40代や50代を過ぎて仕事や子育てが落ち着くと、今後は自分のために時間を使いたい、趣味に時間をかけたいと考える人も多いでしょう。
ですが、あらためて「老後も末永く趣味を楽しむ」と考えると、気力や体力が衰える不安もあり、なかなかイメージがわかないかもしれません。
ブロガーの在華坊さんは、自らの持つたくさんの趣味に関する情報を発信し続け、その情報感度の高さから信頼を集めています。そして、忙しく働きながらも「趣味や暮らしを充実させること」に積極的に取り組まれています。
そんな在華坊さんに、自身の考える「豊かな老後」について、そして老後も趣味を充実させるにはどうしたらいいか、今考えていることを語ってもらいました。
こんにちは。メーカーに勤務しつつ、国内外問わず旅行したり、中国茶に親しんだり、美術館に行ったり、おいしいものを食べたり飲んだり……主に趣味を充実させた暮らしを送っている在華坊と申します。
40代も半ばを過ぎて、今後の生活をどうしていくか、「定年後」「老後」をどうしていくかを、ぼんやりと考え始めています。私生活では2018年に結婚し、2021年にマンションを購入し、現段階では子どもはおりません。
理想の老後としては、やはり現在の趣味を今後も楽しんでいきたい。そうなると、どうやって趣味中心に生活を充実させていけばいいのか。そして何より、趣味を充実させるためには健康の維持とそれなりのお金も必要。そんなことを、最近はよく考えるようになりました。
そんなにも趣味が多いのかと思われる方もいるでしょう。あらためて、今自分が楽しんでいる趣味を思い浮かべ、できるかぎり整理してみました。雑多でまとまりがつかないのですが……
これらの趣味は一人でやっていることも多いのですが、趣味を介して人とのつながりができたり、思いがけない縁ができたり、また、その人間関係からさらに趣味が広がったりすることも多々あります。
今後も趣味を続けていくためには人間関係の維持が不可欠であり、それが豊かな老後につながると考えています。今日はそのあたりのお話を主にしていきます。
なぜ趣味だけでなく、「人とのつながり」や「縁」を重要視するようになったのか。話は学生の頃に遡ります。
中学高校の頃の趣味の一つがパズルでした。パズルといってもジグソーパズルではなく、数字のパズルや、旅館に置いてある木のパズルのような、数理系のパズルですね。そこから、たまたま理解のある先生が顧問になってくれてサークルを作りました。さらに学校のOBで世界的に著名なパズル作家の方を紹介いただき、その縁で大人のパズル研究サークルなどにも出入りしていました。
また、大学に入ってからも、趣味の落語や古本を通じてさまざまな出会いがありました。しかしながら現在は、生来のズボラさもあり、その頃できた縁の多くが途切れてしまっています。中学から大学まで都心に通っていており、恵まれた環境にありながら、それを生かすことができなかったという後悔があるのです。
あの頃の人間関係を今でもちゃんと維持できていたら、現在とはもっと違う趣味生活や人生の広がりがあったのではないか。そんな悔やむ心が常につきまとっています。
その後悔が頭にあるときに、学生時代の友人に勧められて、ブログ(当時のはてなダイアリー)を書き始めました。就職して3年目、2004年のことです。その頃は主に美術、特に現代美術に興味があったため、美術館に行った感想や、出張先で食べたもの、あるいは旅の記録などを主に書いていました。
展覧会に行った感想を見た方からコメントをいただいたのをきっかけに、一緒に展覧会を見に行き、さらに親交を深めるようになりました。今でも、内覧会に誘われたり、毎年年末には今年見た展覧会を振り返る忘年会をしたり、そこでつながった人間関係は20年近く続いています。美術関係以外にも一緒に海外旅行に出掛けたり、飲みに行ったり、野球を見に行ったり……と、美術に限らない人間関係が継続しています。
ネットで情報発信をすると、共通の趣味を持っている方がコメントをしてくださいます。だからこそ、より人間関係を深く築き上げることができるのかもしれません。
ネット経由だけでなく、リアルでも趣味からの縁があり、友人が増えていきました。近所をぶらぶら歩いているときにたまたま入った居酒屋で知り合った方が「横浜トゥデイ」という、横浜のイベント情報を発信するTwitter(現・X)媒体を運営しており、そのイベントに参加したのです。そこから横浜での知り合いが増えていきました。
さらには、そのお店で出会ったご夫婦が出版されていた「はま太郎」という地域情報誌で原稿を書かせてもらったりもしました。その方々とは今でも、夫婦ぐるみで仲良くさせていただいていています。
「横浜トゥデイ」で知り合った方々とは、どら焼きやら最中やらさまざまなものの食べ比べ会をしたり、おいしいお店の情報を交換し合ったり……。大人の人間関係とは思えない頻度で、ご飯を食べる会が開催されています。自分も食べ物にはだいぶ興味がある方ですが、とてもかなわないと思わせるような、食べることへの驚愕するような強い興味関心を持った人たちの存在は、大いに刺激になります。
そして、妻との出会いもこの「横浜トゥデイ」関係のイベントがきっかけです。結婚式には、居酒屋の店主にも出席してもらいました。
妻自身の趣味のつながりからも、さらに人間関係が広がりました。妻はもともと中国茶や台湾などアジア圏への旅行が好きなのですが、自分も一緒に楽しむうちにすっかりハマって、今ではお茶好きな人たちと台湾に旅行したり、中国でお茶の生産をしている人と知り合って遊びに伺ったり、持ち寄ったお茶を公民館のキッチンでひたすら飲み続けるイベントに参加したりするようになっています。
