
高齢の親の住まい探し。いざ始めてみると、想像以上に大変だった――そんな声をよく耳にします。
制度は複雑、施設の種類も多い。どこからどう探せばよいのか…。そこで頼りになるのが、老人ホームを紹介してくれる専門業者です
しかし近年、その老人ホーム紹介業界において、「紹介手数料が不適切に高く設定されている場合がある」という報道が見られるようになりました。この問題は、厚生労働省も問題視しており、老人ホーム紹介会社を束ねる業界団体でも是正に向けて取り組む動きがあります。
この記事では、「不適切な高額紹介料」問題について、その背景や問題視されている点、そして今後の業界の動向までを、わかりやすく解説します。
近年、複数のメディアが「老人ホーム紹介業者による不適切な高額紹介料」の問題について報じ、介護業界に大きな波紋を広げています。
一部の老人ホーム運営会社が、老人ホーム紹介業者に対し、末期がんや難病など、医療的ケアが必要な方を紹介してもらう見返りに、相場を大きく上回る高額な紹介料を提示していた実態が明らかになりました。
これを受けて厚生労働省は、老人ホーム紹介会社の届出制度を運営している「高齢者住まい事業者団体連合会」(高住連)に対し、「社会保障費の不適切な費消を助長するような紹介手数料が設定されることがないよう」にと、行動指針を見直すよう通知しました。
そこで高住連が運営する「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」では、届出をする紹介事業者に遵守を求める項目として、報道にあった「不適切な紹介料」を設定しないことを追加しました。
老人ホーム紹介業とは、老人ホームへの入居を検討している方の身体状態や希望をヒアリングしたうえで適切な老人ホームを提案し、入居までのサポートを行う事業を指します。
相談者の利用料は通常無料となっており、実際に入居へ至った際に老人ホーム側から手数料を受け取ることで、それが売上になるという仕組みです。
この紹介手数料は一般的に入居者の月額利用料の1か月~3か月分程度、もしくはそれに相当する定額で設定されることが多いと言われています。

老人ホーム紹介センターとは
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これまで紹介料高騰の問題について目にした方の中には、「余計な紹介料を取る紹介業者そのものをなくして、すべての人が自ら老人ホームを探せるようになれば、根本的に解決するのでは?と考えた方もいらっしゃったかもしれません。
しかし、特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、日本の老人ホームは多種多様で、制度もかなり複雑になっています。
それぞれ入居条件や提供されるサービス、費用、介護保険の適用範囲などが細かく異なるうえに、同じ施設種別でも施設によって強みは様々です。各施設が持つ独自の特色なども加味して、入居者の状況や要望に沿う最適な施設を選ぶ必要があるのです。
複雑で膨大な情報の中から「入居する方の身体状態・必要な医療的ケア・生活習慣や趣味嗜好」などにぴったりマッチした老人ホームを探し当てるのは、専門知識がない一般の方にとってはかなり骨が折れる作業になります。
ヒアリングや施設との調整を行い、入居までを無料で全面的にサポートするプロフェッショナルな紹介業者の存在は、入居者様ご本人やご家族の負担を軽減するためにも、やはり現実的になくてはならないものだと言えるでしょう。
厚生労働省が「社会保障費の不適切な費消を助長する」として、今回の紹介料の高騰問題を問題視している背景には、介護施設の収益構造があります。
なぜ、一部の老人ホーム運営事業者は高い紹介料を支払ってでも医療依存度が高い方に入居してもらいたいか。それは手厚い医療的ケアが必要な方に看護サービスを提供した場合に、医療保険報酬が手に入るためです。
通常、老人ホーム等の介護施設は入居者から受け取る賃料(家賃)と、提供した介護サービスに応じた介護保険報酬で運営されています。
ところが、末期がんや難病を抱え、医療的ケアが必要な方には、「訪問看護」というかたちで医療サービスが提供されます。このときに使われるのは介護保険ではなく、医療保険です。そして、国から事業者に支払われるお金(医療保険報酬)は、介護保険よりも高めに設定されているため、そうした方の受け入れが増えると、施設側にとっては収益を上げやすい仕組みになっているのです。

つまり老人ホームには、高い紹介料を支払ってでも、医療保険報酬が獲得できる入居者を紹介してもらうメリットがあるわけです。
さらに深刻な問題として、中には実体のない医療的ケアを申請し、不正に診療報酬を得る事業者もあることが、報道によって明らかになっています。
現在の日本の老人ホーム事情を鑑みると、老人ホーム紹介業の存在は欠かせません。しかし、「紹介料の不適切な高騰」といった問題が発生する背景には、業界の構造的な2つの課題があります。
たとえば保険業界には、保険業の健全かつ適正な運営と保険募集の公正を確保し、保険契約者などを保護することを目的とした「保険業法」が制定されています。
一方で老人ホーム紹介業界にはそのような業法が存在しないため、今回のような、医療保険報酬をあてにした不適切な紹介料設定などの行為を取り締まる法律がありません。
また、老人ホーム紹介業を始めるにあたっては、法律で定められた特別な資格などが必要ない点も、構造上の大きな課題のひとつだと言えるでしょう。
要するに「やろうと思えば誰でも参入できる」状況のため、介護や医療に関する専門知識が不足している事業者や、倫理的に問題がある事業者でも、存在ができてしまう状況があります。
高住連が運営する「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」は、業法がない、参入障壁が低いという老人ホーム紹介業界の課題に対応をすべく生まれた制度です。こちらの届出公表制度では、届出された事業者に向けて求める「遵守項目」があります。
最新の改訂では、「社会保障費に応じた紹介手数料の設定は厳に慎むものとする」という内容が盛り込まれ、今回の報道のような高額な紹介料が設定されないよう呼びかけています。
また、入居お祝い金・キャッシュバックなどモラルに反した営業行為を行わないことなどのルールが、遵守項目として新たに追加されました。

老人ホームの入居お祝い金とは?その仕組みと構造的な課題を解説
さらに国の動きとして、厚生労働省が老人ホーム紹介事業の適正化を目指し、2025年に検討会を発足していることも、今後注視したいポイントのひとつです。
この検討会では有料老人ホームの運営およびサービス提供のあり方、指導監督のあり方などが主に議論される見込みで、今後の法整備や規制強化につながる、より大きな変化が期待されています。
老人ホーム紹介料の不適切な高騰問題は、介護保険制度や老人ホーム紹介業の構造が招いた問題です。今後、こうした問題の是正を目指して、制度が変更される可能性もあるでしょう。
また、老人ホームを探す際には、紹介料の透明性はもちろんのこと、専門家としての知識を生かした「入居者に合った本当に最適な施設」を真摯に提案してくれるかどうか、という点を重視して、信頼できるパートナーをまず見つけることが重要になるでしょう。
大切なご家族が本当に心安らぐ場所へ落ち着けるよう、疑問や不安は遠慮なく専門家に相談しながら、納得のいく施設選びを進めてくださいね。
監修:LIFULL 介護編集長 小菅秀樹
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