独居高齢者は512万世帯に…超高齢社会を解決する「デジタル同居」とは

少子高齢化が加速する日本では高齢者の増加に伴い、65歳以上の一人暮らしの方、いわゆる独居高齢者が増えてきています。

国立社会保障・人口問題研究所の『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2018年推計)によれば、2020年から2040年の20年間で「75才以上高齢者を世帯主とする単独世帯」は396万世帯から512万世帯へと116万世帯も増加すると推計されています。

高齢になれば買い物や通院に一人で行けなくなったり、入浴や食事などに日常的な介護が必要になることもあります。

しかし、2023年版高齢社会白書によると介護をする子供世代の人口は2020年から2040年で1,296万人も減少すると推計されており、物理的に同居をして介護や日常生活のサポートをするのは難しくなっていることが明白です。

パナソニックらが共同でデジタル同居サービスを開発

こうした日本の状況を、テクノロジーの力でカバーする「高齢者と遠隔家族をつなぐデジタル同居サービスの開発」が始まりました。

「デジタル同居」をコンセプトに、独居高齢者の生活行動(飲食・服薬・活動・睡眠・生活リズム・排泄等)データを遠隔に住む家族がいつでも閲覧でき、まるで生活を共にしているかのようなつながりがもてるサービスです。

開発に取り組んだのは、パナソニック ホールディングス株式会社を中心とする、学校法人国際医療福祉大学、株式会社 善光総合研究所の三者です。

<開発を担う三者それぞれの役割・機能>

パナソニック ホールディングス株式会社

・デバイス・ソフトウェアの複合技術開発
・高齢者の生きがい向上、遠隔家族の満足度向上を支えるプラットフォームの構築
・自治体における「新しいライフスタイル(デジタル同居)」の実証


学校法人国際医療福祉大学
・データ活用スキルの習得のための教育ツール開発、介護支援専門員等の育成

株式会社 善光総合研究所
・在宅データ利活用スキルを有し、スマート在宅ケアを実現する多職種専門職人材・IoT 機器等の導入設置を助言する人材の育成

内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に採択

この「高齢者と遠隔家族をつなぐデジタル同居サービス開発」は、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に採択されており、デジタル技術を用いて遠隔家族を含む包摂的コミュニティを実現することを目指しています。

独居高齢者世帯で起こる問題を解決するためには、まだ、常時介護を必要としない予防期における高齢者の健康維持・生活維持のためのセルフマネジメント促進、効率的に一人ひとりの状況を把握したうえでのケアマネジメントが欠かせません。

2040年には独居高齢者世帯が512万にも到達すると推計される一方、現役世代の減少、仕事・育児・介護の両立を担う現役世帯の心身的な負担等を考えると、物理的な同居が難しい現状が見て取れます。

そのため、このサービス開発では、在宅高齢者のケアを革新するスマート在宅ケアの実現を目指しています。

研究開発目標としては、2025年度末に「デジタル同居」を可能にする検知・介入機能を実現するデバイスやソフトウェア等の複合技術のプロトタイプ開発の完了を掲げています。

それと並行して、実証地域で50%以上の方の生きがい感(自己肯定感や社会参加意欲等)の向上と専門職向け教育ツールの妥当性確認、専門職向けの教育ツールプロトタイプの初期テスト完了確認などを中間目標としています。

最終目標は2027年度末時点にデジタル同居サービスを有償サービスとして提供可能な状態にすること、実証地域での70%以上の方の生きがい感向上、事業採算性・収益予測等を含む事業モデルの策定完了、実証地域の約3割の専門職のスキル修得完了を定めています。

ひとり暮らし高齢者と遠隔で同居するライフスタイル

「高齢者と遠隔家族をつなぐデジタル同居サービス」には、高齢者、遠隔家族の両方に大きなメリットがあると考えられています。

<高齢者側のメリット>

介護予防期:子世帯との関わりを持ちつつセルフケアで健康維持が可能

要介護期 :地域医療福祉チームのデータを活用。高品質なケアで在宅生活を延伸可能

<遠隔家族側のメリット>

・介護負担の軽減

・同居による心理的負担の軽減

・世代交流による楽しみ、支え合いでのQOL向上

まとめ

日本の人口構造は2040年を迎える頃に大きく変化し、労働人口が減る一方、独居高齢者が増え現役世代への負担が増加することが明白です。そして、仕事と育児を並行する現役世代が老親と同居することは難しく、遠隔介護者が増えていくと予想されています。

こうした状況を打破するために開発された、「デジタル同居サービス」により、包摂的コミュニティプラットフォームの構築実現に期待が寄せられます。

LIFULL 介護編集長 小菅のコメント

2023年12月におこなった当社の調査では、「週に1回以上親と会う人」が25%、「月に1回~3回会う人」が22.8%、「2,3ヶ月に1回の人」が12.5%、「4ヶ月から半年に1回の人」が24%という結果でした。半数近い人が、月数回の頻度で親元へ通うのは意外と多い印象を受けます。

ただ、これが近場ならともかく遠方になると子どもの時間的・金銭的コストも負担となり、親と頻繁に会うことは難しいでしょう。

そこで近年は、低価格の家庭用IoTセンサーや見守りカメラなどが普及しつつありますが、

今回の「デジタル同居」は、データの収集と活用、外部サービスとの連携等を前提としているようです。

高齢者の生活データから判断し、介護予防のために何をすべきかサービス事業者からの提案も期待されます。

また、「健康で長生きしてほしい」という家族の願いだけでなく、

高齢者自身にとって趣味や社会参加など、生き甲斐を見つけるためのサポートも望まれます。

参考:高齢者と遠隔家族をつなぐデジタル同居サービスの研究開発を開始

2024/04/08

介護準備、4割は「準備なし」ー帰省でチェックしておきたい親のこと5選

編集長プロフィール
小菅秀樹
小菅秀樹 LIFULL 介護編集長。老人ホーム、介護施設の入居相談員や入居相談コールセンターの管理者を経て現職に就任。「メディアの力で高齢期の常識を変える」をモットーに、さまざまなアプローチで介護関連の情報を発信しています。
高下真美
高下真美 フリーライター

人材ベンチャーや(株)リクルートジョブズでの営業を経て、2016年よりフリーランスのライターとして活動。Webメディアで採用からサービス導入事例など幅広い企業インタビュー、SEO記事などを執筆。最近ワーママとなり、子供が手のかかる時期に親の介護問題が浮上してくる可能性が高くなったため、自らが気になることを調べて記事にしています。

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