未来をつくるkaigoカフェ--高瀬比左子さんが同じ悩みを抱えてる仲間の輪を拡げたい理由

支えたい相手がひとりでもいれば、誰にとっても他人ごとではない「介護」の問題。

にも関わらず、現実問題として直面するまで何の知識もなく、ただ不安を抱えているだけの人も多いのではないでしょうか? そしていざ介護をする機会が訪れ手探りで始めてみたものの、インターネットやマニュアルに答えのない問題ばかりで心が折れかけている……なんて人も少なくないはずです。

そんな、漠然とした不安や、ひとりで解決できない悩みを抱えている方にぜひ知って欲しいのが、「未来をつくるkaigoカフェ(以下、「kaigoカフェ」)」。月1回、100名超の参加者が集まって、ゲストの話を聞いたあと、数人のグループで語り合う対話メインのイベントです。

今回のtayoriniなる人
高瀬比左子(たかせひさこ) NPO法人未来をつくるkaigoカフェ代表
高瀬比左子(たかせひさこ) NPO法人未来をつくるkaigoカフェ代表 介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員。訪問介護事業所の立ち上げや施設での現場経験ののち、ケアマネジャーとして勤務。自らの対話力不足や介護現場での対話の必要性を感じ、平成24年より介護職やケアに関わるもの同士が立場や役職に関係なくフラットに対話できる場として「未来をつくるkaigoカフェ」をスタート。
介護関係者のみならず多職種を交えた活動にはこれまで1万人が参加。通常のカフェ開催の他、小中高への出張カフェ、一般企業や専門学校などでのキャリアアップ勉強会や講演、カフェ型の対話の場づくりができる人材を育成するカフェファシリテーター講座の開催を通じて地域でのカフェ設立支援も行う。2020年3月~コロナウィルスの影響を受けて休校になった子供や、高齢者向けに医療介護従事者が講師となりzoomを活用したオンライン授業を開催。

著書に「介護を変える 未来をつくる ~カフェを通じて見つめるこれからの私たちの姿~」(日本医療企画刊)
2020年11月20日に新著「RE:CAREポストコロナ時代の新たなケアのカタチ」(日本医療企画)を発刊。
RE:CAREポストコロナ時代の新たなケアのカタチ

気軽なテーマで「ゆるいつながり」が作れる場

参加者の顔ぶれは、介護業界で働く人だけでなく、自宅介護をしている人や、学生、介護に関心がある他業種の人など、さまざま。

イベントの内容は毎回変わり、「誰もが生きやすい街づくり」「地域のつなぎ役に必要なことは」などの正統派なものや、カードゲームを使って余命に向き合う気持ちを体験する会や、和菓子の実演を楽しみながら職人から和の心を学ぶ会など、柔らかいテーマのものにも取り組んでいます。

コロナ渦となりオンライン開催に切り替えたのちも、認知症当事者や家族の気持ちになって演じる演劇ワークショップや、介護施設同士をカメラでつなぐ見学ツアーなど、ユニークな企画を次々開催しています。

参加者からは、「悩んでいるのは自分だけではないと気がつけた」「近しい関係の人だとなかなか相談できないことも、ざっくばらんに話せた」といった感想をいただくことが多いそう。同じ悩みを抱える者同士の交流を通して、前向きな思いに転換できる場となっているのです。

>kaigoカフェは毎月開催!2020年 12月のテーマは「ご当地介護自慢」と「介護のすべらない話」

一方的に学ぶだけではなく、一緒に仲間を見つける場に

「イベントの名前に“カフェ”と付けたのは、一方的に話を聞く勉強会のような場ではなく、参加したみなさんが主役のイベントにしたかったからです」

と語るのは、代表の高瀬比左子さん。

「介護」をテーマに面白い取り組みをしているゲストの話を聞くだけでも前向きになれるはずですが、同じ思いを抱えている仲間とつながることが、答えが一つではない問いに向き合う活力になると高瀬さんは考えているそう。

前述した通り、kaigoカフェには、介護従事者から自宅介護をしている人まで、さまざまな立場の人が参加しています。そのため、介護従事者にとっては、自分と違う環境で介護を行う人の声が聞け、自宅介護をしている人にとっては、介護の悩みを介護職の人に相談できる場となっているのです。

kaigoカフェでは、そんな「つながり」を後押しするため、細やかな工夫もされています。

リアルイベントのときには、リラックスして話してもらえるようにカフェらしくお茶菓子と飲み物を準備していたそう。オンラインイベントでは、各グループにファシリテーターが入るなどして、話しやすい雰囲気作りを心がけているのだとか。

立ち上げのきっかけは「悩んでいるのは、私だけじゃない」という気付き

過去開催イベント写真

「イベントタイトルの“未来をつくる”というキーワードは、ネガティブなイメージを持たれやすい介護の印象を、前向きなものに変えたくて付けました。ここに来てくれた人が、前向きな気持ちになってくれる場を目指して運営しています」

