滋賀県大津市に拠点を置くプロバスケットボールチーム・滋賀レイクスが高齢者向けの“推し活”プロジェクトを始めることを発表しました。
“推し活”とは、特定の芸能人やキャラクターの活動を応援したり、情報を追いかけたりすることで、その対象はスポーツ選手も例外ではありません。
具体的なプロジェクトの中身は、県内の高齢者施設で滋賀レイクスの試合のパブリックビューイングを開催したり、定番の応援ソングに合わせて体を動かしながら応援の練習をしたりといったもの。
また、選手による施設訪問やホームゲームへの招待なども予定されているそうです。
もし、バスケットボールを知らなくても、同チームのスタッフが施設を訪問して趣味や出身地など、さまざまな切り口から「推し」を見つけるサポートをしてくれるそうです。
バスケットボールや滋賀レイクス選手のことをあまり知らない方でも、安心して活動に参加できますね。
なぜ、滋賀レイクスは推し活に力を入れるのでしょうか?
そこには、滋賀県のある意外な事情がありました。
実は、滋賀県は2020年の都道府県別平均寿命ランキングにおいて男性で1位、女性で2位を獲得した長寿県なのです。
しかし、厚生労働省が2019年に発表した健康寿命ランキングでは、男性で4位、女性は46位。
健康寿命とは、高齢になっても健康で自立した生活を送れている時間を指します。
平均寿命と健康寿命の差が大きければ、それだけ介護を要する、あるいは寝たきりの時間が長いため、各都道府県がその差を縮めるためにさまざまな取り組みを行っています。
滋賀レイクスが着目した推し活は、生活にハリや刺激を与えることで認知症の予防につながると言われています。
同じ推しを持つ仲間と情報を共有したり、活動を一緒に応援したりすることで他者とコミュニケーションをする機会も生まれ、生活にメリハリが出てくるでしょう。
同チームの広報は「滋賀レイクスを好きになってもらい前向きで豊かな気持ちを抱いてもらう事で、いきいきと心豊かに暮らし続けられる社会の実現を目指すべく、本プロジェクトを始動いたしました」としています。
株式会社ハルメクホールディングスが50~81歳の女性を対象におこなった「シニアの『推し』に関する実態調査」によると、「推し」がいるシニア女性は47.9%。
50代以上女性の約半数に「推しがいる」という結果でした。
一部のアイドルファンから始まったといわれる“推し活”が、今や世代を問わずに注目されています。
推しが見つかると深く調べるようになるので、必然的にスマホやタブレット端末を用いるようになります。
これにより、苦手な端末操作も無意識的に克服できるかもしれません。
また、イベントに参加することで推し活仲間との交流にも発展するでしょう。
こうした社会参加を深める活動は、外出頻度の少ない高齢者のフレイル(健康と要介護の中間の状態)予防や、認知症予防にも効果があるといわれています。
推しに会いに行くため身なりに気を使うようになったり、介護施設では機能訓練に励む高齢者もいたりするなど、推しが精神的な支えになっている人も少なくないのだそう。
一方で、高齢者には情報が届きにくいという課題があります。
大津市のように行政主導で参加を呼び掛けたり、地域のイベントやセミナーで推し活に関する情報を提供したり、家族がデジタル機器の使い方をサポートするなどして、高齢者の参加を促進することも重要です。
参考記事:高齢者を対象とした「推し活プロジェクト」始動
厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」(PDF)
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