人生100年時代。少子高齢化が進む日本において、老後資金の問題は誰にとっても切実な問題です。自分らしく理想の老後を送るためにはどのような選択肢があるのか? どうすれば老後生活の不安を解消できるのか?など不安は尽きません。
筆者は過去に5,000件以上の個別相談実績がありますが、老後資金の問題については、「こんなはずではなかった」「もう少し早めに老後について考えておくべきだった」等、さまざまな相談を受ける機会が多いのが実情です。
老後資金の悩みを解決できるかどうかの鍵は、単に一般論だけでなく、ご相談者さまの意向に寄り添いながらも、今後生活を送るうえで必要であり、かつ具体的な選択肢を提供し、いかに的確にアドバイスできるかどうか?がポイントになります。
今回の記事では、過去のさまざまな個別相談の実績や経験から、代表例として、3回シリーズ(第1回:『理想の老後資金計画と住宅資産の活用法』~人生100年時代とリバースモーゲージ~、第2回:『理想の老後生活を送るための一つの選択肢としての不動産投資』、第3回:『意外と盲点! さまざまな住宅資産の活用法』~リースバック・自宅の有効活用など~)を通じて、皆さまのお役に立てる実践的な情報を提供していきたいと思います。
厚生労働省が発表した令和 2 年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.64歳。女性は87.74歳(図表1)、90歳まで生存する割合は、男性28.4%、女性52.5%(図表2)となっています。実に男性は4人のうち1人、女性は2人のうち1人が90歳まで生存する割合です。
60年前の寿命と比べると、男性は約16年、女性は約18年延びていることが分かります(図表3)。
寿命の延伸とともに、公的年金や預貯金の取り崩しだけでは、理想の老後を送ることができない人が徐々に増えており、今後はますます金融資産の運用や住宅資産の活用などで資産寿命を延ばす努力が必要といえるでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所【人口統計資料集(2021)】のデータによると、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない割合)は、男性23.37%、女性14.06%と過去に比べ上昇傾向になっています。
人生の3分の1を超える期間に相当する60歳以降の老後の期間を、自分らしく一人でどのように快適に過ごしていくかは、切実な問題といえるでしょう。
自分が思い描く、理想の老後を送るために早期にさまざまな対策を考えることが必要といえそうです。
ケースによっては、株式・債券・投資信託など金融資産の運用だけでなく、住宅資産の活用や不動産投資も含め、一人一人が「お金」に対する意識を高め、充実した人生を送るためには、どのような対策が必要なのか?工夫が必要といえます。
「リバースモーゲージ」とは自宅(持ち家など)を担保にして、自宅に居住し続けながら老後の「お金」を借りることができる手法です。基本的な返済方法はお金を借りていた者が死亡した場合などに担保となっていた不動産を売却し、その売却代金などにより一括して返済する方法となります。
つまり、基本的な考え方はマイホームを担保に老後の人生を充実させるための手段であり、遺族には不動産を遺さないという考え方になります。
持ち家の場合、老後資金対策の選択肢として、有効な方法の一つといえるでしょう。 ただし、一言にリバースモーゲージといっても、取扱金融機関により、さまざまな商品があります。
リバースモーゲージが利用できるのは、一戸建てのケースが多いですが、金融機関によってはマンションの場合も利用できる場合があります。また、審査により適用の可否や、利用方法も異なるため注意が必要です。
「リバースモーゲージ」は大きく分けると、資金使途として、老後の生活資金として利用可能なものと、そうでないものに分かれます。よって、リバースモーゲージを選択する際は、今後、生活資金として利用する必要性があるかどうかをよく考える必要があります。
具体的には、老後の生活資金として利用できるリバースモーゲージの代表例として東京スター銀行が取扱う「充実人生」、みずほ銀行「みずほプライムエイジ」、三井住友銀行「SMBC リバースモーゲージ」などが挙げられます。
逆に、老後の生活資金として利用できないリバースモーゲージの代表例は、 住宅金融支援機構の「リ・バース 60」が挙げられます。リ・バース 60 は、銀行など金融機関を通じて利用する「リバースモーゲージ型」住宅ローンです。
