こんにちは、斗比主閲子です。
私はアラフォー既婚子持ちで、義理の両親と二世帯住宅で同居しています。同居をしていると、義理の両親の健康問題はいやが応でも意識されます。
義母は美魔女と呼ばれて今でも街でナンパされることがあるぐらい若々しく、健康なのですが、義父は最近物忘れが増えてきているのが不安です。先日も「友達に送ったはずのメールが届いていないことがあるんだよね。パソコンに不具合があるかもしれないから見てくれない?」という話があり、許可を得てパソコンをチェックしてみましたが、そもそもメールを書いた痕跡が見つかりませんでした……。
私のように両親世代と同居している人、または家から離れて暮らしている人にとって、実の両親や義理の両親の将来的な介護というのは、気になる話題ではないでしょうか。果たして「いつごろ介護が必要になるのか」「他の人はどうしているのか」「介護をし始めた時にどんな問題があるのか」などなど。
何となくモヤモヤと不安になっている問題は、「なるほどこういうものか」と輪郭をある程度つかめれば気が楽になるし、今からできることも、そしてしなくていいことも(これ大事!)、具体的に想像できるようになります。この記事は、介護がどう行われているかを紹介するのが目的です。皆さんのご参考になれば幸いです。
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以下で紹介する統計の出所は、全て平成28年の「国民生活基礎調査」からです。国民生活基礎調査では、介護について3年ごとに数千人規模の調査を行っていて、日本の介護の状況が一番よく分かる統計資料の一つです。
最初に紹介するのは、介護が必要になる年齢です。
要介護者等の年齢階級別構成割合の年次
おおよそ、80歳以上で70%を占めています。イメージしているよりも高齢時に介護が必要になるな……と思うのではないでしょうか。
また、定義の違いや世代間での人数差はあるかもしれませんが、年々介護が必要な年齢が高齢世代に寄っていっていますね。
日本はずっと平均寿命が伸びつつ、健康寿命も伸びているので、徐々に上の世代にスライドしていっているということも背景としてありそうです。
では、介護が必要になるタイミングについて、男女別で違いはあるのでしょうか。
性別にみた要介護者等の年齢階級別構成割合
ご覧の通り、男性よりも女性の方が、高い年代での要介護の割合が多くなっています。皆さんの実感に近いのではないでしょうか。平均寿命も健康寿命も、女性の方が男性より高いですしね。
このように介護が必要になるタイミングで男女差があり、その上で、日本では平均的には妻の方が夫よりも若く、年の差があるため、「高齢の妻が高齢の夫を介護する」というのが一つのスタンダードモデルといえるでしょう。もちろん、夫が妻を介護することもありえます。
だから、自分の親が離婚や死別をしていてシングルであるという場合は、夫婦間での介護の期間がすっぽりなくなるため、子どもは親の介護をどう対応するかを早めに検討する必要が出てきます。介護の担い手が誰になるかというのは一概に言えず、家庭事情に影響されるわけです。
次に、介護が必要になる原因を紹介します。
要介護度別にみた介護が必要となった主な原因
介護が必要になるといっても程度の違いはあります。要介護度は「要支援1」から「要介護5」まで大きく7段階に分かれていて、徐々に介護が必要になる程度が上がっていきます。
要支援者では関節疾患(関節の炎症)、骨折、衰弱が多いですね。分かりやすい。要介護者では認知症が多く、続いて、脳血管疾患となります。
次のグラフの通り、「要介護5」では同居する介護者の5割強がほぼ一日中介護をすることになる一方で、「要支援1」では必要なときに手を貸す程度の介護がほとんどであることが分かります。
要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合
最初に紹介した「要介護者などがどの年代に多いか」の図表には、「要支援1」の人も含まれています。実は、自分自身で生活での多くのことができる人も、要介護者には含まれているんですよね。「要介護5」で、排泄や食事もできなくなっている状態です。介護の内容にはグラデーションがあります。例えば、認知症といっても症状に差があるのは想像しやすいのではないでしょうか。
私の祖母は認知症でしたが、初期の頃は、お金を払ったか払っていないかが正確に分からない状態だったため、介護とはいっても金銭管理をする程度でした。
それが、火を付けたか付けていないか、生ものをいつ冷蔵庫に入れたかが分からなくなっていき、ガスコンロを閉じたり、冷蔵庫を利用しないようにしたりして、徐々に徐々にできることが減っていき、排泄にも支障を来たし、もう家族で介護をするのが厳しいという段になって、外部に介護を依頼しました。
もちろん急に寝たきりになるというケースもあります。ただ、どこまで家族で介護をするのか、できるのかということを、いきなり考える必要が出てくるのは、そんなに多くはないのではないかと思います。
家族での介護の話をしたので、次に紹介するのが「誰が介護をしているか」です。
要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合
実態として約6割、同居の家族による介護が行われています。そのうち配偶者、子、子の配偶者がざっくりいえば4:4:2という比率です。別居の家族や事業者(外部に任せる)が同じ程度で1割ぐらい。
介護が必要になって突然この状態になるわけではなく、「介護の程度によって徐々に誰が介護をするかが変わってくる」と理解するといいかと思います。まずは夫婦間で介護をするでしょうし、初期の軽い介護だからこそプロに依頼することもあります。今どきは親世代と同居している子どもは多くはないですから、親の介護が必要になる程度を見極めて同居を決めるという人も多いですよね。
そういうわけで、いわゆる「老老介護」の割合が増えていっています。介護が必要になる年齢が上がって、介護の必要度が高まってから同居をするということになれば、当然の結果です。
