テクノロジーと“武士の精神”で切り拓くーALSOKが描く介護の未来

テレビCMでもおなじみの「ALSOK」といえば、警備・セキュリティの会社というイメージをお持ちの方も多いでしょう。実はALSOKはグループとして全国に介護事業所を持ち、有料老人ホームから訪問介護、デイサービスなど高齢期の暮らしを支えるサービスを多角的に手がけている「介護のALSOK」としての側面を持っています。

ALSOKは綜合警備保障株式会社からALSOK株式会社へと2025年7月に社名を変更し、セキュリティの枠にとどまらない多様なリスクに対応する企業として生まれ変わろうとしています。その大きな一翼を担う介護事業の強みとは?

長年、セキュリティのALSOKが介護事業を通して培ってきたもの、そして今後の高齢社会への展望などをALSOK株式会社常務執行役員の熊谷敬さんに聞きました。聞き手はLIFULL 介護編集長の小菅秀樹です。

プロフィール
ALSOK株式会社常務執行役員/ALSOK介護株式会社  代表取締役社長 熊谷敬
ALSOK株式会社常務執行役員/ALSOK介護株式会社 代表取締役社長 熊谷敬 1983年に通産省に入省、震災後の復興や被災者支援に携わり、2016年に綜合警備保障株式会社へ入社。2020年に株式会社らいふホールディングス(現:ALSOKらいふケア)代表取締役社長に就任。2022年にALSOK介護株式会社代表取締役社長に就任。2025年より現職。
LIFULL 介護 編集長 小菅秀樹
LIFULL 介護 編集長 小菅秀樹 介護施設の入居相談員として首都圏を中心に300ヶ所以上の老人ホームを訪問。1500件以上の入居相談をサポートした経験をもつ。2019年LIFULL 介護 編集長に就任。「メディアの力で高齢期の常識を変える」を掲げ、親の見守りから介護、老人ホームに関するコンテンツの制作、セミナー登壇、YouTubeやXで介護や高齢期の情報発信を行う。大手新聞社やテレビ出演も多数。

高齢者の見守りサービスから始まったALSOKの介護

小菅

ALSOKは2012年に介護事業に参入しました。警備保障のリーディングカンパニーであるALSOKが、なぜ介護事業をはじめたのか、経緯をお聞かせください。

熊谷

ALSOKでは以前から「みまもりサポート」という高齢者の見守りサービスを展開していました。また、多くの自治体から緊急通報事業を受託していたこともあり、警備スタッフが高齢者のご自宅を巡回することが多かったんです。ですから、もともと介護事業と親和性が高かったと思います。
その延長線上として、「警備のノウハウを活かした介護事業ができるのではないか」と考えたのが参入の経緯でした。

小菅

高齢者の見守りを起点として、生涯にわたってお客様の期待に応えるのが介護事業なのですね。

熊谷

ALSOKの社名の由来は「ALways Security OK」ですが、セキュリティだけでなく、介護事業を通して生涯にわたって安全・安心をお届けしたいという思いがありました。

また、ALSOKの経営理念に「ありがとうの心」と「武士の精神」があります。
「ありがとうの心」は、まさに介護に通じますし、「武士の精神」は利益だけを追うのではなく、社会に貢献することです。私は日本の最大の社会課題は高齢化だと思っています。その課題に向き合って社会に貢献することが、ALSOKの介護事業のミッションだと考えています。

小菅

ALSOKでは在宅介護サービスから介護施設まで総合的に介護サービスを手がけています。お客様のニーズに合わせてワンストップでALSOKブランドのサービスを提供できるのは大きな強みですね。

熊谷

はい。さらに、ただ介護をすればいいというのではなく、介護サービスを利用することで、利用者様、入居者様にはできるだけ長く元気であってほしいと考えています。そのためには、身体機能の維持・向上に取り組んでいくことが大切です。

たとえば、グループ会社の「ALSOK介護」では、全ての入居者様の身体機能を定期的に評価し、それぞれの方に合わせたプログラムを提供しています。常にご自身の健康状態を把握しながら、機能訓練やヨガなどのプログラムを選べるようになっています。
こうした取り組みを積極的に行い、「リハビリに強いALSOKの介護」というイメージを打ち出していきたいですね。

入居者の「生きる力」を引き出すオーダーメイドの介護

小菅

施設入居をネガティブに捉える方もいますが、身体機能の維持・向上につながり、「入居をきっかけに元気を取り戻す」ケースもあります。

熊谷

私たちも、そのような施設でありたいと考えています。入居者様に元気になってもらう取り組みとして、グループ企業の「ALSOKらいふケア」が運営する施設では、食事会や外出サービスといったイベントを毎日開催しています。

小菅

他者との交流や外出は、高齢期の暮らしの生活の質を高め、身体機能や認知機能にも良い影響を与えますから、素敵な取り組みですね。

熊谷

そう思います。ALSOKらいふケアは「生きる力を引き出す介護」を合言葉にサービスを提供しており、入居時に入居者様がやりたかったことや、一人ではできなかったことをお伺いしているんです。お聞きした内容を元に、その方に合ったオーダーメイドのイベントを企画し、職員が同行支援しています。
たとえば、野球観戦をしたり沖縄旅行に行ったり、入居後の生活を心から楽しんでいただけると思いますよ(笑)。

小菅

人手不足と言われる介護業界でオーダーメイドのサービスを提供するのは、かなり大変ではないですか?

