令和4年における日本の高齢化率は29%(総人口に対する高齢者の割合)となり、10人いるうちの約3人が高齢者という割合です。昭和45年には人口の7%程度であったことを見ると、近年の高齢化率の上昇は目を見張るものがあります。
高齢者が増えれば介護が必要になる人(以下、要介護者)の数も増えるため、介護をする人(以下、介護者)の数も増えています。
2019年時点において、別居家族が介護をしている割合は11.8%でしたが、2022年には13.6%まで増加しました。
さらに要介護者世帯における単独世帯・夫婦のみ世帯は増加しており、別居の家族が要介護者の自宅に行って介護をするスタイルが今後増えていく可能性が高いと考えられます。
別居での介護、そのなかでも遠距離介護は心身や時間の負担が大きいだけでなく、金銭的な負担(主に交通費)が大きい点も見逃せません。なぜなら、遠距離介護にかかった交通費は医療費控除の対象外となるためです。
※医療費控除の対象について
一人での通院が難しい場合、付き添い家族と要介護者本人の通院にかかる交通費は控除対象ですが、家族が遠距離介護のために移動する交通費は控除対象外です。
(国税庁HPより)
交通機関によっては、介護帰省の割引を設けているところもあります。また、早期予約やネット予約で割引が受けられる交通機関、自治体が介護帰省でも活用できる割引制度を設けている場合もあります。
医療費控除は受けられないものの、介護帰省割引がある航空会社もあります。
日本航空(JAL) |
全日空(ANA) |
ソラシドエア |
スターフライヤー |
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割引の名称 |
介護帰省割引 |
介護割引 |
介護特別割引 |
介護割引 |
適用範囲 |
介護を必要とされる方の「二親等以内の親族の方」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」 |
要介護または要支援認定された方の「二親等以内の親族(満12歳以上)」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」 |
要介護・要支援被認定者および、その介護者の方(満12歳以上)、介護者(介護する方)は要介護・要支援被認定者の「二親等以内の親族」と「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」ならびに「子の配偶者の父母」のうち2名 |
要介護・要支援被認定者および介護者(2親等以内の親族、配偶者の兄弟姉妹の配偶者ならびに子の配偶者の父母に限る) |
利用条件、利用可能路線 |
「介護をする方」と「介護を必要とされる方」の居住地の最寄の空港を結ぶ一路線限定。 JAL国内線全路線、JTA・RAC全路線で利用可能。 事前に介護割引情報を登録し、JALマイレージバンクに入会。 経由地の指定なし、複数箇所でも適用可能だが、経由地を含めて全旅程の航空券を同時に購入が必須。 他社便、他交通機関利用の場合は割引適用外。また、経由便利用の場合、JALであっても介護帰省割引以外の運賃との併用不可。 |
介護する方と介護を必要とされる方の最寄り空港を結ぶ一路線限定ANAの直行便がない場合は、出発地と目的地を結ぶ経由地を2箇所まで指定可能。(同一日もしくは予約可能な最短の日程に限る) 出発地と目的地を結ぶ区間に他社便または他交通機関が含まれる場合は割引適用外 事前に介護割引情報登録を済ませたANAマイレージクラブカードを予約・購入・登場時に提示。 |
介護する方とされる方の最寄りの空港を結ぶ1路線限定 ※「介護割引パス」の発行は、「ソラシド介護事務局」のみ |
介護する方とされる方の居住地の最寄の空港を結ぶ一路線限定 ※航空券ご購入およびご搭乗手続き時に、「介護割引パス」を提示。 羽田(東京)⇔ 北九州 羽田(東京)⇔ 福岡 羽田(東京)⇔ 関西(大阪) 中部(名古屋)⇔ 福岡 羽田(東京)⇔ 山口宇部 |
必要書類 |
介護保険証、介護認定結果通知書、戸籍抄本、戸籍謄本、公的書類(現住所記載) |
介護保険被保険者証、介護認定結果通知書、介護区分変更通知書、身分証明書、戸籍謄本、戸籍抄本、ANAマイレージクラブ、お客様番号、『ANA介護割引情報登録申請用紙』(郵送の場合) |
