分かりました。
(1)お母様の状態については医師からの説明の機会を設けますね。
(2)運動機能については、リハビリを見学してみるのはいかがですか。リハビリスタッフとして理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がいますので、それぞれ話をしておきます。
(3)介護施設についてはリストがありますので資料を準備しますね。
(4)介護については介護申請から行っていただきますが、段取りは行政からの資料がありますので、こちらを使って説明します。
親が突然倒れた、さぁどうする?
会社員歴20年、その後クリエイティブコンサルタントとして独立し7年。仕事一筋で生きてきた、介護のことなんてまるでわからない独身ワーキングウーマン、中村美紀49歳。
大好きな母、馬が合わない父の、突然の同時多発介護にてんやわんやしながら、仕事人間としての特性を活かし、「ビジネス思考」で介護を乗り切っていく、壮絶だけど、コミカルな記録。
突然倒れた母。
救急車で運ばれ、緊急手術を行うことになりました。
一時は命も危ぶまれ、意識がない期間が数日続いたり、意識が戻っても集中治療室から出られなかったりしましたが、1カ月も経つとやっと容態も落ち着いてきました。
「退院後はどうされますか?」
病状が安定してくると、病院のソーシャルワーカーから聞かれます。
退院後どうって? どういうこと?
介護のカの字も知らない私は、何を聞かれているのかわかりません。
詳しく話を聞くと、退院後の生活について、在宅介護ならその環境を整えなければならないし、介護施設入居なら施設を決めなければいけない、家族はどうしたいのかを聞かれていることがわかりました。
ええっ! やっと病状が安定してきたのに、もう先のことを考えなければならないの!?
私の正直な感想です。
容態が不安定の時は、一喜一憂して気疲れが半端無い。落ち着いた途端、この先どうするって、頭が回らないよ…
多分私の目が×(バツ)になっていたんでしょう。察したソーシャルワーカーが言ってくれました。
「ダイジョブですよ、一緒に考えましょう」
おお、あなたはもしや神様!?
いや、ソーシャルワーカーさんですよね。
…って、そういやソーシャルワーカーって、何をしてくれる人でしたっけ?
母の入院した病院は、担当のソーシャルワーカーがつきました。
ソーシャルワーカーとは、社会生活の中で困っている人の、課題に取り組む援助をしてくれる人のこと。対人援助専門職の総称のようです。
母の病院では「生活相談員のことです。生活の困りごとは全て相談ください」と案内されました。
母の退院後の生活を考えるのに、心の整理もできていないし、家族の意思も確認できてないので、すぐには結論を出せない。
であれば、まずは現状把握。判断するのに必要そうな情報を集めておこうと思い、知りたいことを洗い出してみました。
(1)母の病状について。今どういう状態なのか。
(2)母の状態について。運動機能など、どこまで回復できるのか。
(3)介護施設について。どこに、どんな施設があるのか。
(4)もし介護施設に入る場合、どのような段取りで進めるのか。
手探り状態で、ソーシャルワーカーの元へ。
ソーシャルワーカーに聞いていいのかわからない部分もありながら、思い切って相談内容をぶつけてみました。
分かりました。
(1)お母様の状態については医師からの説明の機会を設けますね。
(2)運動機能については、リハビリを見学してみるのはいかがですか。リハビリスタッフとして理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がいますので、それぞれ話をしておきます。
(3)介護施設についてはリストがありますので資料を準備しますね。
(4)介護については介護申請から行っていただきますが、段取りは行政からの資料がありますので、こちらを使って説明します。
おおー完全回答!さすがプロ!!
それならば!と、その後不安に思うことや、わからないことなどがあれば、すぐにソーシャルワーカーに相談に行くようになりました。
ですが。
頼りになる!と思いきや…何度も足しげく通って、私もだんだんわかってきました。
ソーシャルワーカーに、退院後の生活について、介護施設入居・在宅介護をどう考えるかを聞いても、
「ご家族の意思で決めてください」
としか答えてくれません。病院が勝手に決めた、と思われることを避けた返答なのでしょう。
思えばソーシャルワーカーは病院の職員。介護に関しては、退院後の施設接続などは責任を持って行ってくれますが、あくまでも接続まで。その後の介護生活の相談などをするには限界があるのです。
あーん! 肝心な退院後の介護生活の相談はどうすればいいのー!?
