厚生労働省は所得が多い65歳以上の高齢者について介護保険料を引き上げる方向で検討しています。
現在、介護保険料は所得に応じて9段階に分けられており、最も所得の高い合計所得320万円以上の段階が対象になっています。
9段階目をさらに5段階に分割し、所得の多い上位4段階の保険料が引き上げられる見通しです。
具体的には、
第10段階 合計所得410万円以上
第11段階 合計所得500万円以上
第12段階 合計所得590万円以上
第13段階 合計所得680万円以上
と区分けする案が検討されています。
厚生労働省によると、この改正により保険料引き上げの対象となるのは140万人ほどと見られています。
厚生労働省が引き上げを検討した背景に、介護保険制度を持続させるための財源確保が難しくなっている現状があります。
介護を必要とする「要介護者」の数は年々増加しており、2023年の3月には約694万人もの人が介護を必要としています。
それに伴って、介護サービスにかかる費用も増加の一途で、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には、今年度予算の2倍の約26兆円になると試算されています。
一方で、保険料を払っている40歳以上の現役世代の人口は減少傾向にあります。
現役世代が高齢者を支える構図に頼ると、介護保険制度の財源を確保することができなくなってしまいます。
そのため、支払い能力がある高齢者には今より多い保険料を払ってもらう「応能負担」を強化する方向なのです。
国は2024年度の制度改正にあわせて2023年中に結論をまとめる方針です。
介護保険料の引き上げについては、物価の高騰などの影響から先送りされていました。
引き上げられた介護保険料は介護保険制度の充実に充てられる方針です。
また、低所得者の保険料軽減も検討されています。
2000年の介護保険制度スタート時、介護の総費用は3.6兆円、保険料は月額平均3,000円程度でした。しかし20年弱で総費用は3倍の11兆円、保険料は2倍の6,014円に増加。
これまで保険料の見直しは、要介護者の増加に伴い何度も議論されてきました。過去には「原則二割負担案」や「40歳未満の負担拡大案」などが議論されましたが、現役世代の負担増には慎重な意見も多く見送られています。ただ、完全になくなったわけではありません。
また、今回の増額案についても、年収410万円を高所得者と呼べるかは疑問が残ります。単に収入のみで判断するのではなく、総資産を基に負担割合を決めるという方法も一案ではないでしょうか。これにより、実際の経済力に応じた公平な負担分配が実現できるかもしれません。これからも、持続可能で公正な介護保険制度の実現に向けて、さらなる議論と改善が求められます。
人材ベンチャーや(株)リクルートジョブズでの営業を経て、2016年よりフリーランスのライターとして活動。Webメディアで採用からサービス導入事例など幅広い企業インタビュー、SEO記事などを執筆。最近ワーママとなり、子供が手のかかる時期に親の介護問題が浮上してくる可能性が高くなったため、自らが気になることを調べて記事にしています。
高下真美さんの記事をもっとみるtayoriniをフォローして
最新情報を受け取る