「痛みをコントロールし最期まで自分らしく生きる」ウェルビーイングを高めるフレアスの訪問マッサージ

訪問マッサージをメインに、高齢者や終末期の方の心と体のケアに取り組んでいる株式会社フレアス。代表取締役社長の澤登拓氏は自身が鍼灸マッサージ師として働いた経験があり、2000年に独立開業。現在は従業員約600名の規模にまで成長し、2019年には東証グロース市場(旧東証マザーズ)上場も果たしています。

在宅療養にまつわる事業を20年余り手掛けてきた澤登氏に、フレアスが提供するサービスの特徴や、終末期を在宅で過ごす方への思いを伺いました。

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今回のtayoriniなる人
澤登 拓
澤登 拓 株式会社フレアス

医療保険が使える訪問マッサージを提供

株式会社フレアスの代表取締役社長・澤登拓氏

── まず、フレアスの事業・サービスについて教えてください。

澤登

当社は在宅療養をされている方々を対象とした訪問マッサージをメインに、訪問介護サービス、訪問看護サービスなどの事業を展開しています。訪問マッサージは直営、フランチャイズを合わせて全国に約 365 の拠点があり、高齢あるいは重大疾病などで在宅療養されている方のほか、高齢者施設に入居されている方々にもサービスをご提供しています。

当社のサービスの特徴の一つは、医療保険が使えることです。高齢者の方でしたら、あん摩マッサージ指圧師や、はり師、きゅう師の国家資格を持つスタッフによる施術を1回数百円で受けていただくことができるのです。

── 澤登さんはご自身が鍼灸マッサージ師として仕事をされていたと伺いました。なぜ、マッサージの仕事に就かれたのでしょうか?

澤登

私は子どもの頃から病弱だったのですが、大学時代に中国で漢方などの東洋医学に出会い、驚くほど体調がよくなりました。その経験から、帰国後は日本で東洋医学を広めたいと考え、国家資格を取得して接骨院に就職しました。

── どのようなきっかけで独立開業に至ったのですか?

澤登

私が就職した頃、マッサージ師は雇用されてたくさん働いても十分な収入につながりにくい職種でした。中国では、漢方医はドクターとして認められるなど、東洋医学の従事者がプライドを持って仕事ができるのに比べると、環境が違うなあと疑問を感じてしまって……。

そんなとき、医療保険を使える訪問マッサージの存在を知り、自分でやってみようと2000年に独立しました。

業務の中で、寝たきりで寝返りを打てなかった方が寝返りを打てるようになったり、痛みで寝られなかった方がぐっすり眠れるようになって、「ありがとう」と涙を流して喜んでくださるといった経験をしました。そんな風に、誰かに喜んでいただけることがすごくうれしかったんですね。それで、より多くの方にサービスをご提供したいと事業規模を拡大していき、現在に至ります。

心と体。高齢期の在宅療養ケアに感じる2つの課題

在宅医療における心身のケアの重要性を語る澤登氏

── 現在、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は29%で世界1位です。今後、高齢者の数がますます増えていくと予測されていますが、高齢になるとどのような変化があるのでしょうか?

澤登

大きくは身体的変化、心理的変化の2つに分けられると思います。

まず身体的変化は、体の機能の低下です。内臓、神経、骨格筋など体の全ての機能が低下し、若いときは当たり前にできていたことができなくなる可能性が高まります。

それが進むと、歩く、食べる、トイレに行くといった基本的な動作もできなくなっていきます。特に脳梗塞など何らかの疾患を患って後遺症が残ってしまうと、ADL(日常生活動作)が一気に低下することもあります。寝たきりの動かない状態が原因となりやすい関節拘縮(関節が動かなくなる症状)も、生活動作を困難にします。

そして心理的変化は、身体機能の低下によって、できないことが増えるにしたがって気持ちも沈んでいくというものです。ふさぎがちになり、喜びを見いだせず、自己承認も満たされなくなっていきます。その喪失感から寂しさにさいなまれてしまうことも起こり得ます。

── 高齢者に起こり得る変化へのケアについて、課題に感じていらっしゃることはありますか?