熊谷

オーダーメイドを実現するには、「生産性向上」が要になります。その取り組みとして、「介護助手」の配置とテクノロジーの活用を進め、業務効率が3割ほど向上しました。

小菅

「介護助手」とは聞き慣れない言葉です。どのような役割なのでしょうか?

熊谷

間接的な介助を専門に行う役割のことです。
介護の現場の仕事を、洗濯や見守りなどの「間接介助」と、お食事の支援やお話相手などの「直接介助」に分け、それぞれに専門のスタッフを配置するようにしました。
これまではすべての職員が同じ仕事をしていたのです。現在は介護助手が「間接介助」を担うことで、直接介助の職員はよりケアに集中でき、質の高い介護の提供を可能にしています。

小菅

テクノロジーの活用についてはいかがでしょうか?

熊谷

単純な効率化の観点だけでなく、ケア品質の向上、標準化、という意味でも非常に重視しています。
例えば入居者様のベッドに睡眠モニターを導入することで入居者様の状態がわかるようになり、夜間は必要な時にだけお伺いすることが可能になりました。入居者様としても、夜間に起こされずに済み、睡眠の質が安定するようになったと聞いています。
また、バブルで体を洗う機械を導入したところ、入浴時間が3分の1に短縮され、肌に優しい入浴介助ができるようになりました。

また、以前はシフトの引継ぎのたびに職員が集まって申し送りの時間を設けていましたが、今はスマホで職員同士がチャットできるので、連絡もスムーズです。
このようにテクノロジーを駆使することで、やみくもに忙しかった介護現場を変えていくことにチャレンジしています。

小菅

介護業界では、サービスの質の向上と人材確保が共通の課題になっていますが、ALSOKの人材育成の特徴を教えてください。

熊谷

まずは介護現場にしっかり定着してもらうことが大事だと思っています。
「生涯働ける職場」にしていくために、当社ではキャリアパスを明確にし、職員の処遇を良くするようにしています。2024年度は全正社員に対し給与の5.3%のベースアップを行いましたが、今期は2桁アップを目指しています。

全般的な人手不足の中で、介護業界は他産業との人材獲得競争になっています。
だからこそ、他産業に引けをとらない処遇にすることが、結果的にサービスの質の向上につながると信じています。そうした当社の取り組みが「働きやすい職場」として評価され、埼玉県にある有料老人ホーム「みんなの家・土呂栄光荘」が本年度、「介護職員の働きやすい職場環境づくり 厚生労働大臣表彰奨励賞」をいただきました。
サービスの品質を維持、向上させながら職員が働きやすい職場環境を全施設で実現しつつあります。

ALSOKがフロントランナーとなり、未来の介護を切り拓く

小菅

熊谷様は2024年に「科学的看護・介護研究機構」の代表に就任されました。
ALSOK介護が推進する「科学的介護」とは、どういったものですか?

熊谷

介護現場には、慢性期と呼ばれる”病状が比較的穏やかだが、治癒が困難で、病気と長期的に付き合っていく”状態の方が多くいらっしゃいます。この部分の研究が十分に行われていないという問題意識がありました。そこで3年前から東京科学大学と共同で「看取りの予知技術」の研究開発を行っています。
これまでの介護現場では、入院やお亡くなりになる時期を職員の経験や勘で予測していましたが、介護現場でデータを蓄積し、研究することで、エビデンスベースで予測しようという試みです。
たとえば、半年後に身体機能が落ちる傾向にある人がどのような状態か、予測できればその方を重点的にモニターすればいいですし、運動訓練を行うことで身体機能の低下を防ぐことができます。このようにALSOKの介護施設を研究フィールドにした本邦初のプラットフォームを作りました。

小菅

これまで、警備や危機管理の分野で培ってきたALSOKのノウハウは、超高齢社会のどのような課題解決に活かせるとお考えですか。

熊谷

60年以上にわたって警備・セキュリティ事業に取り組んできたALSOKには、防犯のテクノロジーや効率的な警備など、生産性向上のさまざまなノウハウが蓄積されています。それを介護現場に活かすことで、生産性の高い職場環境に変えていけると考えています。

生産年齢人口が減っていく今、介護現場の最大の課題は、やはり人手不足です。
この問題を解消するには、海外人材の活用が必要不可欠です。ALSOK介護では現在190名の海外人材が共に働き、2026年4月にはインドやインドネシアから90名の海外人材が入社します。

特にインドの方は、母国で資格を取って看護師として働いた経験がある人が多く、日本語も話せますから即戦力として活躍してくれます。海外人材は非常にモラルが高く、介護も丁寧なので、とても現場で評判が良いです。しかも、海外人材は「できるだけ長く日本で働きたい」という思いが強いですから、離職率がわずか0.3%です。

小菅

最後に、これからALSOKが目指す「未来の介護の姿」を教えてください。

熊谷

一昔前の介護現場は非効率で忙しく、よく「3K」と言われたものでした。しかし、工業分野で一般的な生産管理などの手法を導入すれば、効率も環境もかなり改善できる職場だと思っています。
ALSOKが先陣を切って介護のDX化、ICT化を進め、介護イノベーションのフロントランナーとして未来の介護を切り拓いていきたいと思っています。

小菅

ALSOKがフロントランナーとなって業界全体が良くなっていくことを期待しています。
本日はありがとうございました。

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