意外と知らない「親のキャラクター」 - 介護の前に知っておきたい親のこと

親の介護が始まったら、家族は親に合う介護サービスを選んだり、親の代わりに何かを判断したりするようになります。でも、親のことをよく知らないと、最適な選択とは?と迷いが生じるかもしれません。

いざという時に焦らないよう、「今から知っておきたい親のこと」は何かを紹介します。

父と娘

第1回 親のキャラクターを知る

1回目の「知っておきたい親のこと」は、「親のキャラクター」です。

キャラクターとは性格や特徴のことですが、親の介護が突然始まると、親のキャラクターを案外知らないことに気づかされます。なぜなら、果物が好きだとか、生ものが苦手だとか、好きなこと、苦手なこと、趣味、特技、癖やこだわり等々、親の性格や特徴を形作っている細かいキャラクター要素については、子供は意外と知らないからです。

でも、介護にはこのようなキャラクター要素がとても重要になります。

例えば、自分に置き換えて想像してみましょう。

骨折して日常生活に人の手助けが必要になったとします。

その時、あなたの苦手な食べ物が出されて、あなたの普段のやり方と違うことをされたら、手助けという親切に感謝しつつも、小さなストレスを感じるのではないでしょうか。

それでも短い期間とわかっているので受け入れられると思います。しかし、高齢の要介護者の場合はそうはいきません。人からの介助がずっと続く可能性が高いため、キャラクターを尊重しない介護が行われると、小さなストレスが蓄積していき、介護トラブルに発展しやすくなるのです。

食事のスピード、味付けの好み、きれい好き、雑然としているほうを好む、衣服の着方、洗面の仕方など、日常生活における好みや方法というのは誰にでもあります。特に高齢者が長年続けてきたこだわりは、尊重こそすれ、否定したり、介護者に合わせるよう強要したりしないことが大事です。

誰しも、自分の好みに合った介助をしてほしいと考えますが、一方で介護する家族のほうは、親の好みを確認せず、つい介護者の都合に合わせて介助してしまいます。そうなると、親子間では特に大きな軋轢を生むことがあります。介護者である子供は、せっかく介護をしているのに、不機嫌で介護を拒む親にだんだん腹が立っていき、介護する気が失せてきてしまうのです。

あらかじめ親のキャラクター要素を知り、それを尊重することが結局のところ介護がスムーズに行われるための一番の近道です。そのために今から親のキャラクターを知っておきましょう。

介護のプロたちにも必要な親のキャラクター情報

介護現場でも利用者のキャラクター情報はとにかくほしいものとされています。

筆者が父親の介護をしていたときの話です。父がデイサービスのレクリエーションの時間にどうもつまらなそうにしていると、スタッフに相談されたことがありました。そこで、家で喜んで聴いている父の好きな演歌歌手のCDをスタッフに渡し、「もしよろしければ、これを聞かせられませんか?」とお願いしたところ、後日「お父さんが笑顔で過ごしてくれるようになりました!」とスタッフから報告を受けてほっとしたことがあります。

他にも、「食べ物の好き嫌いはないけれども、お酢がちょっと苦手です」「にぎやかなほうが好きなので、なるべく一人にしないでほしい」「床にごみが落ちていると捨てないと気がすまない性格なんです」などと折に触れて父の特徴を介護スタッフに伝えた記憶があります。

すると次第に、介護スタッフからも今日の父がどんな様子だったかを細かく話してくれるようになり、時には「お父様は猫が好きなんですね!」などと家族も知らない父のキャラクターの一端を教えてくれることがありました。

介護のプロの人たちでも、情報がないと、利用者が苦手なものを無理して食べているのではないか、レクリエーションにいやいや付き合っているのではないか、入浴介助の段取りは安心してもらえているかなど、迷いながら介護をしていることもあります。

そういう時は、利用者本人に聞いてみたり、介護しながら気づいたりしますが、「私はこういうことが好きです」とか、「こういうものは嫌いです」とはっきり主張できる高齢者は少ないでしょう。

家族があらかじめ親のキャラクター情報を伝えることができれば、介護スタッフの不安も解消されて質のよいサービスの提供が期待できます。

親のキャラクター要素は、好きな食べ物、苦手な食べ物、苦手な味付けや調味料、趣味や好きなこと、苦手なこと、性格の特徴、特技、こだわり、長所、短所など家族が知っていることや気づいたことであれば何でもかまいません。「私の親はこんな人」という情報を、手帳やノートなどにまとめて書き留めておきましょう。そのとき、一度に全部を書き出そうとはしないで、ふと思いだしたときにメモをとるとよいと思います。

親のキャラクターを見つめる作業を、ぜひ今からしてみてください。

浅井 郁子
浅井 郁子 介護・福祉ライター

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。 高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。 東京都民生児童委員 小規模多機能型施設運営推進委員 ホームヘルパー2級

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