この研究は国立長寿医療研究センターの冨田浩輝研究員、島田裕之センター長らの研究グループによって、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)の支援を受けて実施されました。その結果、聴力が低下した高齢者の孤独感が、要介護状態の新規発生と関連することが明らかになりました。
本研究では、愛知県東海市在住の65歳以上の高齢者5,563名を対象に、聴力低下の有無により層別化し、孤独感と要介護状態の新規発生との関連を縦断的に分析しました。その結果、聴力低下のある群では、孤独感を有する場合、約1.7倍も要介護状態の新規発生が多く認められました。
この研究の結果は、聴力低下のある高齢者の介護予防において、孤独感に特別な注意を払う必要があることを示しています。聴力の低下は、老年症候群の最も一般的な症状であり、さまざまな危険因子の中でも孤独感は特に注意を要すると考えられます。
※この研究成果は、2023年4月6日にJAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgeryに掲載されました。
高齢期の「聴力低下」と「孤独」は深い関連性を持ち、要介護状態の発症にも関連しているようです。
聴力が低下すると、日常のコミュニケーションが困難になり、次第に人と接する事を避ける傾向にあり、結果として社会的孤立へとつながりやすくなります。
社会的孤立により、認知症のリスクが上昇することが別の研究でも明らかにされています。
さらに、孤独感は一日にタバコ15本を吸うことに匹敵する健康被害をもたらすとされ、心身の健康に深刻な影響を及すことも有名な話です。
高齢期における聴力低下は「年相応だから仕方ない」と放置されてしまいがちですが、上述したリスクが高まる可能性があります。
早期の受診と適切な補聴器の使用は、聴力低下による孤独や認知症リスクの増大を防ぐ重要な手段です。
また、補聴器購入に対して助成金を出す自治体もあるので積極的に活用してほしいところですね。
聴力低下も孤独も、当人の自助努力だけで改善することは困難です。
健康維持とQOL(生活の質)向上のためにも、家族や周囲のサポートが欠かせません。
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