認定証明のある介護保険証または認定結果通知表(コピー可)、被認定者と介護者の関係を証明する公的書類(戸籍謄本・抄本等、コピー可)、「介護特別割引」適用者の現住所を証明する書類(住民票・運転免許証・健康保険証・マイナンバーカード(表面のみ)、コピー可)、「介護特別割引」適用者本人の写真(3cm×3cm)、介護割引パス申込用紙 |
介護割引の注意点は他にも多数あることと情報が変更される可能性もあるため、必ず各航空会社のサイトで随時、最新情報を確認ください
介護割引は年に一度など定期的な更新が必要な場合がほとんどであるため、その点も注意が必要です。
登録に時間を数週間要すること、郵送のみ、インターネット申請、カウンター申請などさまざまな申込み方法もあるため、余裕を持ってよく確認し、登録を行ってください。
上記に挙げた航空会社の割引を活用する、もしくは大手よりも安価なLCCを活用する方法も有効です。
新幹線の場合は、介護割引はないものの、早期予約・インターネット予約等を活用すれば割引を受けられます。帰省日程を決めておき、早期に予約して交通費負担を減らせます。
長崎県では、五島列島、壱岐、対馬、佐世保市宇久島・寺島等で介護帰省時の航路・空路運賃が割引になる制度を設けています。
五島市の場合、対象者は下記条件に当てはまる方となっています。
対象者(五島市ホームページから引用)
五島市にお住まいの要介護認定、要支援認定を受けている方(※)の介護のため、
反復継続的(年6回以上)に本土から来島される方
(※)祖父母、父母(配偶者の父母)、配偶者、兄弟姉妹、孫
おじ、おばは対象となっておりません。(厚生労働省の介護休暇制度に準じる)
対象期間は1年で更新可能、必要書類は申請書の他、要介護・要支援認定の書類(写しでも可)、介護保険被保険者証、介護保険要介護認定・要支援認定等結果通知書のいずれか一つ
写真・身分証明書(写しでも可)、親族とわかる書類(写しでも可)や戸籍、年6回以上の帰省(来島)計画、更新時には実績(6回以上の交通機関領収書)の提出が必須です。
更新については、有効期限2ヶ月前から更新可能で、年6回以上来島の実績としての領収書、初回申請時と同じ書類の提出が必要です。仮に年6回以上の来島実績がない場合は更新ができず、1年後に再申請が可能となります。
自治体によって内容が異なるため、詳しくは各自治体のホームページで確認ください。
その他、企業が福利厚生として介護帰省費用を補助するケースもあります。
森永乳業では、遠方に住む家族の介護のための帰省旅費を一部負担、大和ハウス工業では年4回を上限に帰省距離に応じた補助金を1回につき1.5~5.5万円支給する「親孝行支援制度」を導入しています。
(片道距離200km以上300km未満で1.5万円を支給、最大で片道1600km以上で5.5万円が支給されます。)
企業によってさまざまな介護支援制度があるため、内容は職場に確認ください。
介護を理由に仕事を辞める「介護離職者」は年間10万人にのぼります。
親の介護のために帰省し、週末だけ実家で過ごす介護者もいらっしゃいますが、これには往復の時間や交通費といったコストが伴います。介護は数年にわたることが多く、さまざまな制度を利用して経済的な負担を軽減することが望まれます。
また、休日をすべて介護に充てると、介護者自身が休息する時間がとれません。最近は、自費の「介護保険外サービス」が増えており、病院の付き添い、高齢者の見守り、家事代行などが提供されています。
帰省の頻度を減らす代わりに、こうしたサービスを利用することで、介護者も自分の時間を確保することができそうです。また、福利厚生の一環として企業独自の介護支援制度をもうける企業も増えています。ぜひ勤務先に確認してみてはいかがでしょうか。
人材ベンチャーや(株)リクルートジョブズでの営業を経て、2016年よりフリーランスのライターとして活動。Webメディアで採用からサービス導入事例など幅広い企業インタビュー、SEO記事などを執筆。最近ワーママとなり、子供が手のかかる時期に親の介護問題が浮上してくる可能性が高くなったため、自らが気になることを調べて記事にしています。
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