介護版すべらない話!?エンタメ満載の「未来をつくるkaigoカフェ」オンラインイベントに潜入

「介護」と一口に言っても、介護をする人、される人、またその組み合わせによってやり方も悩みも千差万別。ましてや自宅介護ともなれば、頼る人も少なく孤独になりがちです。

そんなとき頼りになるのが、介護に関わるさまざまな人の声が聞けるコミュニティ。とはいえ、一体どんなコミュニティに参加すればいいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

そんな方にまずおすすめしたいのが、月1回、介護を軸に毎回さまざまなテーマでイベントを行う「未来をつくるkaigoカフェ(以下、「kaigoカフェ」)」

2021/01/22

未来をつくるkaigoカフェ--高瀬比左子さんが同じ悩みを抱えてる仲間の輪を拡げたい理由

毎回100名超が参加するイベントで、コロナ禍の現在はオンラインで実施。そのため、構えることなく、しかも自宅から参加することができるんです。

参加者は介護職の方が多いものの、自宅介護をしている方や介護について知りたい方などさまざまなバックグラウンドを持った方が集まっており、彼らの話を聞いたり対話をしたりできるのも大きな魅力。

というわけで、今回レポートするのは、2020年12月に開催されたkaigoカフェのイベント「KAIGO PRESENTATION NIGHT」! プレゼンテーマは、人生100年時代を豊かにするkaigoとして「ご当地介護自慢」と「介護のすべらない話」の2本立てです。

さて、一体どんな内容が展開されているのでしょうか……?

常連参加も多い大規模イベントだからこそ、参加のスタンスも自由自在

開始時間の20時前になると、事前に共有されたZOOMのミーティングルームに参加者が次々とチェックイン。参加人数はあっという間に100名を超えました。

男女の比率に大きな差はなく、半々といった印象。世代は30〜40代以降の方が多いのかなと感じましたが、20代前半に見受けられる若い方もいたりと、本当にさまざまな方が参加されていました。

※画像掲載元:未来をつくるkaigoカフェ 公式サイト

時間になり司会の方が話し出すと、チャット欄は「よっ! 待ってました!」などのコメントが次々に投稿され大盛り上がり。

大規模のイベントになると知らない人も増えるため、冷めた空気感になるのが当然と思っていましたが、どうやら常連参加の方も多いようで、終始高めの温度で進行していきました。

とはいえ不思議と疎外感はなし。常連参加の方と同様に、画面オフにした“まったり参加”の方が多かったからかもしれません。

コメントが盛り上がっているので一緒に盛り上がりたいときには混ざれるし、少し離れたところから見ていたい場合はまったり参加の群れに加われるため、心地よい参加の仕方を選べるのがありがたかったです。

イベントの開催時間は、20時から22時までの2時間。そのうち最初の40分を「ご当地介護自慢」、続いて10分間の休憩を挟んだ後、参加者同士で対話するカフェタイムを20分、最後に「介護のすべらない話」を40分という時間配分で進んでいきました。

コンテンツひとつめは各地の取り組みが知れる「ご当地介護自慢」

最初のコンテンツは、日本全国の各地域でユニークな活動をしている方のプレゼンタイム「ご当地介護自慢」

広島で、コミュニティデザイナーや環境デザイナーと手を組み「自分が本当に入りたい施設」を考えた介護施設づくりをしている方や、

訪問介護ステーションを立ち上げたのち「自分たちだけでは解決できないいろいろな社会課題を、街のみんなで解決しよう」と府中で村づくりを始めた理学療法士の方、

「踊り」という自分の趣味を強みに変えて活動している介護士の方などが、それぞれの活動をスライドにまとめて5分ずつ発表。

介護に関わる人たちがすごく前向きにいろいろな取り組みをしていることを知り、なんとなく不安に感じていた介護の未来が明るく感じられる時間でした。

介護士さんの元気とホスピタリティに癒やされた休憩時間

面白かったのが、ご当地介護自慢と対話タイムの合間に設けられた10分間の休憩。

この時間は画面をオフにしてお手洗いや軽い食事など自由に休憩できるのですが、その間、沖縄の介護士さんたちが三味線の演奏とダンスを披露してくれるというのです。

イベントの開催日は12月18日。クリスマスが近いこともあって、曲目は「赤鼻のトナカイ」。

真赤(まっかーらー)鼻ぬ
トナカイさのー
ちゃー臣下(しんか)ぬ達(たち)ぬ
笑者(われーむん)

と沖縄弁バージョンに変換された歌詞と、三味線のメロディに合わせて「イーヤーサーサ!」と陽気に踊る姿に、ギャラリービューに並んだ参加者の顔が揃って笑顔に。チャット欄には「休憩にならない」「目が離せない」といったコメントが飛び交っていました。

