認知症のお父さんと、まだ幼い長男たー君を抱えたライターの岡崎杏里さんは、育児と介護を同時進行で行う、まさに「ダブルケア」の当事者です。
育児も介護も大変な状況がクローズアップされがちですが、幼い孫と認知症のじいちゃんが織りなす日々は、意外にも笑える場面が多かった!岡崎さんちの日常をお届けします。
第10回は他の「おじいちゃんと孫」とちょっと違う、たー君とじいちゃんの関係についてのお話です。
夫ヒロさんのお父さん、つまりたー君にとって父方のおじいちゃんは、「まだ帰りたくない!」と言えば、たー君と出かけた公園にずっと付き合ってくれるような、いつまでも孫ファーストな存在です。そんなおじいちゃんにいつもよりちょっとワガママになるたー君。それを「しょうがないな~」と、ニコニコしながら受け入れるおじいちゃん。理想的なおじいちゃんと孫の関係がそこにはあります。
一方で、私のお父さん、認知症のじいちゃんとたー君の関係はかなり違うものがあります。特に食べ物が絡むと、孫だろうがなんだろうが父さんは一切の容赦がありません。「ふたりで仲良くおやつを食べてね~」とお菓子を渡すと…。
たー君がテレビなどを見てお菓子から目を離した隙に、父さんはたー君の分のお菓子を口いっぱいに頬張ってしまうのです。ひどいときは、たー君がよそ見をしている間に、たー君の手からお菓子を取り上げ食べてしまうことも。
当然たー君はギャン泣きですが、そんな孫などお構いなしに、じいちゃんはモクモクとお菓子を食べ続けます…。そこには理想的なおじいちゃんと孫の関係とは程遠い空気が流れています。
ほかにも、たー君が楽しく見ていたテレビ番組を、父さんがいきなり自分の見たい番組に替えてしまい、たー君をギャン泣きさせることも。それを見ていた母さんが「もう、また孫を泣かせて、何が楽しいの!」と激怒。
こうなると、孫を囲んで「オレの家なんだから、オレがみたいテレビを見るんだ」「今日ぐらい孫に譲ってあげてもいいでしょう」と父さんと母さんのケンカが始まり、それを見たたー君がさらに大泣き。リビングが修羅場と化します。
こんなふうにヒロさんの実家と、岡崎家ではたー君の扱いが全く異なるのですが、最近では「理想とは程遠いけど、これもある意味、じいちゃんと孫の関係だね」と、私と母さんは目の前の現実(!?)を受け入れるようになりました。
そして近頃、幼稚園に通い社会性を身につけ始めたたー君に変化が! 「じいちゃん、お菓子半分こしよう!」と、先手を打つようになったのです。さらにテレビ番組も「順番こに見ようね!」と、仕切るようになりました。
どうやらたー君は、たー君なりに岡崎家に順応しながら成長しているようです。子どもってすごいな~。
茨城県つくば市出身。池袋の近くと横浜市の内陸部を経て、つくば市在住。書籍編集・ライティング→IT関連企業を経て、2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動中。
書籍・雑誌・WEB・広告などの媒体をメインにイラストを提供しています。著書に「赤子しぐさ」「赤ちゃんのしぐさ」(共著)があります。
ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)として、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。2013年に長男を出産。ホームヘルパー2級。著書に23歳から若年性認知症の父親の介護、ガンを患った母親の看病の日々を綴った『笑う介護。』や『みんなの認知症』(共に、漫画:松本ぷりっつ、成美堂出版)などがある。
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