認知症の父さんと、まだ幼い長男のたー君を抱えたライターの岡崎杏里さんは、育児と介護を同時進行で行う、まさに「ダブルケア」の当事者です。
育児も介護も大変な状況がクローズアップされがちですが、幼い孫と認知症のじいちゃんが織りなす日々は、意外にも笑える場面が多かった!岡崎さんちの日常をお届けします。
色々とあった、たー君出産後の緊急里帰り。この時、気づいたことがありました。
多くのママたちは子どもがうまれて初めて「紙オムツ」というものに触れることになると思いますが、幸か不幸か、私は父さんの介護により子どもが生まれるずっと前から紙オムツに馴染みのある生活を送っていました。
が、同じ紙オムツでも、たー君と父さんのそれは、似て非なるもの!
まずは新生児用の紙オムツの“小ささ”にびっくり。ダブルケアラーであるからこそ、普通のママさんとは違う視点でいちいち驚く新米ママの杏里なのでありました。
大人用と赤ちゃん用の2つを並べて、さらに気づいたのですが、大人の紙オムツのパッケージは「説明重視?」なのに対して、赤ちゃんの紙オムツは説明よりも「イメージ重視?」。中身は似たものなのに、「パッケージ」ひとつとっても、やはり似て非なるものなのかもしれません。
さらに、大人の紙オムツと赤ちゃんの紙オムツで大きな違いを発見。
たー君のオムツ替えを手伝ってくれていた母さんが「ちょっと、赤ちゃんの紙オムツって、濡れると色が変わって汚れたことを教えてくれる機能がついてるよ! これ父さんにも欲しいわー」と、叫んでいました(ちなみに私は布のオムツだったので、赤ちゃんの紙オムツは母さんにも新鮮だった模様)。
そうなんです! 赤ちゃんの紙オムツの多くには汚れるとオムツについたラインの色が変わり、交換タイミングを知らせてくれる機能がありますが、父さんが愛用している紙オムツに、ソレはありません。
お知らせラインがある大人用紙オムツもあるにはありますが、子供用に比べたら少ない。そもそも大人は汚れたら自覚できるし、量やニオイの面でも気付きやすいので少ないのかもしれません。
それでも、認知症によりその自覚が難しくなり、紙オムツを取り替えることを面倒臭がる父さんは、紙オムツのキャパを越え、おしっこが漏れてズボンを汚していても「(オムツは)濡れていない!」と言い張り、オムツを替えたがりません。それにより、父さんと私や母さんがどれだけケンカをしたことか!
もし、父さんの紙オムツにも交換タイミングのお知らせ機能があれば、「色が変わったから、汚れているよ!」とケンカしなくて済むかもしれないのに……。
5歳になったたー君はずいぶん前にオムツを卒業しましたが、父さんのオムツ置き場を見るたびに、母さんはここに「2人分の紙オムツがあったこともあるのよねー」と、我が家ならではの感覚で当時を懐かしんでいるのです。
茨城県つくば市出身。池袋の近くと横浜市の内陸部を経て、つくば市在住。書籍編集・ライティング→IT関連企業を経て、2009年よりフリーランスのイラストレーターとして活動中。
書籍・雑誌・WEB・広告などの媒体をメインにイラストを提供しています。著書に「赤子しぐさ」「赤ちゃんのしぐさ」(共著)があります。
ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)として、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。2013年に長男を出産。ホームヘルパー2級。著書に23歳から若年性認知症の父親の介護、ガンを患った母親の看病の日々を綴った『笑う介護。』や『みんなの認知症』(共に、漫画:松本ぷりっつ、成美堂出版)などがある。
岡崎杏里さんの記事をもっとみるtayoriniをフォローして
最新情報を受け取る