夫の介護が必要になってもこの家なら安心。加藤茶さんのために、妻の綾菜さんが住まい選びで重視したこと

自分や一緒に暮らす家族が年齢を重ねていくにつれ「今の住まい、このままでいいのかな?」と考える機会が増えるかもしれません。老後の生活や、いつか訪れるかもしれない介護のことも考えると、高齢になっても安心して暮らせる住まいを考えたいものです。

今回はタレントの加藤綾菜さんに、家族の老後を見据えた住み替えについてお話を伺いました。綾菜さんは2018年、夫の加藤茶さんが75歳の時に、現在のマンションへと住み替えた経験があります。高齢の夫が過ごしやすいよう、具体的にどのような工夫をし、実際に生活がどう変わったのかをお聞きしました。

今回のtayoriniなる人
加藤綾菜
加藤綾菜 2011年に加藤茶さんと結婚。年齢差45歳の年の差婚という事情から結婚当初はバッシングを受け続けたが、昨今では茶さんをサポートする姿が注目を集めるように。年の差婚ならではの料理の秘訣やコミュニケーションの取り方などを発信し、そのライフスタイルが注目を集めている。

茶さんの年齢もふまえ、これからの生活に向けて住み替えを検討

――綾菜さんは現在、茶さんと愛犬2匹との生活ですね。現在の住まいに引っ越されたのは2018年、茶さんが75歳の頃だそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

加藤綾菜(以下、加藤):加トちゃんは元々、居住用の家を2軒、それ以外にも旅行先で滞在するための別荘のような家を複数所有していたんです。でも年齢的にそれらを行き来する機会が減り、最近は管理費用だけがかかっている状態だったので、見直そうと考えました。

居住用の家は、一戸建てとマンションがありました。一戸建ては階段の傾斜がきつかったり、室内にもらせん階段があったりして、年齢を重ねてからここに住み続けるのは難しいなと。

マンションはバリアフリー仕様だったので、今の家に引っ越す前はそちらで過ごすことが多かったです。リビングが広くて、他にも加トちゃんがドラムを叩くなど好きなことをして過ごせる部屋と、衣装部屋が2つ。さらに客間もあり、トイレとお風呂も2つずつありました。

――すごい! そこもバリアフリーだったとのことですが、なぜ住み替えを考えたのでしょうか?

加藤:加トちゃんが一日の多くを過ごすリビングの日当たりがよくなかったんです。公園が近くてよかったんですけど、木々にさえぎられて日光が入りづらくて。だから「次に住むなら日当たりが欲しいね」と話していたんです。

そんなときに、たまたま近所にマンションが建つことを知って。日当たりのよさそうな階がまだ成約していなかったことや、着工前だったので内装や間取りを自由に設計できると聞いて「それなら加トちゃんが暮らしやすい家を作れるかも!」と考えたんです。

加トちゃんに相談し、所有していた物件を整理して、現在のマンションへの住み替えを進めました。

「転倒」の防止を徹底。両親のアドバイスで手すりを付けてよかった

――茶さんからは、新しい家について何か希望はあったのでしょうか?

加藤:加トちゃんは本当に家へのこだわりがない人で、以前のマンションもマネージャーさんが内覧に行って選んできたくらいなんですよ。

ただ、住み替えることになって「住んでいて“気のいい家”がいいね」とは言っていたので、やっぱり日当たりや風が気持ちよく抜ける感じは大事にしました。その他の間取りや内装は、私が先導して決めました。

――現在のお住まいでは、茶さんとの生活をイメージしながら、どのような点を工夫されましたか?

