2021年度にすべての介護施設・サービスに対して、虐待防止措置の実施を義務付けるという改定があったのはご存じでしょうか。
そこから3年の期間を経過措置として設けていたものの、一部の例外を除いて2024年度となる4月からは経過措置期間が終了します。仮に虐待防止措置の実施をしておらず違反した場合は、基本報酬が減算されるなどの規定があるため、注意が必要です。
例外は、居宅療養管理指導、福祉用具販売のみとなっています。また、福祉用具貸与に限っては、その特性の違いを踏まえ、さらに3年間(2026年度末まで)の経過措置が設けられると決まりました。
改定の経過措置が終了後に虐待防止措置を未実施の場合は、基本報酬が減算となります。
減算となる要件について、厚労省は以下のように述べています。
○ 虐待の発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合(新設)
・ 虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
・ 虐待の防止のための指針を整備すること。
・ 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
・ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
具体的な取り組みとしては、下記が挙げられます。
・成功事例の情報収集、周知
介護施設のストレス対策・高齢者虐待防止の取り組み例などの情報収集と周知
都道府県の実施事業(国の補助あり)でハラスメント等のストレス対策研修の受講可能
・職員相談窓口の設置、周知
利用者・利用者の家族・介護職員も利用可能と周知し、内部・外部からも相談できる先を
作って虐待の抑止につなげる
上記のような取り組みで、高齢者虐待防止に向けた施策の充実を図れます。
2022年度に、介護施設・事業所の職員による高齢者への虐待が過去最多となったことはご存じでしょうか。
相談・通報件数は2,390件(前年比+293件)、うち虐待判断件数は739件(+144件)となっています。虐待防止の理念が浸透し、問題が顕在化しやすくなったことも影響したと考えられていますが、コロナ禍で一度減少した虐待件数は、増加の一途を辿っています。
虐待の発生要因(複数回答)は「教育・知識・介護技術に関する問題」が56.2%で最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が22.9%、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制」が21.5%となっています。つまり、虐待する職員の感情コントロールだけが原因ではなく、組織体制、教育制度、技術などの問題が虐待につながっているとわかります。
しかし、「減算されるから虐待防止措置を徹底しなければ」あるいは「虐待防止措置はもう実施済みだから大丈夫」と感じている施設の担当者もいることでしょう。しかし、その措置が虐待防止につながっているかは施設ごとによく確認する必要があります。
虐待には至らなくても心に余裕がなくなるような働き方をしていないか、どんな負担が減れば心に余裕のある働き方ができるかなど、職員との対話を重視しながら虐待防止措置を進める姿勢が求められています。
介護施設における虐待は深刻な問題です。この問題の一因として、深刻な人手不足が挙げられます。
人手不足により、業務過多となり、職員一人ひとりに過剰な負担がかかります。
これがストレスの増大や燃え尽き症候群を引き起こし、結果として利用者への虐待につながることがあります。
しかし、ただ闇雲に人員を確保するわけにはいきません。
不適格な職員を採用することは、既存職員の人間関係の悪化やモチベーションの低下など、様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
質の高い介護サービスを提供するためには、適切な人材の確保と育成が不可欠です。
2024年度からは、すべての介護施設及び介護サービスにおいて、「虐待防止対策」の実施が義務付けられます。
これは虐待を未然に防ぐための重要な一歩ではありますが、形式的な研修を施すだけでは十分ではありません。
実効性のあるものにするためには、継続的な教育・研修、風通しの良い組織風土、外部の専門機関との連携、仕事の悩みを気軽に相談できる体制の整備が必要です。
また、虐待が発生した後に対処するだけでなく、日常的に不適切な対応が起こらないよう予防策を講じることが重要です。
人材ベンチャーや(株)リクルートジョブズでの営業を経て、2016年よりフリーランスのライターとして活動。Webメディアで採用からサービス導入事例など幅広い企業インタビュー、SEO記事などを執筆。最近ワーママとなり、子供が手のかかる時期に親の介護問題が浮上してくる可能性が高くなったため、自らが気になることを調べて記事にしています。
高下真美さんの記事をもっとみるtayoriniをフォローして
最新情報を受け取る