澤登

はい。1つは、医療難民の問題です。いわゆる団塊の世代が75歳になる 2025年には、人口の約3割が65歳以上の高齢者になると推計されています。同時に、少子高齢化による人材不足も影響し、医療の需要と供給のバランスが崩れて多くの医療難民が出るのではといわれています。

現状でも退院後の在宅療養では、介護を受けられても医療的なケアは手厚いとはいえません。それが近い将来、必要なときに入院もままならない状況になるとしたら、在宅療養のあり方はいっそう問われていくと考えています。

もう1つは、最期まで自分らしく生きる“well-being”(ウェルビーイング:肉体的、精神的、社会的に満たされた状態)の観点におけるケアの不足です。ほとんどの方は亡くなる前に何らかの介護を必要とし、その平均期間は2年間といわれています。食事やトイレも人の手を借りるようになり、喪失感の中で人生の最期を過ごされるケースが少なくありません。現状ではその部分に対する身体的、心理的ケアが不足していると感じます。

── 医療難民の可能性、“well-being”の観点の不足、この2点を重ね合わせると、在宅療養でどのようなケアが受けられるかが重要になりそうですね。

澤登

現在、約8割の方が医療機関で亡くなっていますが、できることなら住み慣れた自分の家で最期を迎えたいと考える方は多いでしょう。

けれど申し上げたように、在宅療養における医療的なケアは充実しているとはいえません。その結果、日常生活の向上が望めず、心理的にも満たされない方が多いのが現状です。私たちはこの点を何とかしたいと考え、“住み慣れた場所で、医療的にも十分なケアを”というテーマでサービスを展開しています。

在宅の終末期を、「自分らしく生きた」と思えるプラスの時間に

心身の両面をサポートするフレアスのマッサージ

── 在宅療養で医療的なケアと心理的なケアが必要とされているとのお話でしたが、フレアスの訪問マッサージではどのようなことに取り組まれていますか?

澤登

身体的、心理的、2つの側面からのサポートに取り組んでいます。

身体的には2つのことを目指し、国家資格を持つスタッフの施術でアプローチします。最初に取り組むのは、痛みのコントロールです。寝たきりの生活を続けると体のあちこちに痛みが出ます。痛みはさまざまなことに対する意欲を低下させてしまいますので、施術で和らげていきます。これについては公的機関と一緒に共同研究を進めており、人の手によるマッサージは薬と同等の疼痛効果があるという研究結果も出ています。

次は、身体機能維持です。これは施術によって循環不全や関節拘縮を防ぎ、生活の日常動作の維持、向上をサポートするというものです。

── 心理的なケアについてはいかがでしょうか?

澤登

精神的に若々しさを保ち健康を維持するには、外界との接点を持ち、コミュニケーションを取ることが非常に大事です。私たちがご自宅にお伺いすること自体が外部との接点になり、コミュニケーション面での貢献につながります。これも、私たちの大切なミッションと捉えています。

── スタッフの方々の教育にも力を入れていらっしゃると伺いました。

澤登

あん摩マッサージ師などの資格は国家資格ですが、体系化された実習制度がなく、スキルにかなりの個人差があるのが実情です。私はその点を業界の大きな課題だと感じていたので、実技や知識の教育研修プログラムを構築し、社内で実施しています。さらに、年に1度、150項目にわたるスキルチェックも行っています。

こうした技術教育と併せて、思いや理念の共有も重視しています。私たちは、終末期を在宅で過ごす方が人生最期の時間に接する限られた人間の 1 人です。お一人おひとりの人生のドラマに思いを馳せて豊かなコミュニケーションを図るよう、スタッフの理念教育に力を入れています。

── 最後に、これから高齢期を迎える方、高齢期のご家族を持つ方へのメッセージをお願いします。

「在宅療養を充実させるためのサポートがしたい」と話す澤登氏
澤登

誰もが加齢で体が弱れば、介護を必要とする状態になるのはしかたがないことです。なりうるのです。けれど、最期までより良く、その方らしく生きることをあきらめないでいただきたいと強く思います。“終わりよければ全てよし”という言葉がありますが、人生の最期に前向きな気持ちで毎日を送ることができれば、ご本人もご家族も、「いい人生だった」と思えるのではないでしょうか。

ご自宅で生活しながら痛みをコントロールし、少しでもできることを増やして喜びや幸せも増やしていく。そんなプラスの時間を過ごしていただくことが私たちの願いです。そのためにも、これからもさまざまなアプローチで在宅療養を充実させるお手伝いをしたいと思っています。

澤登 拓
澤登 拓 株式会社フレアス

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