取り扱い金融機関・商品としては、三菱 UFJ 銀行「リバ-ス・モ-ゲ-ジ型 住宅関連ロ-ン」、三井住友銀行「借り換え新時代」「住み替え新時代」、りそな銀行「あんしん革命」、三井住友信託銀行「60 歳からの住宅応援ロ-ン」、新生銀行「新生リ・バース 60」等があります。
具体的な活用法については、後ほど具体例を解説します。
「リバースモーゲージ」(生活資金適用型)は、住み慣れた自宅に住み続けながら、老後の資金を潤沢にして、生活を楽しみ、将来自分が死亡したら、住み慣れた自宅(担保物件)を売却して返済する方法です。
つまり、老後の預貯金はなるべく残しておきたい場合だけでなく、住宅資産の活用により、さらに老後に使えるお金を増やしたい方などにとって、選択肢として有効な方法の一つといえます。
資金使途として、本人または配偶者の生活にかかる資金であれば、何にでも利用可となっています。
具体的には、医療費や介護費などの費用、老後の生活資金(有料老人ホーム入居資金など)、住宅の建て替え(バリアフリー住宅建築など)、住宅の改築(バリアフリー化・老朽化対策など)が挙げられ、事業目的の資金や投資目的の資金など生活に該当しない資金使途以外は基本的に利用が可能のようです。
例えば、東京スター銀行の場合、年齢要件は、本人の契約時年齢が55歳以上84歳以下。配偶者がいる場合、配偶者の契約時年齢が50歳以上となっており、返済方法は利息のみ支払う「利払いあり型」のほか、利払いの返済がない「利払いなし型」があります。
各金融機関によって、年齢要件など適用要件は異なりますので、注意が必要です。
「リバースモーゲージ」(生活資金適用不可型)の一つとして「リ・バース 60」があります。満60歳以上の者が利用できる、住宅金融支援機構と提携している民間金融機関が提供する「リバースモーゲージ型」住宅ロ-ン商品です。毎月の支払いは利息のみで、元金の支払いがありません。一般的なリバースモーゲージ(生活資金適用型)との違いは、あくまでリバースモーゲージ型住宅ローンであるため、資金使途として老後の生活資金には利用できません。
借入金の資金使途は、
などになります。
つまり、老後のための預貯金をなるべく手元に残しておきながら、住宅資産の活用により住宅関連資金を捻出する際に有効な方法といえます。
具体な活用例としては、
などが挙げられます。
「リ・バース 60」の借り入れの方法には、「ノンリコース型」(非遡及型。相続人は残った債務を返済する必要がないタイプ。)と「リコース型」(遡及型。相続人は残った債務を返済する必要があるタイプ。)があります。
将来不動産を売却する際に「債務が残ってしまったら、子どもに迷惑をかけるのではないか?」と考える親は少なくありませんが、ノンリコース型を選択した場合、将来、担保物件(住宅および土地)の売却代金で返済後に債務が残った場合、相続人が残った債務を返済する必要はありません。
なお、リコース型の場合には、相続人は残った債務を返済する必要があります。住宅金融支援機構によると、利用者の約99%の顧客がノンリコース型を選択されているようです。
老後資金計画の選択肢の一つとして有効な「リバースモーゲージ」ですが、 筆者は、一人暮らしの高齢者で自宅を引き継ぐ者がいない場合や、家族がいても推定相続人が将来自宅を相続する可能性が低い場合の選択肢として特におすすめしたいと考えております。
ただし、一言に「リバースモーゲージ」といっても、さまざまな種類があり、各金融機関により金利が異なり適用要件も異なります。各自のライフプランによっても、適した「リバースモーゲージ」は変わってきます。リバースモーゲージをご検討の場合、本記事を参考にしながら進められるとよいかと思います。
※ 記事中の商品は LIFULL が推奨する商品ではありません。また、掲載している商品名や商品内容は当資料作成時のものです。詳しくは商品を取り扱う各金融機関にお問い合わせください
人生100年時代を見据えて、今後の老後資金の悩みはもちろんのこと、将来の相続や介護の問題、子供の教育資金、住宅ローンの問題等に至るまで様々な悩みを抱え、複雑に絡む諸問題に対しどのように向き合ってよいかわからないというお客様が多いのが現状です。 独立系FP歴25年、個別相談5000件以上の実績から、お客様と一緒に様々な諸問題に対して向き合い、解決法を考えていきたいと思います。是非私にお任せください
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