老老介護は社会問題として捉えられる一方で、健康寿命が上がって高齢者でも介護ができている、仕事を退職するタイミングを後ろにずらせる(ある程度の貯蓄を確保した上で介護に入れる)とも考えられます。
次に紹介するのは、介護をしている家族の性別と関係性です。
介護時間が「ほとんど終日」の同居の主な介護者の要介護者等との続柄別構成割合
女性が7割以上と圧倒的に多いのは、配偶者(夫)を介護している割合が高いというのもあります。何しろ同居の主な介護者の1/3程度が妻なわけですから。あとは、いわゆる「嫁」(息子の妻)が介護の担い手となっている実態もまだまだあります。
ただ、これも10~20年後には変わってくるんじゃないかと考えています。上記のグラフの通り、男性で介護をしている人は3割もいます。今は共働き世帯が増えていっている時代です。親世代は専業主婦が多く、義理の実家の介護も専業主婦の妻(特に長男の妻)がやるのが当たり前と捉えられがちでしたが、今では専業主婦の方が希少ですから。
時代に合わせて、介助者も変わっていくものだと思います。
最後に紹介するのが介護による悩みとストレスです。介護が始まるとどんな悩みが待ち受けているのか、知るのは怖いですが、気になりますよね。
性別にみた同居の主な介護者の悩みやストレスの有無の構成割合
同居で介護をしている人の7割が悩みやストレスを抱えています。そして、その悩みやストレスの原因は次の通りです。
性別にみた同居の主な介護者の悩みやストレスの原因の割合(複数回答)
当たり前といえば当たり前ですが、「家族の病気や介護」が一番です。ここでの家族というのは、目の前の要介護者でしょうね。自分の配偶者や親の状況が気になるのは当然でしょう。
次のストレス源は「自分の病気や介護」。老老介護が増えている中では自分の健康も気になります。その次はお金関係。介護をしながらだと働けないのでお金は減っていくに任せることになるし、外部に頼もうにも、どれだけお金がかかるか気になる。
これら以降をざっくりまとめると、仕事はしにくくなるし、自由にできる時間があるわけでもないし、家事に十分に時間をかけられないし、諸々の人間関係、交友関係も限定的になってくる……。
どの原因についても、介護をしていれば当然のように見えます。「これ全部あるの!」と思うと憂鬱になるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、介護が必要といっても、段階があります。介護をし始めて急にこれらのストレス源が降って湧いてくるわけではありません。介護の必要度と自分の年齢が上がっていく中で、少しずつ懸案事項が増えてくる……というように考えるといいと思います。
介護が必要になる前だけではなく、介護が必要になってからも、「今後の介護のこと」を考えられる時間はあります。「介護の負担が今後重たくなったら、自分の健康やお金や仕事のことは気になるのが当然!」と割り切って、少しずつでも準備をすることに意味があると思います。
では、介護がまだ始まっていない、始まっていたとしてもまだまだそれほど負担が重たくない中で、どういう準備ができるでしょうか。
私がパッと思い浮かぶのは次のようなポイントです。
それぞれ個別に見ていきましょう。
一番重要なのは、介護が必要になる親の健康状態を確認することです。一年に一度は健康診断を受診してもらいたいところです。自治体に相談すると安いところを紹介してもらえます。そして、その情報を(プライバシーに問題ない範囲で)家族間で共有すること。他のきょうだいが「知らなかった!」ということにはならないようにしたいですね。誰が介護をするか、費用をどう分担するかにも関わりますので。
次が、家族の健康年齢の維持。ポイントは親だけではなく、自分も含めてということ。自分が健康じゃない中で、親の介護をするのはシンドい!
親がシングルでなければ、親同士で介護が可能かどうかの確認もしておきたいですね。高齢者が生活しやすいように手すりを付ける、段差を減らすなど、バリアフリーな家になっているかも重要です。バリアフリー対策には自治体の補助金が出ることがあるので、これもチェックしておきましょう。
介護の段階に応じて、外部の機関・事業者をどう使っていくかも関係してきます。役所に行ってみて、介護保険でどこまでカバーできるか、関係あるサービスをざっと調べておくのも意味があります。最近の役所ではこの手の相談に対応できるよう、資料も多いし、説明も分かりやすくなっています。調べていくうちに、必要となるお金のイメージも湧いてきます。
最後にして、実は最重要かもしれないのが、家族間での役割分担です。誰が主に介護をするのか、誰がどのくらいお金を負担するのかというのは、かなり揉める話です。あくまで一般論として、軽く頭出しをしてみてもいいかもしれないですね。「もし、うちで介護が必要になったらどうしようかー?」みたいな感じで。
こうやって挙げてみると大変なことがたくさんある……と思うかもしれませんが、それぞれの検討に掛かる時間は、全部合わせても数日程度です。
漠然とした不安を持っているなら、こういうことを毎年チェックするだけで、ずいぶん状況がクリアになり、相応の心の準備ができてくるんじゃないかと思います。
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相続の話と同様、介護の話も「臭いものにふた」「縁起でもない!」など、親含めて、あえて触れたくないところはありますよね。でも、落語の寄席中に亡くなって本望だという噺家のようにみんながみんなポックリ逝けるわけではないということは、ほとんどの人が知っています。
親や他の親族とも一緒に協力して、少しずつでも、心と体とお金の準備ができるといいですね。
編集/はてな編集部
1976年10月3日生まれ、福岡県出身。旧帝大卒業後、一部上場の家電メーカーに就職。外資系含めて何度か転職した後、現在は某企業のIR部門に所属。2.5世帯住宅で、X人目の子育て中……』ということになっています。ブログでは、読者の家庭内トラブルを中心としたモヤモヤを紹介しています。
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