母の介護生活をどう考えればいいのか…
私は「わからないのは情報がないからだ」と考えるタイプ。考えられる限りの情報収集をしまくります。
介護関連の本を数冊買って読み漁り、介護関連の本を数冊買って読み漁り、世の中のみなさんがどうされてるかネット調べまくりましたが…手ごたえはイマイチ。
ならば答えは現場にある、と、どこかで聞いたようなフレーズを思い出しながら、老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)、小規模多機能、有料老人ホーム、ケアハウスなど、手に入れた施設資料の全種類を見学しました。
ここまでくると、介護施設とはどんなものか、特性や雰囲気の違いなどが理解でき、わからないことに関する的確な質問もできるようになってきました。
ですが、母の退院後の生活に関する意志決定については、できるまでに至りません。
悩みが解消できないまま、介護サービスを利用するには介護申請が必要だと、ソーシャルワーカーにうながされ、申請をしに市区町村窓口へ。
なるほど、市区町村に申請部署があるのね、と初めて知った自分。それならばと窓口の方に、突然の介護で困っていると相談してみました。
「みなさんそうですよ。地域包括支援センターで話を聞くといいです。資料もたくさんあると思います」
なに!? 地域包括支援センター!? そんなところがあるの!?
介護相談の専門機関があるなんて。
感動し、さっそく行ってみました。
入り口に入ると、スタッフの方が居ました。突然母が倒れどう考えていいかわからないんですけど〜と話しかけてみると、
「みなさんそうですよ。介護の流れから説明しますので、どうぞお座りください」
と案内してくれました。
おお、待ってたセリフ!やっとたどり着いた〜と嬉しくなりました。
のちに調べてみると、地域包括支援センターとは、地域住民の心身の健康保持や生活安定のために必要な援助を行う、市区町村を責任主体とした機関ということがわかりました。
国が進める、地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助など、高齢者の保健医療の向上・福祉増進を包括的に支援することを目的とした、「地域包括ケアシステム」の一環のようです。
なるほど、それならば遠慮なく!
と、その後、介護のことでわからないことがあれば、すぐ地域包括支援センターに行きました。
よく話してくれる職員の方の名前を覚え、何かあれば電話をし、名指しで問い合わせたりしました。我が家の状況をすでにわかってくれているので、まぁ話の早いこと!大助かりです。
ここまで来るのに長かった〜。
私がなぜ苦労したのか。それは、母はそれまで健康だったので、担当ケアマネジャーさんがいなかったから。
ケアマネジャーとは、介護サービスの内容・費用を計画立てる専門家のこと。介護サービスを利用する場合は、担当のケアマネジャーさんがつきます。母にはまだいなかったので、わからないまま私が自力で動きまくって苦労した、ということだと、後でわかりました。
ケアマネジャーさんがいれば、全て相談すればよし。
いない場合は、地域包括支援センターに相談すればいいのです。
最初に知っていればこんなに苦労することはなかったのに〜と思いながらも、自力で勉強したからこその介護基礎力だ、と自己肯定。
一方で、地域包括支援センターがあまり知られていないのが問題、広く告知する必要がある、と今でも強く思っています。
だから今一度、声を大にして伝えます。
「突然の介護で困ったら、取り急ぎ地元の地域包括支援センターへ行くといいですよ!!!」
地域包括支援センターとは
業界最大級の老人ホーム検索サイト | LIFULL介護
突然の介護で何が困るかといえば、最初は介護について何も知らないので、どう考えればいいかわからない、ということ。
でも、「何か」わからなくとも、「誰に」聞けばいいかだけでもわかれば、ちょっと安心できます。
この先起こるだろう予測できない事態に対して、何か安心できる材料を作っておきたいと思った私は、経験したことをベースに相談先を整理することにしました。
整理してみると、相談先は大きく7カテゴリ。
多くは、母が倒れて知った専門職種の方々です。当初は聞き慣れず、誰が何をするのかまったくわかりませんでした。
今じゃ私の「介護・神7(かみセブン)」。
ここで紹介します。
さらに、相談したいこと軸から、誰に相談すればいいかがわかると、なお安心。
「ロジックツリー」を使って整理してみます。
(「ロジックツリー」とは、物事を論理的に整理していく手法のこと。枝のように分かれる形からこの名前がついたそうです)
専門家を知り、頼ることも大事なのですが、もっと大事なのは、介護に協力してほしい「家族・親族」や、介護の経験を聞いたり、愚痴を聞いたりする「友人」を確保しておくこと。
重大事項は専門家に頼りますが、実は、日々のちょっとした困りごとや協力して欲しいことの方が、頻発します。それにより愚痴も増えるわけで…
心を休めるためには、「(6)介護に協力してもらう家族・親族」「(7)介護の話をする友人」の確保が大事です。
次回は「介護の悩み、外野の声に流されないためにまずは『現状把握』から」をお届けします。
(株)リクルートフロム エー、(株)リクルートに20年在籍し、副編集長・デスクとして10以上のメディアにかかわる。2012年に独立し、紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ組織コンサルタントなどを請け負う。 国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
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