DJ活動40周年――60歳を前にしたDJ KOOさんが、アクティブであり続けるワケ

2020年8月でDJ活動40周年を迎えるDJ KOOさん。TRFのメンバーとして、最近ではバラエティータレントとしても人気を集めています。

そうした幅広い活躍の一方で、本業であるDJとしての音楽活動もアクティブに展開。ダンスミュージックだけでなく、J-POP、アニソン、ゲーム音楽まで幅広いジャンルの音楽をプレイし、“日本屈指の盛り上げ番長”として、たくさんの人たちを踊らせてきました。

最近では、新型コロナウイルスの影響によりイベントの中止や延期が相次ぎ外出自粛の日々が続く中、ライブ配信アプリや自身のYouTubeチャンネルからのDJ配信など、家で過ごす人たちに向けたエンターテインメントを発信しています。

年齢を重ねる中でますますエネルギッシュに、ジャンルを越えて活動する原動力はどこにあるのか。今回DJ KOOさんに、オンラインでインタビューしました。

今回のtayoriniなる人
DJ KOO
DJ KOO 1961年8月8日生まれ、東京都出身。トータルCDセールスが2100万枚を超えるダンス&ボーカルグループTRFのDJ、リーダー。ソロとしては、“触れ合う人々をエネルギッシュに!元気に!笑顔に!”をモットーに、ダンスクラシック、EDMから、J-POP、アニソン、ゲーム音楽まで幅広い音楽をDJスタイルでプレイ。2017年からは、日本の文化である“お祭り”“盆踊り”とDJのコラボレーションを国内外に発信。2020年8月から、DJ活動40周年に突入する。

不安な状況の中で、DJとして「楽しみ」を発信したい

――新型コロナウイルスの感染拡大によって自宅で過ごす方が増える中、DJ KOOさんはスマホアプリ上でのライブ配信イベントなど、新しいメディアを使った試みを積極的に展開されています。その背景にはどんな思いがあったのでしょうか?

DJ KOO

まず、この1カ月ですごく状況が変わってきていますよね(取材は2020年4月2日)。ライブ配信を始めたのは3月に入った頃ですが、そのときはいろいろなイベントやライブが中止になっている中で、自分ができることをやろうと考えました。

しかし、今はさらに危機感が高まり、先が見えない状況になっていると思います。それでもやはり、僕のDJのスタイルとしては、皆さんに元気になってもらいたい。実際に人が集まらなくても、画面越しに人が集まれるツールはあるので、それを使ってできることを考えています。

――状況が刻一刻と変わる中で、エンターテインメントのパワー、音楽の力をどういうふうにこの先に役立てていけるかを考えてらっしゃる。

DJ KOO

そうですね。今の状況ではもちろん緊張感が大事ですが、われわれの生活は、やはり笑顔や元気な気持ちがあってこそ成り立つものだと思います。どうしても不安や恐怖が増えてきてしまうと思うんですが、そこに対して、今までと違った形の楽しみを発信していきたい。

先日、後輩の倖田來未がInstagramでライブ配信をしていて、そこに僕も参加して「一緒に力を合わせて楽しくやっていこう」と、普段はなかなかできないような会話をしました。そうしたら見ている皆さんからも「元気が出ました」と言っていただけた。そういう期待も感じています。

TRFのデビュー当時は「後ろの人は何?」と言われる日々だった

――DJ KOOさんは2020年8月で、DJ活動40周年という節目を迎えられます。TRFとしてデビューした1990年代前半、日本ではまだ「DJ」というものの認識が今に比べて全く広まっていなかったように思います。

DJ KOO

TRFとしてデビューした頃の僕は、すでにDJとしてある程度の年数とキャリアは重ねていたんです。でもテレビに出てみると「後ろのあいつは何をやってるんだ」とか「後ろの人は必要なの?」みたいな見られ方をしていた。本当に壁にぶち当たりました。

でも、そこでプロデューサーの小室哲哉さんが「日本の音楽シーンでダンスミュージックを表現する上で、DJというのは必要なパートなんだ」と言ってくださった。僕に対しても、本来DJは1時間〜1時間半の選曲をする仕事だけれど、TRFの場合は「1曲3分の中でそれを表現してほしい」と。テレビでそれを見せるのは難しいけれど頑張ってほしいと言ってくださったんですね。

それで、まずは見た目を派手にして、機材を置いて「これが格好いい新しいスタイルなんだ」ということを表現するようにしました。それでも、やっぱりDJが何をしているのかは、最初なかなか分かってもらえなかったですね。