一つの趣味や楽しみ、あるいは人間関係を起点に、さらに楽しみが広がっていく。これが、自分にとってはとても楽しいし、何よりも大切にしたいことです。
なぜこういうことができているのかを考えると、発信と受信の好循環があるからなのかな、と思っています。
例えば中国旅行や中華料理の話をXで発信することで、中国に留学経験のある方や、中華料理が大好きな方など、幅広い人間関係ができました。これらの人たちとは、宴会に誘ったり誘われたり、さまざまな関係が続いています。
実際に会ったことはないけれども、Xだけでやりとりをしている人も大勢います。例えば先日は「台湾に行く際に何か面白そうなものはないか」とつぶやいたら、台湾南部で行われているお祭りを教えてくれた方がいました。このお祭りは大変良い刺激になり、ここをきっかけにして、さらに台湾への興味関心が広がっていきました。
ただ自分が「教えてほしい!」と言うだけでなく、普段から熱量を伴った情報発信をすることで、自分の発信が人の目にも触れやすくなっており、人から教えてもらう機会も増えているのではないかと思っています。つまり、情報のギブ&テイクの関係ができあがっているのではないか、と。趣味の情報の発信と受信が好循環を生み出しているのです。
今はネットだけでやりとりをしている人とも、そのうちお会いすることがあるかもしれないし、もしかしたら一生会うことはないかもしれません。でも、そういった関係もまた素敵だと思いますし、情報のギブ&テイクを続けられたらと考えています。
趣味を楽しむだけではなく、情報の発信と受信を続け、新たな人と関係を築き、そしてその人間関係を維持していく……。やはりこれが、自分にとっての理想の老後であると考えています。
こういった生活を続けることを考えると、そのためにはお金はもちろん、健康の問題があることは間違いありません。今後、年齢を重ねて体力や気力などが落ちる中で、これまでと同じような頻度と熱量で情報を発信していけるだろうか? 昔を懐かしんだり、愚痴を言うだけの鬱陶しい老害にならないだろうか? 今からだいぶ不安に思っています。
ただ、希望というか、お手本にしたい方とも、趣味を通じて出会うことができました。70歳を過ぎても海外によく行かれる方などは、今後の人生のロールモデルとして大いに学びになっています。
生活環境や視点の違う人が、どのような態度で趣味を楽しんでいるのか、無理せず楽しむにはどうしたら良いのか。こういったことは、同世代や同性の人とだけつながっていると、なかなか学んだり、参考になるような事柄に巡り会えません。ですが、趣味を媒介にすると、違う世代や違う性別の人ともつながりやすく、お手本となるような方とも出会う機会が訪れるのはとてもありがたいと考えています。
自分が出会ってきた中の印象では、50代以上で既婚未婚にかかわらず、アクティブに趣味を含めた生活を楽しんでいる人は、女性の方が多いような気がしています。自分自身、世代の違う異性、特に年上の女性と交友関係があることで見える世界が広がっているように実感しているのです。
分からない部分は気軽に教えを請うたり、遠慮せずに人の助けを借りたり、フランクに人を誘ったり、一つのことに拘泥し過ぎなかったり。良い意味での「人間関係の垣根の無さ」は、今後、年下の人とも付き合っていくために大切なことだな、と感じました。
一つの趣味だけに拘泥しないのも良いかもしれません。自分自身、いろいろな趣味の中には一時的に興味が持てなくなったり、人間関係のもつれもあって、しばらくその趣味から疎遠になることもありました。
でも、SNSで視界の端に見えていれば、また何かのきっかけで興味が復活することもあります。だから無理せず、ゆるく自分のペースで趣味を楽しんでいればいいし、一時休んだりしても良いかと思います。
例えば自分の場合、ブログを書き始めた当初は、ブログサービスにあった交流機能の中の「巨大建築愛好会」というグループに参加し、一緒に建築物を見に行ったり、社会科見学系のイベントに参加したりしていました。また、一時期はそこで知り合った人と毎週のように飲みに行ったりもしていたのです。
その後、会う頻度はグッと下がりましたが、Xでなんとなく視界の端には存在している、という関係が続いていました。そして先日、思い立ってその中の一人を中華料理の宴会に誘って、10年ぶりにお会いすることができたのです。
もともとは建築を介した付き合いだったのですが、その方が意外にも自分の「宴会に関するつぶやき」に反応してくださったことから、実は中華料理にも関心があったことを知りました。ゆるくでも、つながってさえいれば、こういう機会もあるのですね。
人間関係の維持・継続はもちろん大切ですが「無理はしない、どこかで切れてしまっても仕方がない。でも、時間が空いてしまっても気にせずに気軽に声を掛けて、またつながれたらラッキー」くらいの気の持ちようでいれば、もっと気楽に、末長く付き合っていけるように感じています。
自分自身の興味関心が移ったとしても、その時その時で興味を持ったことを発信し続けていくことで、かつて特定の趣味でつながっていた人と、また別の関係性が見つかることもある。だからこそ今後も気軽に、新しい楽しみを見つけていけたら、と思っています。
編集:はてな編集部
tayoriniをフォローして
最新情報を受け取る