おひとりさまなら考えておきたいライフプランの話

女性のライフスタイルも変化して、おひとりさまを選択する人も増えてきました。時間もお金も自由になるおひとりさまですが、おひとりさまだからこそ考えておきたいこともあります。おひとりさまライフをエンジョイするためにも考えておきたいライフプランについてお話しします。

おひとりさま女子のライフプラン

昭和の前半であれば一般的であった、「結婚して夫を支え子どもを育てる」といった女性の人生モデルが、三十数年の間に大きく変化しています。 国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2018 年版)」によると生涯未婚率は右肩上がりとなっています。

生涯未婚率とは、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合です。

その、生涯未婚率を見ると、2015年では男性は23.4%、女性は14.1%となっています。 1990年と比べると、男性では約4倍、女性でも約3倍以上になっています。 2020年以降は日本の世帯数に将来推計からの推計の数字ではありますが、2040年には、男性の29.5%が、女性の18.7%が未婚であると予想されます。

特に女性の未婚、おひとりさまが増えた理由には、経済的な自立が一つの要因ではないでしょうか。1985年に男女雇用機会均等法が成立し、採用や配置、業務の配分、昇進、降格などが性別によって差別することが禁止され、その人の能力や意欲によって評価されるようになりました。

あれから 30年以上が経過し、現在では女性が社会で働くことは当たり前ですし、女性管理職や女性経営者も増えました。

こうした経済的な自立や自由は、自分の人生の意思決定に大きく関わっているのでしょう。好きなことや趣味に時間とお金を使う、好きなときに旅行に行くなど、人生の選択肢は増えました。

50歳時の未婚割合の推移

(注) 50歳時の未婚割合は、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合であり2015年までは「人口統計資料集(2018年版)」、2020年以降は「日本の世帯数の将来推計」より、45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均。

また、結婚しないという選択をする人が多いのは日本だけではありません。主要国の未婚率を見ても女性の場合、フランス、オランダ、ノルウェー、スウェーデンなどでは45歳から49歳までの4人に1人が未婚であることがわかります。

主要国の性、年齢(5歳階級)別未婚率:最新年次

このように、おひとりさまというライフプランは多くの女性の選択肢になっているということです。 しかし、おひとりさまだからこそ考えておきたいこともたくさんあります。

将来の収入、年金だけで足りない部分、住む場所や、住み方、さらには人生の幕を閉じるときのことまでもしっかりと考えておく必要があります。 今まで、あまり考えたことがなかったという人は、この機会に将来のライフプランを考えてみましょう。

まずは現状把握をしてみよう

ライフプランを考えるうえで、最初にすることは「現状の把握」です。現在の収入や支出、貯蓄額、借入金額、将来受け取ることのできる資金などです。

貯蓄金額や、生活にかかるお金などは、その人の収入や生活のスタイルによって異なるため、いくらあればいい、いくら使っているからダメということはありません。 しかし、おひとりさまで生きていくのであれば、お金はとても大切な武器になります。

ここでは、おひとりさま世帯の平均収入、平均支出、貯蓄額などを参考に見ていきましょう。

金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2020年によると、40歳代の平均貯蓄金額は666万円、50歳代の平均貯蓄金額は924万円、60歳代の平均貯蓄金額は1,305万円となっています。

金融資産保有額(単位 %)

あくまで参考にしていただければいいですが、もし平均よりもかなり少ないと感じるのであれば、これを機会に貯蓄金額や貯蓄方法を見直してみるといいでしょう。

また、資産は預貯金だけとは限りません。不動産や、株式、投資信託などの金融商品も資産に含まれます。そういった自分の資産がどれくらいあるのか、もし借入金がある場合、借入金を含んだ純資産総額はいくらになるのかを書き出してみましょう。

書き出すときには、バランスシートを使うと簡単でわかりやすいでしょう。バランスシートと言うと、企業の決算のときの書類のように思うかもしれませんが、個人の資産にも十分使えます。