テレビなどに活動の場を広げても「現場のDJ」であり続ける

――そんな中で、40年にわたってDJを続け、最近はますます活躍の場を広げておられます。年を重ねると、新しいことを始めるのが億劫になったり、何かに熱中することが減ったりする人も多いと思うんです。DJ KOOさんが好奇心やアクティブさを持ち続けられる理由は何でしょうか。

DJ KOO

DJを40年やってきた中で、たくさんの人に出会って、いろんな経験を積めたことが大きいと思います。DJを始めたばかりの18歳の頃は、とにかく目の前のお客さんを踊らせることしか頭になかった。そこから小室さんと出会って、TRFとしてデビューして、DJとしていろんな可能性を体験させてもらいました。そうやって40年の間に経験できたことがすごく多いので、それが僕にとっての元気の源になっていると思います。

最近ではテレビのバラエティー番組に出たり、他のジャンルとのコラボレーションも増えてきました。DJからバラエティータレントに転向したように見られることもありますが、実はDJとしての仕事も、以前よりもっと活性化してきたんです。

――バラエティータレントとしてテレビでの活躍が増えることが、本業のDJの仕事にとってもプラスになったんですね。

DJ KOO

そうですね。今まで音楽だけをやっていたときには「DJとはなんぞや」ということが、すごく伝えにくかったんです。でも、いろんなテレビ番組に出ることで、「DJ」というものに注目してもらえることも増えた。

そのおかげでDJとして、例えばアイドルやアニメ、テレビのコンテンツ、お笑いの方とコラボレーションをすることも増えた。そういうところから、一般の方たちにもDJに興味を持っていただけるようになったと思います。

いろんな人と接することになって、人とのつながりが大事だなと感じています。ダンスミュージックのことだけを考えていると、どうしても自分がやっているのは若い人に向けた音楽だと思ってしまう。でも、バラエティーのロケに行くといろんな世代の人が声をかけてくれて、笑顔で手を振り合ったり、握手をしたりする。それって、DJをやっていてフロアでお客さんが盛り上がっているときの感覚と近いんです。

だからこそ、今も「現場のDJを欠かさずにやろう」というのは、自分のこだわりとして大きいですね。

TRFとしては2000年からしばらく活動を休止した時期があったんですが、その間に現場でDJの勉強をやり直したんです。TRFというのは、ダンサーとヴォーカルとDJという、それぞれのプロフェッショナルが集まったユニット。それぞれの役割が基盤になっているグループなんですね。だから僕は、とにかく現場のDJをやることにこだわりました。

――あらためて自分のスキルに磨きをかける期間だったということですね。

DJ KOO

そうですね。当時はダンスミュージックの流行も変わってきていたので、それについても後輩から現場で教えてもらいましたね。

最初は恥ずかしくて、DJブースを真っ暗にしていた時期もありました。DJ KOOとしてではなく、ただ1人のDJとして選曲をして通用するかどうかを試したかったんです。今考えると、そんなふうに格好をつけなくてもよかったんですけどね(笑)。とにかく「DJとしていい選曲をしたい」ということだけを考えていました。

その時期があったからこそ、またTRFで集まったときに昔と変わらないようなスキルとモチベーションで再始動できたんだと思います。

ちなみに、僕はいつもテレビで派手な格好をして「イエーイ!」って言ってますけど、これももともと、新宿でDJを始めた頃からずっとやってきたことなんですよ。

「今も現役のDJとして第一線でプレイし続けている」というのが、バラエティーだったり、他のどんな場面でも、自分の中の大きな核になっています。

アイマス、キンプリ、ヒプマイ。年を取っても当たり前に新しいことを吸収する

――最近ではアニメやゲーム音楽などとのコラボレーションもされています。2019年には、「アイドルマスターシンデレラガールズ」のライブ公演にサプライズ出演され話題になりました。

DJ KOO

アイマスには、1プレイヤーとしてもハマっていますね。DJとしては、やはり音ゲーには秀でていたいなというのもありました。それにアイマスの楽曲って、ダンスミュージックに限らず、ロックだったり、いろんなジャンルの音楽の進化系が入っているんですよ。ゲームの音楽ってすごいなと思っています。

<アイマスのライブにサプライズ出演するDJ KOOさん>

DJ KOO

海外のDJイベントでも、ゲームやアニメの音楽をプレイするとかなり盛り上がりますね。

――3月のライブ配信では「KING OF PRISM」や「ヒプノシスマイク」のDJプレイも話題になりました。そういった新しいジャンルに積極的にアンテナを張るフットワークの軽さは、どういうところからくるんでしょうか。

DJ KOO

とにかく、SNSの時代に活動していくためには、みんなが何を好きなのか、DJとしてどういったものとコラボレーションできるのか、そういうところに興味があるんです。

あと、僕の娘が今20歳なんですけど、娘からの情報はすごく重要ですね。TikTokにしてもYouTubeにしても、何がはやっているのか、どんな面白い人がいるのかを、生活の中で当たり前に共有できているのが大きいです。