加藤:まずはバリアフリーです。玄関や浴室などをはじめ、家の中の段差を全てなくして、転倒しにくく、また車いすでも過ごしやすいように意識しました。

トイレや浴室には手すりを付けて、一人でも安全に使えるようにしています。転倒防止という点では、足元にセンサー式の照明を付けて、夜にお手洗いに行くときにも足元がしっかり見えるようにしました。転倒による骨折が何よりも心配なので、危険はできるだけ取り除いています。

手すりなどは見た目がいかにも「介護」という感じで、気乗りしない方もいるかもしれません。私も最初そうだったんです(笑)。でも、加トちゃんの年齢に近いうちの両親が「手すりは絶対にあった方がいい!」とアドバイスしてくれて。最初に付けてしまえば、意外と気にならないですね。加トちゃんも手すりを使って、安全に過ごせていると思います。

高齢者の介護が必要になるきっかけとして多いのが「転倒」です。家の中での転倒を防ぐためのポイントについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

もうすぐ70歳で一人暮らしの父の家、今のままで大丈夫?「老後の住まい」を見直すポイントを専門家に聞く|tayorini by LIFULL介護

あとは部屋によって温度差がないように、空調の設備はしっかり入れました。ヒートショックが心配なので、特に冬場は気を付けています。

家の中の急激な温度差により血圧が大きく変動することで、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こしてしまうヒートショック。下記の記事では、家の中でできる予防策について詳しく紹介しています。

【未然に防げる】ヒートショックのしくみと予防法まとめ

加トちゃんの希望だった「日当たりのいい家」も実現できてホッとしています。リビングで過ごすことが多い彼のために、リビングの壁を取り払って広い一つの空間にしました。そこから富士山が見えるのもうれしいし、夏には花火大会の様子も見えます。

そんなぜいたくな景色を見ながら日向ぼっこをしたり、ときには晩酌をしたりと、以前の自宅ではなかなかできなかった楽しみ方ができるようになりました。加トちゃんも、リビングで愛犬たちと遊んでいる時間がとても多いですね。

開放的な印象のリビング

――茶さんも現在の住まいを気に入っているんですね。

加藤:実は、最初は「狭いな~、こんなところ嫌だよ~」なんて言っていましたよ(笑)。前のマンションより部屋数を絞ったので、どうしても手狭にはなっていますから。でも「じゃあまた引っ越す?」と他の家を検討してみても、結局「今の家の方が使いやすいな」と思ったみたいで。最近は「この家もいいもんだね」と言ってくれています。

――バリアフリーや安全面のほかに、こだわったポイントはありますか?

加藤:掃除を楽にしたくて、モノを極力減らしたんです。一方で寂しい雰囲気にならないように、玄関の壁紙は色や質感が違うものを取り寄せて使ったり、インテリア用の飾り棚を廊下に作ったりして、遊びに来た人の目を楽しませるような工夫をしました。

私の部屋と加トちゃんの部屋もそれぞれ壁紙を変えて、違った雰囲気にしています。加トちゃんの部屋は一部の壁を黒の壁紙でシックな雰囲気にして、私の部屋の壁紙は自分のお気に入りの花柄のものを選びました。壁紙ってついシンプルなものを選んでしまいがちですが、少し変えてみるだけでも気分が変わるんですよ。

実用的な面では、リビングや寝室に吸湿・消臭機能のあるタイルを貼って、ペットのにおいや湿気を減らせるようにしています。

――バリアフリーやコンパクトさを実現しつつ、楽しむ工夫もされていて素敵です。

加藤:加トちゃんの過ごしやすさや安全、快適さはしっかりと実現できたと思います!

ただ、食洗機のサイズやキッチンのスペース、トイレの数など、細かな「気になるところ」はあって……。特に、以前の家はトイレが2つあったんですが今の家には1つしかないので、ときどき困っています。夫婦で生活リズムが同じなせいか、トイレのタイミングも同じだったりするんですよ(笑)。食洗機も、あまり気にしていなかったのですが以前の自宅よりもかなりコンパクトになっていて、食器が入りきらなくて……。「変なところでケチケチしなければよかった!」と後悔しているポイントです。

料理好きな綾菜さん。キッチンにはまだ改善したいポイントがあるそう

人が集まりやすくなり、夫を見守る上での安心感につながった

――引っ越して、生活面での変化はありましたか?

