真奈美さんから家族の話し合いに同席してくれる専門家がいると聞いて、お話しを伺いにきました。
東北地方出身で、結婚して都内に住んでいる綾香さん(48歳)。両親は、東北の実家で二人暮らしをしています。
先日、親がオレオレ詐欺にひっかかったことがわかりました。今回の被害は、数十万円だったのですが、「あれほど注意するように言っていたのに!」と、驚きました。母親に何度、事情を聞いても、要領を得ず、「あれ? 認知症?」と心配になりました。親の財産管理について不安が募るので、「私が管理しようか?」と父親に聞いてみましたが、「大丈夫だ」の一点張りでラチがあきません。
そんな折、友人の真奈美さんより「家族の財産の話し合いに同席してくれる専門家がいる」と聞いたので、話だけでも聞きに行ってみることにしました。
真奈美さんから家族の話し合いに同席してくれる専門家がいると聞いて、お話しを伺いにきました。
はい、私は認知症対策の専門家です。ご両親にお話しをする時には、「認知症を発症すると、どんなことが困るのか?」を最初にお伝え頂くと、認知症対策の必要性も具体的にイメージしやすいかもしれません。
認知症の発症で一番困るのは、「判断能力」がなくなり資産が凍結してしまうことです。
判断能力がない状態で行った行為は、法律上無効です。資産が凍結すると、次のようなことができなくなってしまうおそれがあるんですよ。
1) お金に関すること
例: ×預金の引き出し ×定期預金の解約など
「親の介護費用、医療費や生活費などが親の預金から賄えない」など
2) 不動産に関すること
例: ×実家の売却 ×実家のリフォームや修繕
「実家を売却して、親の介護施設費用を捻出しようと思っていたのに売却ができない」など
3) 相続に関すること
例: ×相続税対策 ×遺産分割協議(相続手続き)
「相続税を軽減するための対策ができない」など
認知症になってしまうと、こんなたくさん『できないこと』があるんですね。知りませんでした。
認知症になる前に検討しておきたいのが、「家族信託」という制度です。
初めて聞きました。信託と聞くと、なんだか難しそう・・
おっしゃる通りです。家族信託という制度自体、まだまだ認知度が低く、最初から使い方を上手にイメージできる方は、そう多くないんですよ。でも、だからこそ「知っているのと、知らないのとでは大違い」という制度でもあるんです。
実は、「家族信託」という仰々しい名前だから難しそうだとお感じになるのですが、やっている内容は全く難しくありません。それどころか、家族信託でやっていることは、日本で昔からずっと当たり前に行われてきたことなんですよ。
え? そうなんですか?
仕組みについては、前回御説明したので、そちらをご覧頂くとよいですね。
ポイントとしては、「どの財産の管理を、子供に任せるか?」を、自由に決められるということです。例えば、施設入居費用や介護費用だけを家族信託して子供に管理を託しておき、残りは今までどおり自分で管理することができます。
ご両親様は、お手元に現金がなくなることがご不安なのかもしれませんね。家族信託では全てのお金を信託しなければならないわけではないですし、あくまで管理権限だけが子供に移ります。このあたりを親御さんに理解してもらえば、管理権限を手放す時の心理的抵抗感は薄まると思います。
私が最もお伝えしたいのは、親御さんが元気なうちに、財産管理について家族みんなで話し合う機会をきちんと持っておくと、後々、楽ですということです。
なるほど。そういう制度があるんですね。一度、家族みんなで検討してみます。ところで、実際に『家族信託』という制度を利用したいと思った場合、費用はどれくらいかかるものなのでしょうか?
費用の例として、弊社にご依頼いただいた場合の金額を提示しておきますね。相場感として「これくらいかかる」という参考にして頂ければと思います。
◇金銭のみを信託する場合
20万円 +実費(資料収集費用、郵送費等)
◇不動産を信託する場合
30万円~ +実費(登録免許税、資料収集費用、郵送費等)
家族信託という制度があるということを知って、何だか人生の選択肢がひとつ増えた気がします。
おっしゃる通りです。家族信託は、財産の管理と承継をスムーズに行う制度です。このような制度があることを、まずは皆さんに知って頂ければと思っています。
財産の管理と承継について家族で話し合う場を作っておくことにより、特定の人に介護の負荷がかかったり、財産分与で揉めたりするということは、減っていくのではないか?と、私は考えています。
家族信託という制度を、家族で財産のことについて風通しよく話し合うキッカケ作りに利用して頂ければ嬉しいですね。
イラスト/なとみみわ
ウェブサイト「主婦er」運営。夫は長男、私は長女。「親の介護」が集中する(であろう)家庭の主婦です。双方の両親は、お陰様で「まだ」元気。仕事をしながら息子3人を育てている今、「介護」は脅威でしかありません(笑)。そんな私が、「知りたいこと」を記事にしていきます。
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