年を重ねても、当たり前に新しいことをやっていかなければいけない。常に自分から吸収して、新しいことに取り組んでいく。それが自分のスタンスだと思います。

大きな手術を経験して、DJとしての生き方にも変化が

――年齢を重ねるにつれ、身体的な変化に向き合う機会は増えると思います。DJ KOOさんは2017年に、テレビ番組の企画でMRI検査を受けたところ、偶然「脳動脈瘤」が見つかり、手術を受けられました。その経験は今にどう生きていますか。

DJ KOO

脳動脈瘤が発見される前は、普通に仕事できていればそれでいいと思っていたんです。どんな不健康なことをしても、DJさえできればいいやっていう感覚でした。

でも脳動脈瘤が見つかった時、主治医の先生には「これだけ大きい脳動脈瘤の場合は、開頭手術をしないと、脳梗塞やくも膜下出血、失明の危険があります。社会復帰が難しくなります」と言われたんです。

そこで初めて「このままだったら、1週間後に自分の存在がこの世から消えてしまうかもしれない。家族が奥さんと娘だけになってしまう」という恐怖を実感した。それで手術に踏み切りました。

それまで大きな手術は一度も受けたことがなくて不安はありましたが、先生に「もし私に任せてくれれば、脳動脈瘤を手術するのではなく、DJ KOOさんの人生を手術します」と言われたんですね。つまり、手術をした後も、これまでと同じか、それ以上に生活や仕事ができるようにしますと。

これは心強い、だったらこの先生にやっていただこうと、手術をしたんですね。

そして見事完治して、仕事ではいろんなコラボレーションもできるようになりました。それと同時に、いただいた命だと思うようになったんです。

――手術をきっかけに、考え方も変わりましたか。

DJ KOO

そうですね。いろんなところで「実は、DJ KOOさんが脳動脈瘤の手術をして元気になったという話を聞いて私も手術に踏み切ったんです」とか「頭が痛いと言っていた家族が、検査をしたら脳動脈瘤が見つかって、破裂の前に手術ができました」という話をいただくようになりました。

僕としても、いただいた命なので、何かある前に必ず診断や検査をしてくださいねと、健康について、ライフワークとして語っていかなきゃいけないなという使命感を持つようになりました。

60代に向けて……世界を舞台にDJで盛り上げたい

――DJ KOOさんは今58歳ですが、60代に向けてやってみたいこと、チャレンジしたいことは?

DJ KOO

ここ最近は「BON DANCE」と称して全国のお祭りで盆踊りとDJのコラボレーションをやってきたんです。花笠音頭や東京音頭だけじゃなく、TRFやアニソンをかけて、浴衣にうちわを持ってみんなで踊る。それが、やってみたら思った以上に盛り上がるんですよ。

2019年にはアフリカでも盆踊りDJをやったんですが、美空ひばりさんの「川の流れのように」のアレンジで、言葉は通じなくてもすごく盛り上がった。なので、これからもっと海外に向けても広めていきたいですね。そういう目標が今はあります。

あとはせっかくなので、60歳になったら真っ赤な衣装に真っ赤なDJブースで「EZ DO DANCE」はやりたいですね!

――90年代の音楽シーンを築き上げたアーティストのみなさんによるコラボレーションもまた見てみたいです。

DJ KOO

実は今年の始めの頃に、六本木の「SEL OCTAGON TOKYO」というクラブでDJをやった時に、小室さんが遊びにきてくれたんです。そこで久々にお話をしました。

<久しぶりの再会を果たした小室哲哉さんと>

DJ KOO

「次はきっとこの曲が合うね」とダンスミュージックの選曲の話をしたり、TKメドレーをかけた時に「この流れだったら次は安室奈美恵ちゃんの『SWEET 19 BLUES』をかけたらいいんじゃない?」って言って、実際にかけたらみんなが体を揺らしていい感じになったり。そういう音楽の交流がありました。

そういえば、最近はTKファミリーがベビーブームなんです。アミーゴ(鈴木亜美さん)も、ともちゃん(華原朋美さん)も子供が生まれましたし、hitomiは第4子を妊娠中。みんなでお互いにLINEで「おめでとう」って言い合ったりしています。

90年代はレコーディングや歌番組の現場でしか交流がなかったんですが、そうやって一緒にやってきた同士として、みんなに家族ができるのは自分のことのようにうれしいです。いつかまたTKファミリーで集まってイベントをやって、「YOU ARE THE ONE」をみんなで歌いたいですね。

 取材・構成:柴那典
編集:はてな編集部

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