休憩時間にもかかわらず「楽しませよう!」とする介護士さんたちのホスピタリティとその明るさに、思わず元気をもらいました。見ていたみんなが笑顔になって謎の一体感が生まれた不思議な時間でした。

お悩み相談も可能! 少人数で対話する「カフェタイム」

続いてのプログラムは、参加者同士の「カフェタイム」

ZOOMのブレイクアウトルーム機能を使って4〜5人のグループに分かれ、自由に対話をする時間です。初対面同士で話すのは緊張するものですが、kaigoカフェのカフェタイムにはグループごとにファシリテーターが配置されるので安心。

筆者が参加したグループに集まったのは、介護福祉士の方のほか、長野県で要介護者の旅行補助をしている方、カラー講師の仕事を介護に役立てたいと考えている方など、介護への関わり方にグラデーションのある顔ぶれでした。

最初に全員で自己紹介をしたあと、ファシリテーターの方がそれぞれの参加者に話を振ってくれます。今回は、各自の仕事内容について話を聞く対話タイムになりました。要介護者の旅行補助のお仕事があることを知らなかったので、その話を聞けただけでもかなり面白かったです。

時間が20分もあると結構話したいことが話せるので、聞きたいことがあれば、簡単なお悩み相談などもできそう。それくらい自由に話せる場でもありました。

すべらない話

※画像掲載元:未来をつくるkaigoカフェ 公式サイト

続いては、後半のメインコンテンツ「介護版 すべらない話」。軽妙な司会や本家に迫るオープニング動画、各話者が蝶ネクタイを着けて登場するなど、細かいところまでこだわられており冒頭から期待が高まります。


印象的だったのは、静岡県の石原さんのお話。石原さんが介護福祉士として働き始めたばかりのころ、入居者の女性が引き戸のドアに首を挟み「死にたい」と呟くシーンに居合わせたそう。そこで石原さんは、介護講習で習った「オウム返し」という手法を実践しました。

「死にたい」「死にたいんだね」
「どうしたら死ねるの?」「どうしたら死ねるんだろうね」
「こんな自分が嫌」「そんな自分が嫌なんだね」

そうしているうちに入居者さんが穏やかになってきて、「あなた私の夫に似てる」と言われたそう。

それ以来、石原さんのことを夫だと思って意識するようになったその方は、化粧をしたりスカートを履いたり、まるで認知症とは思えない言動をするようになったのだとか。ご家族の方に「私の夫よ」と紹介されたときにはさすがに冷や汗をかいたそうです(笑)

私も祖母に「死にたい」と言われる度にツラい気持ちになっていたのですが、この話を聞いて「そっか、こういう風にすればいいんだ」と思えました。

ほかにも、「あんたにマフラー編んであげる」と言いながらなかなか編んでくれない入居者さんの「早く死にたいのに何で死ねんとかいな」というぼやきに、「やり残したことがあるからじゃない? たとえばマフラー編むとか」と返して場を和ませた方の話や、「自分は先が短いから」が口癖の方に、「Go to グソー(沖縄方言で「死後の世界」の意)はいったん中止、天国はロックダウン中」と話して、いい笑顔が見れたという沖縄の歯科の方の話など、笑える話になっているだけじゃなく、介護の現場を笑顔にするヒントが詰まっているのがすごくいいなぁと感じました。

気軽に介護職の方の元気に触れ、対話もできるイベント

全2時間、初めから終わりまでコンテンツ盛りだくさんの本イベント。あれもこれも印象に残ることだらけでしたが、参加して一番感じたのは、介護職の方の元気さでした。とにかく明るくて元気なんです!

私自身、介護施設に入っている祖母のことで悩んだり親の未来を案じて不安になったりしていましたが、日々介護の最前線にいる介護職の方々がこんなにも明るく力強く現状と向き合っていることを知って、介護に抱いていた漠然とした暗いイメージが晴れるような思いがしました。

参加人数が多いため、自分が心地良い形で参加できるのもこのイベントのメリットのひとつ。介護コミュニティ参加の最初の一歩としてはこの上ないイベントかと思います。

介護職の方の元気でまっすぐな姿勢に気軽に触れられて、対話の時間には彼らとじっくり話すこともできる「kaigoカフェ」。ひとりで悩んでいる方は、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか?
 

坂口ナオ
坂口ナオ

東京都在住のフリーライター。2013年より「旅」や「ローカル」をメインテーマに、webと紙面での執筆活動を開始。2015年に編集者として企業に所属したのち、2018年に再びライターとして独立。日本各地のユニークな取り組みや伝統などの取材をライフワークとしつつ、持ち前の探究心を武器に幅広いテーマで記事を手がける。

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