高瀬さんがこの業界に入った2000年代の初頭、介護業界には今よりもう少し明るいムードが流れていたそう。というのも、当時はケアマネジャーの資格が誕生したばかりで、「この資格を取ればキャリアが拓ける」と皆が信じていたのです。

しかし、3年ごとに見直される介護報酬は、毎回少しずつマイナス改定されていきました。社会保障費も削減の一途を辿り、個人の負担が増えたことで、サービスに支払うお金に余裕がある高齢者も減っていきました。結局、資格を取っても給与や待遇に反映されなかったのです。

「今では資格を取得する人は減り、介護福祉士やケアマネージャーの数も減ってきています。でも、現場は相変わらずの人手不足。業界は、暗いムードに満たされました」

また、目の前にある介護施設の現状も、高瀬さんの心を悩ませたといいます。

たとえば、ある利用者さんが心から食べたいと願っているものを、施設側の方針で「危険だから」と食べさせてあげられなかったことがあったそう。

「私がやりたかったのは、そこから『どうしたら食べさせてあげられるか?』を考えることでした。でも、現場は日々の業務に手一杯で、ひとりひとりの利用者さんに向き合える状況ではなかったんです」

理想の上司やお手本になる先輩も見つけられず、高瀬さんは「自分の将来を考えた時、どんな未来を描けばいいのか分からなかった」と言います。

時は2010年代。SNSが私たちの生活の中で受け入れられ始めたころのことでした。SNSで高瀬さんが心の内を明かすと、次々に共感の声が集まりました。「そのことで『私だけじゃない。ほかにも多くの人が同じような悩みを抱えてるんだ』と気付いたんです」。

こうして、2012年の夏、未来のビジョンに悩むもの同士がつながって介護の未来を明るく変える「未来をつくるkaigoカフェ」初めてのイベントが開催されたのです。

「東京から地方、そして世界へ」

東京で始まったkaigoカフェの活動の場は、今では日本全国に拡がっています。

「カフェの参加者のなかには、わざわざ地方から東京に来てくれていた方もいました。彼らの話を聞くうちに、地方のほうがこうした場も少なく、ひとりで悩みを抱えている方が多いのかもしれないと思うようになり、地方開催に踏み切りました」

名古屋や大阪などで開催してみると、予想以上の大盛況。「我が町でもkaigoカフェのようなイベントを開催したい」と相談を受けることが増え、カフェのファシリテーターを育てる「ファシリテーター講座」を開催することに。

その後、クラウドファンディングで、講座のテキスト作成と各地の活動資金を募り、見事成功。以降、これまで1000人以上がこのファシリテーター講座を受講したそう。こうしてkaigoカフェの拠点は、2020年までに全国15都市60箇所に拡大。

今では活動はオンライン限定となっていますが、距離が関係ないため、地方からの参加者が増えているのだとか。

そして2017年10月には、台湾でもイベントを開催。台湾ではそもそも「介護」という概念が認知されておらず、日本以上に課題が多い現状だとか。そんな現場を勇気づける取り組みとして、kaigoカフェが「アジア健康長寿イノベーション賞」のテクノロジー&イノベーション部門で国内の最優秀賞を受賞したそう。

kaigoカフェは、今年(2020年)で活動9年目。高瀬さんが少しずつ拡げてきた人と人の「つながりの輪」は、地域を越え、国を越え、年々大きくなってきているのです。

【2020/12/18(金)】未来をつくるkaigoカフェのオンラインイベントが開催!

そんなkaigoカフェですが、来月12月18日(金)にも「ご当地介護自慢」と「介護のすべらない話」をテーマにオンラインイベントを開催します!

自分らしく介護を楽しみ地域を元気にしている10名から、それぞれの地域で取り組まれていることやビジョンを聴く「ご当地介護自慢」、ケアの現場ならではの笑いやほっこり経験を聴く「介護のすべらない話」、それぞれプレゼンをして頂き、人生100年時代を豊かに楽しむヒントが得られる場にできたらと思っています。

参加の方法は、Facebookをしている方はFacebookのイベントページで参加予定としていただいた後、ピーティックスから申し込みをお願いします。介護について詳しくなくても、気軽に楽しめるイベントです。ぜひ、お気軽に参加くださいね。

イベント開催日:2020年12月18日(金) 20:00〜

参加方法:ZOOM(事前にURLを送付します)

開催前日にピーティックスのメッセージへ当日のURLをお送りします。

坂口ナオ
坂口ナオ

東京都在住のフリーライター。2013年より「旅」や「ローカル」をメインテーマに、webと紙面での執筆活動を開始。2015年に編集者として企業に所属したのち、2018年に再びライターとして独立。日本各地のユニークな取り組みや伝統などの取材をライフワークとしつつ、持ち前の探究心を武器に幅広いテーマで記事を手がける。

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