まず、バランスシートを作るためには、資産と負債をすべて書き出します。現金や定期預金はそのままの金額で構いませんが、貯蓄型の保険などは、そのときの解約返戻金の金額を記入します。

また、株や債券、投資信託、その他の金融商品はそのときの時価で記入します。 住宅や不動産などは売却見込み額を記入するようにしましょう。

借入金は、そのときの借入金残高の元本を記入しましょう。 資産から負債を引いて残っている金額が、あなたの純資産になります。純資産がマイナスになっていると債務超過の状態なので、家計改善が必要になります。

家計のバランスシシート

将来はどうしていたい? ライフプラン表を作ってみよう

次にライフプランを考えるうえで大切なのが、自分はどのような生活や生き方をしていきたいのかを考えることです。5年後にはこうなっていたい、10年後はどうなっていたい、65歳になったときには、老後の生活は、など具体的にイメージしてみましょう。

例えば働き方についても、今の仕事を続けているのか、転職をしているのか、いつまで働くのかなどです。さらに、住まいについては、ずっと賃貸のままなのか、マイホームを購入するのか、資金をためて老後に一括購入するのかなど選択肢はいくつもあります。

また、現在ではテレワークも普及しているので、必ずしも通勤に便利なところに住む必要もありません。勤務先は都心でも、のんびりとした郊外に移住して働く選択肢も持てるようになりました。

ライフプラン表に記入するのは、仕事や、住まいのことだけではありません。旅行や車の購入など、毎月の生活ではなく、まとまったお金がかかることも記入しておくといいでしょう。

ライフプラン表記入のポイントは、いつどんなことがしたいかを具体的に記入することです。そのほうが実現しやすくなるからです。自分の将来を“見える化”してみると、いろいろな発見があります。

ライフプラン表

おひとりさまが抱える悩み

おひとりさまでなくても、将来の不安や悩みはありますが、ひとりだからこそ考えておきたいことも多くあります。とくに多くの人が口にすることは、収入に直結するキャリアについてです。

若いうちはいつまでも今と同じように働けると思っていても、年齢を重ねるとそれまでと同じように働くことが難しいと感じるようになる方が増えていきます。それは健康にも関係することですが、とくに50歳を超えると働くペースを落としたいと考える人が増えていきます。

そうなったときの収入の減少をどのように補うのか、それまでに資産を増やしておいたり、副業などで収入を増やしておいたりすることも考えておいたほうがいいでしょう。

ほかにも、老後の生活費や、住宅の問題。とくに住むところはおひとりさまだからこそ早めに考えておきたいところです。ずっと賃貸で暮らすのであれば、その分も老後資金は必要になります。

また、どこかの時点で購入することもあるでしょうが、自分が亡くなった後、相続についても考えておかないとトラブルとなる可能性もあります。 また、もし介護が必要になったときには、施設に入るための資金も必要になるでしょう。そのときは、住んでいる住宅を売却して資金にすることもできます。

このように、これから訪れる不安なことに対して、あらかじめ準備をしておきましょう。

おひとりさまライフを楽しむために

おひとりさまのライフプランは、不安ばかりではありません。誰にも気を使わず自由に生きることができるのは、おひとりさまならではのはずです。不安にばかり心をとらわれて、自由に生きることができなくなってしまってはいけません。

自由な選択肢が多いことがおひとりさまのライフプランです。趣味を見つけて世界を広げたり、会社とは関係のない友人をつくったり、年代の離れた友人などをつくって新しいことにチャレンジしてもいいでしょう。

そうして人脈を広げておけば、困ったことがあったとき助けてくれる人がいる安心にもつながります。心と体を緩めながら始めていくとよいでしょう。

黒須 かおり
黒須 かおり ファイナンシャル・プランナーCFP

FPラポール株式会社代表取締役。 いつでも相談できる親しみやすいFPを目指し、ひとりひとり異なるマネープランの実現のパートナー。それぞれのライフプランに将来に向けての働き方、資産形成、資産運用などmoneyとキャリアのコンサルティングを行う。資産運用セミナーや金融機関にて資産形成のアドバイザーとして活動。

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