方にとって、キャリアや収入の面から考えても、決して望ましいことではありません。また、企業にとっても、大切な人材の離職は経営にも関わる大きな問題です。

特に、今後ますます労働人口そのものが減少していく中、多くの企業にとって、人手不足は大変深刻な課題です。そうした中、貴重な人材が介護を理由に突然離職してしまう、特に、介護に直面する40代、または30代は会社の中枢として働いている方も多いでしょう。そのような方の離職は、企業の経営に大きな影響を及ぼしかねません。経営の継続自体が困難になる可能性もあります。

かつて、育児の支援や介護の支援は「福利厚生」としてとらえられることもありましたが、今や重要な経営課題としてとらえなければ、人材の確保ができません。

こういう時だからこそ、従業員が働きやすい職場づくりを進めることが必要です。行政としても、そうした企業の取組を後押ししていくことが重要だと考えています。

もはや労働環境の整備は経営課題の一つなんですね。ちなみに、都では「ライフ・ワーク・バランス」と表現されていますが。

猪口

一般的には、「ワーク・ライフ・バランス」と呼ばれていますね。ですが、東京都では、小池知事の「誰もが人生、生活をもっと大切にすべき」との考えに基づいて、「ライフ」と「ワーク」を逆にして、「ライフ・ワーク・バランス」という表現を使っています。

――では、どのような支援をしているのでしょうか?

猪口

まず、働く個人に対する支援ですが、東京都にお住まいの方、または就業されている方に向けて、「とうきょう介護と仕事の両立応援デスク」という相談事業を実施しています。

介護と仕事の両立に関することは何でも相談いただけます。介護は、急に直面するものですので、予め準備をしておくという余裕がないことが多いですし、その方によって、事情も背景も全て異なってきます。そこで、個別の相談に対して、解決に必要な助言をさせていただくというサポートを行っています。

電話のほか、メールでの相談も行っていますので、忙しい方にもご活用いただけると思います。

――ただ、急に介護、という事態になると、混乱してしまって、何をどう相談したらいいのか、相談のしかたすらわからない、というのが実感ではないでしょうか。

猪口

そうですよね、でも、それでかまいません。相談員が丁寧にお話を伺って、今、何が必要なのかをお答えします。構えることなく、どんどんお電話やメールをいただければと思います。お気軽にアクセスください。

「会社に言いにくい」をなくしていく支援も

働く上での不安

――専門の相談員とはどのような方ですか?また相談後は、どのように支援してもらえますか?

猪口

ケアマネジャーなどの資格を持った人が常駐して相談に対応します。介護保険や保険外サービスのことなどに熟知していますから、両立に向けた助言や情報提供は、「次にどう行動したらいいか」のヒントになると思います。

その上で、専門的なことは、介護保険サービスのお住まいの区市町村窓口をご紹介する、また、労働問題に関する相談でしたら、労働相談を担当する「東京都労働相談情報センター」をご紹介するなど、適切な専門の窓口をご案内します。

また、介護に直面してみないと何か必要なのかわからない、といったことは、実は企業の側にも当てはまります。「急に従業員が介護のために会社を辞めたいと言ってきた。どんな支援をすればいいのかわからない」「介護休業を従業員が取る場合、どんな手続きが必要なのか」など、企業の経営者や人事担当者の方からのご相談もお受けしています。必要に応じて、社会保険労務士などが対応させていただきます。

――それぞれの地域にあるサービスを、若い介護者は知らない場合が多いですよね。

猪口

そうですね。各地域には、介護サービスのことを何でも相談できる地域包括支援センターがありますが、介護に関係していないと、その存在も知らない場合が多いと思います。また、知っていても、働いていたら、多くの場合、平日の会社帰りに地域包括支援センターに足を運ぶことは難しいでしょう。そのような状態から、いきなり介護者となるのですから、戸惑われることも沢山あると思います。

――会社に介護をしていることを言いにくい、言える風土がない、と感じている人も多いです。

猪口

そうした状況を変えていくためにも、東京都では企業側にさまざまな働きかけをしています。介護と仕事が両立できる社会を実現するには、働く環境も変えていく必要があると痛感しています。

◆次回は介護と仕事の両立について、企業側に対する東京都の支援をお伝えします。

とうきょう介護と仕事の両立応援デスク

介護をしながら働くことについて、メールと電話で相談を受け付けている窓口。ケアマネジャーなど、専門の相談員が対応してくれる。

三輪泉
三輪泉 フリーランス編集・ライター

女性誌や子ども関連雑誌・書籍の執筆を長年手がけ、現在も乳児や幼児のママ向けフリーペーパーで食育の連載を担当。生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)。近年は介護・福祉・医療関連の記事、書籍編集も数多い。社会福祉士資格を取得し、成年後見人も務める。福祉住環境コーディネーター2級。

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