加藤:いろいろな人が遊びにきてくれるようになりました。以前の家の方が広くてパーティールームのようなものもあったのに、なぜか人を招くことはあまりなかったんです。

今は前よりもこぢんまりとした家ですが、週に1、2回は誰かしらが来てくれて鍋パーティーをしたり、夏は花火を見たりしながら、にぎやかに過ごすことが増えました。

それから、私が仕事で不在になる時間が以前よりも増えたんですが、近くに住む友人がご飯を作って加トちゃんに差し入れてくれたり、様子を見に来てくれたりもしていて。たまたまですが、友人たちの家からアクセスのいい立地だったので、とてもありがたい環境だと思っています。

――普段、お二人で家にいるときはどのように過ごしていますか?

加藤:やっぱり年の差もあってか好きなものは違うので、別々のことをしている時間も多いんです。加トちゃんはリビングで時代劇を見るのにハマっているし、私は自分の部屋でNetflixを見たり、勉強したりしています。私も自分の部屋を作ったことで、加トちゃんが寝た後にも自分の時間を持ちやすくなりました。時々、減塩食の加トちゃんには「目の毒」になりそうなお菓子なんかを持ち込んで、こっそり食べたりもして(笑)。

綾菜さんのお部屋

私の部屋は加トちゃんがいるリビングのすぐ近くなので、何かあればすぐに動けるし、一緒にお茶を飲んだりおしゃべりしたりして過ごすこともあります。それぞれが自分の時間を過ごしながらも、ゆるやかにつながっているような時間は、とても心地いいですね。

加トちゃんは元々仕事しかしていないような人でしたから、以前は「家でくつろぐ」ということが分からず、戸惑っている様子もあったんです。でも、彼が過ごすソファの近くに好きなお菓子を用意してあげたり、必要なものを手が届きやすいところに置いておいたりしてリビングの環境を充実させたところ「家にいるのもいいもんだね」と言ってくれるようになりました。犬たちと遊んでいる加トちゃんを見ていると、仕事のプレッシャーからも解放されて、今はとてもゆっくり過ごせているのかなと思います。

自分たちにとって、住んでいて「気持ちいい」と思える家を

――茶さんと、将来について話すことはありますか?

加藤:そうですね。過去に加トちゃんの病気などもありましたし、だからこそ健康のことや将来的な介護の話をすることもあります。ここ数年、私が親族の介護をしていたこともあって、それを近くで見ていた加トちゃんが「介護ってこんなに大変なんだ」と思ったみたいで。以来、自分で歩く習慣をつけたりピラティスに通ったりと、元気でい続けるためにすごく努力してくれているんです。

加トちゃんももう80代なので、近い将来、介護が必要になってくることもあると思います。でも、今の家に越してきてから「車いすを使うようになったらソファを片付けよう」とか、日当たりがいいからやっぱりここで二人で過ごすのがいいな、そこには犬たちもいて……と、将来の想像がしやすくなったように感じるんです。介護を見越して作った家だからこそ、ここで過ごすことに不安もないし、ずっと住み続けられるかもって。

――老後に向けて住み替えを検討する方に向けて、あらためてアドバイスはありますか?

加藤:段差のないフロアや足元のセンサーライトを取り入れたことは本当に安心につながっているので、検討してみていただけたらと思います。

それから、自宅で過ごすことが多くなりそうなら、日当たりや風の抜けを意識するなど、自分たちが住んでいて「気持ちいい」と思えるような家にしていくのが、快適に住めるポイントではないでしょうか。

実は今、新たにいいなと思っているマンションがあって……(笑)。居住者専用の中庭のようなスペースがあって、住民のおじいちゃん、おばあちゃんたちがそこで散歩しているんです。散歩に出るのがおっくうなときでも、人目を気にせず敷地内で軽い運動ができたらいいなと思ったんですよ。

でもひとまず、今の家は環境もいいし、加トちゃんも気に入ってくれているので、しばらくはここで愛犬たちと一緒に過ごしていこうかなと思っています。

取材:構成:藤堂真衣

編集:はてな編集部

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