親の銀行口座、いくつあるか知っていますか?認知症になる前に把握したい、お金まわりの個人情報

親の銀行口座からお金が引き出せない

一番知っておきたい、「お金に関する情報」

「今から知っておきたい親のこと」の連載では、これまで、親のキャラクター、親の履歴書、親の交友関係についてお伝えしてきました。しかし、実は今回の連載4回目にしてお伝えする、「親の個人情報」が、とりわけ重要なのです。

個人情報とは、その人を特定できる情報のことで、一般には、氏名、住所、電話番号、生年月日といったものを指しますが、介護が必要になった時に、特に必要な個人情報とは、とりわけお金まわりの個人を照会する情報です。

例えば、銀行口座とキャッシュカードの暗証番号、クレジットカードの種類と使用状況、加入している民間保険の種類とその保険証書の保管場所など……。最近では、PC、スマホのパスワードやショッピングサイトのアカウント情報もこれに該当するでしょう。これらは、普段は親が自分でしっかり管理していて、家族であってもなかなかわからない類の情報です  。

このような親の個人情報を子供が知るのは難しいケースも多いでしょう。しかし、親の状態次第では、“その時”になってから確認したのでは遅いことがあります。

例えば、親の介護費用を親の銀行口座からねん出したいのに、キャッシュカードの暗証番号がわからなくて困り果てたという話は、よく聞くのではないでしょうか。

銀行の通帳と印鑑、本人の委任状がそろっていても、窓口で本人以外の人が出金をすることは、今では非常に難しくなっています。キャッシュカードがあれば、ATMから引き出しができますが、これも暗証番号を知らなければ不可能です。

つまり、暗証番号のような親の個人情報を知っていなければ、せっかくしっかり介護をしたい、世話をしたいと思っていても、実際にそうすることが困難になってしまうこともあるのです。

親の代理になれる「成年後見制度」は、親が元気なうちに検討を

親の代理として銀行窓口でお金を引き出したり、介護施設入居の契約を行ったりするには、親の権利を譲渡する制度の1つである「成年後見制度」を利用する方法があります。

成年後見人になれば、親の大切な個人情報を、親の代理として管理しながら、財産の管理や各種契約を代行することができます。

成年後見制度には、判断力の低下がみられる状態になった時に申請する法定後見制度と、本人の判断力がまだあるうちに、将来の後見人を自ら選んでおく任意後見制度がありますが、法定後見制度の場合は必ずしも家族が後見人に選ばれるとは限りません。

筆者の場合は、父がまだ元気なうちに任意後見を利用することを選んだため、兄と私の二人が、父と「委任契約及び任意後見契約」を結びました。

その際、父のすべての金融情報などを明らかにしたため、その後、介護生活と成年後見が始まってからは、筆者が本人の代理としてあらゆる事務処理を行うことができました。もしも、父が昨日まで元気だったのにある日突然倒れて、要介護状態になり、そこから初めて父の個人情報を調べることになっていたら、とても難儀だったと思います。

ただし、成年後見制度の利用はまだまだハードルが高いのが実情です。そこで、社会との手続きに必要となる「親の個人情報」は、真っ先に知っておきたい親のことになるのです。

親の個人情報、確認しやすいものから始めよう

知っておきたい「親の個人情報」の項目は、次の通りです。

親の基本情報

  • 現住所(住民票の住所。施設・病院・親族の家等に住んでいたら、その住所も)
  • 電話番号
  • 携帯番号
  • メールアドレス
  • 生年月日
  • 本籍
  • 衣服、靴、帽子のサイズ

本人確認の公的情報

  • 社会保険証とその番号(医療保険、介護保険、年金保険など)
  • 本人確認の証明書とその番号(マイナンバー、免許証などの身分証明書となるもの)

金融・保険等の情報

  • 銀行口座(メイン口座、年金振込口座、税金還付先口座、引き落とし口座など)
  • クレジットカード情報
  • 民間の加入保険(保険会社名と保険の種類)
  • 会員となっている組織・団体・利用サービスなど
  • パソコンやスマートフォン、インターネットサービスに関するパスワード
  • 貸金庫に預けているもの

上記のうち、最初に確認したいのが、入院や介護保険申請の際に必ず必要となる「医療保険証」「介護保険証」です。同時に、親が加入している公的年金に関する情報も確認しましょう。

公的保険の情報は、親も子供に伝えやすいと思いますので、親の個人情報を知るきっかけにするとよいかもしれません。

次に早めに知っておきたいのが銀行口座です。

介護サービス事業者に支払う介護サービス費の引き落としや役所からの還付金などのために、高齢者は書類に銀行口座を書く機会が意外にあります。メイン口座、年金振込口座、引き落とし専用口座など、複数の口座を使い分けしている親もいますから、手続きを代行するときに迷わないよう、親が元気なうちに銀行口座については確認しておきたいところです。

暗証番号については、「いざという時にお金が出せなくなると困るから」と話してみましょう。入院中や在宅介護が始まると、毎日の生活費のほかにも、介護用品やいろんなサービスなどのために現金が必要になってきます。

家族の誰かが介護に関連する費用を立て替えてしまうと、後々金銭トラブルにつながることもありますので、今のうちから親と話し合って、家族みんなの同意のもと、キーパーソンとなる人がキャッシュカードの暗証番号を知っておくと安心です。

また、上記の<親の基本情報>の最後に「衣服、靴、帽子のサイズ」を付け加えました。

介護は本人の生活全般を手助けすることですから、代わりに下着や衣服、靴などを購入することもあります。でも、親の服や靴のサイズって子供は知らないものです。

服のサイズは親にとって隠したい情報ではありませんから、ここから話が弾めば、他の情報についてもスムーズに聞き出すことができるかもしれません。

話したがらない親には、まずコミュニケーションを増やすことから

このように、知っておきたい親の個人情報はいろいろありますが、特にお金回りに関して情報を得るのは非常にハードルが高いといわれる方もいるでしょう。

「なぜそんなことを聞くのか?」と言われたり、「勝手にお金に手を付けてしまうのではないか?」と思われたりするのではないかと想像できるからです。
このような親の不安を考えれば、いきなりお金の話を切り出すのはよくないことはわかると思います。

まずは、高齢になってきている親とのコミュニケーションの取り方を振り返って、親の不安を安心感に替える話題から話をする工夫を検討してみましょう。そのためには、もっと頻繁に会うようにして普段の生活の様子をよく観察し、毎日の親の生活の話題から、自然にお金に関する話題につなげる努力も必要です。

いろいろな話をしていくうちに、いざという時は子供に任せたいと親が思えば、親から将来のお金の管理や必要な情報を教えてくれるものです。親ときちんとコミュニケーションをとって、大切な親の個人情報を、上手に得るようにしてください。

イラスト/上原ゆかり

浅井 郁子
浅井 郁子 介護・福祉ライター

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。 高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。 東京都民生児童委員 小規模多機能型施設運営推進委員 ホームヘルパー2級

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