LIFULL 介護編集長に聞く「失敗しない介護施設選びのチェックリスト11」

老人ホーム内観

老人ホームの選び方がわからないという声は、非常に多くLIFULL 介護にも寄せられます。そこで、今回は老人ホーム選びに失敗しないためにチェックしていただきたい11のポイントをまとめました。

大切なのは「ひと」。大切な家族を介護し、サポートしてくれるのは建物ではありません。見た目やうたい文句、企業規模などに惑わされず、正しく判断することが重要です。

失敗しない老人ホーム選び11のチェックリスト

事前にチェックできるポイント

1. 大企業信仰を捨てる

ご相談の中でよく見かける「運営会社は大企業の方が良い」という大企業信仰。画一的なサービスを提供している事業者もあり、「大企業=質の高い介護を提供している」とは言い切れません。

運営会社が小さなところは、経営者と入居者の距離が近く個別対応が柔軟など、魅力的な側面も多数あります。大企業一択と選択肢を絞らずに、本人や家族の希望がどのくらい叶うかを考えてみてください。

2.施設種別にとらわれない

入居検討される方は、「介護付き有料老人ホーム」しか探さないなど、選択肢を狭めているケースが多いように見受けられます。「介護付き有料老人ホーム」は、24時間対応で認知症の方も入居できるので人気です。

しかし、類似する「住宅型有料老人ホーム」も同じように24時間対応してくれますし、認知症ケアを求めるようであれば「グループホーム」という施設種別も選択肢に入ってきます。種別に関わらず、本人や家族のニーズを叶えてくれる施設を選ぶことが大切です。

3.職員の定着率

1年未満の非常勤のスタッフが多い施設は、職員の入れ替わりが激しく、関係を築きにくい可能性があります。どの施設も「重要事項説明書」で、「3年以上勤務している割合」や「常勤・非常勤の割合」を開示しているので必ず確認してください。

調べ方は、(1)インターネットで「施設名+重要事項説明書」で検索するか、(2)老人ホームの公式サイトで確認のいずれか。問合せが多く全ての希望に対処しきれないなどの理由から、契約の意思を示してからでないと提示しない施設もありますが、その場合は重要事項説明書を見てから再検討することも視野に入れましょう。

 見学でチェックするポイント

4.見た目で判断しない

オープン間もない施設は、建物が綺麗な代わりに、新人スタッフが多くスキル不足の可能性もあります。マンションの内覧会気分で選びがちですが、老人ホーム選びであくまで大事なのは「人」。ベテランのスタッフが多数在籍するなど、親を安心して任せられるか否かを判断しましょう。

5.施設の雰囲気

「人」「清掃状況」「匂い」など施設の雰囲気を構成する要素は様々です。見学時に自分の親を安心して任せられるか、相性も含めてチェックしたいところ。

直接介護しているスタッフに限らず、事務対応をしているスタッフの感じが悪い場合は、施設自体の高齢者への対応の良し悪しにも関わってくると考えられます。また、エントランスが汚れている施設は共用部分や居室も清掃が行き届いていない可能性が高いですし、汚物のにおいが気になる施設は、おむつ交換のタイミングや処理に問題があるかもしれません。

細かい点でも気になる場合は、直感が当たっていることも多いです。同じ系列の施設でも雰囲気は大きく異なるため、複数施設を見学し、比較してみることをオススメします。

6.介護スタッフの入居者に対する接し方

接し方で見てほしいのは声の掛け方や入居者に対する表情、職員同士の会話です。

施設によっては入居者に笑顔で声掛けが出来ない、ため口で会話するスタッフもいます。特に言葉の緩みは要注意です。ため口が当たり前の施設は、職員と入居者がなあなあの関係になりやすく、介護サービスを提供するというより「お世話してあげている」という意識の職員も見受けられます。

入居者がすぐそばにいるのにも関わらず、入居者を差し置いて職員同士で延々と話し続けているなど、入居者をどのように扱っているのかは、施設見学時に注意して確認が必要。見学は担当者のペースで館内を回りますが、入居者と職員のやりとりが目に入ったら、足を止めてでもその様子を見るようにしてみましょう。

7.退去要件

施設が合わないからと、自発的に退去するケースは少数派。どの施設種別でも共通して退去になっているのは、認知症の症状が進み他の入居者に暴力をふるうなど、集団生活が営めなくなった場合です。

次に、医療関連。注射や点滴などの医療行為が行える専門職スタッフが常駐していない施設が圧倒的に多いため、入居後の思わぬ体調の変化から退去を余儀なくされるケースもあります。

老人ホームは病院と異なり、施設ごとに対応できることの限界があるため、どのような状態で「退去」になるかは、事前にしっかりと確認しましょう。また、終末期は病院へ入院することになるのか、施設で看取りまで対応可能なのかも確認したいポイントです。

8.夜間の介護体制

夜間は最少人数で対応している施設が多いです。そのため、緊急時や災害発生時の対応方法はどうか、少ない人員でも安心安全に対応を行っているかは確認しておきたいポイントです。防災訓練やインカム対応、いち早く職員が気付けるように室内センサーシステムを導入している施設もあるので、必ず見学時に確認しましょう。

 QOLに関するチェックポイント

9.食事内容

食事は入居者の唯一の楽しみといっても良いもの。食べ比べてみると施設ごとの味の違いも分かりますので、ぜひ見学時に事前予約して、試食してください。

好き嫌いの対応を行っているかどうかもポイントです。試食はぜひ入居者と同じ食堂の端で、実際の食事介助風景を確認しながら行いましょう。冷めた食事を提供していないか、食事介助は適切に行われているかも確認できます。

10.生活に楽しみはあるか

イベントやレクリエーション内容は近年バリエーションも豊富になってきており、フラワーアレンジメントや英会話などの文化的なものが好まれる傾向があります。最近では、タブレットを用いた「脳トレ」などを実施している施設も多いです。

集団レクのみなのか、個別ケアがあるかなどの対応方法も含め、入居してから楽しめそうかを確認しましょう。

11.個別対応がどこまで可能か

面会や外出、入浴で個別対応ができるか否かは、チェックポイントの一つ。

例えば、入浴は介護保険法だと週2回以上と定められており、3回以上の対応は施設により異なります。また、コロナ禍での面会もオンライン対応の有無や、その際のサポート体制が十分かどうかは確認したいポイントです。

これまでの生活スタイルを、施設入居後も維持できるかは満足度に大きく関わるため、入居者が暮らしやすいように工夫をしているところは良い施設という印象があります。

終わりに

高齢者住宅選びのポイントを一言でいうと「良いホームではなく、合うホームを探すこと」。アットホームな雰囲気を重視するか、ホテルのようなサービスを期待するかなど、人によって求めるものは様々なため、何を重要視するかを事前に明確にしておくことがその後の満足度にも繋がってきます。

ですので、老人ホームに入居した後でどんな暮らしがしたいか、どんな困りごとを解決したいかを念頭に置いた上で、以上のチェック項目を確認してみてください。

関連サイト

老人ホーム・介護施設の種類、それぞれの特徴

業界最大級の老人ホーム検索サイト | LIFULL介護

小菅 秀樹
小菅 秀樹 LIFULL介護 編集長/介護施設入居コンサルタント

介護施設の入居相談員として首都圏を中心に300ヶ所以上の老人ホームを訪問。1500件以上の入居相談をサポートした経験をもつ。入居相談コールセンターの管理者を経て現職。「メディアの力で高齢期の常識を変える」を掲げ、介護コンテンツの制作、セミナー登壇。YouTubeやX(旧Twitter)で介護の情報発信を行う。

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