LIFULL 介護では1000人を超えるワーキングケアラーにアンケートを実施しました。見えてきた、ワーキングケアラーの実態とは? 働きながら介護をするために必要なことを探りました。
ワーキングケアラーとは、仕事をしながら家族など近しい人の介護にあたる人を指します。
今回の調査では、ワーキングケアラー1105人に、介護していることを職場の人に伝えたかどうかを聞きました。
回答を見ると、やはり上司(39.7%)や同僚(37.2%)に伝えるのが一般的なようですが、「誰にも伝えていない」と答えた人も32.2%いることがわかりました。
介護に携わると、介護が必要な人(以下、被介護者)の定期的な通院に付き添ったり、突発的な対応で休みが必要になったりすることがLIFULL 介護のワーキングケアラー実態調査【知識と備え編】でわかっています。
ワーキングケアラーの55%が「介護が仕事に影響した」と回答。準備しておけばよかったこと1位は?
継続的に休みを取得することになるため、自分が介護していることを職場の人に伝えることも、介護と仕事の両立には重要なポイントと言えるでしょう。しかし、実際は3割の人が自分が介護していることを職場に伝えておらず、介護と仕事の両立にはまだまだ課題があることがわかりました。
介護と仕事を続けるには、使っている介護サービスを調整する、あるいは職場に働き方を相談するなど、何らかの相談が必要になる場面もあるでしょう。介護と仕事の両立について誰かに相談したことがあるか、またその相談先をたずねたところ、最も多かった相談先はケアマネジャー(25.4%)でした。次に職場の上司(20.8%)、医師や病院スタッフ(14.8%)と続きます。
ところが、相談したことはないと回答した人も41.3%いることがわかり、そもそも相談をしないケースも少なくないことがわかりました。
では介護全般の相談先はどこが選ばれていたのでしょうか? 介護の相談先を聞いてみるとケアマネジャーという回答が最も多く(56.7%)、次いで介護スタッフ(31.3%)でした。
注目したいのは職場の人事部など管理部門(9.0%)です。近年は産業ケアマネジャーという、企業の顧問として介護と仕事の両立に専門的な指導や助言を行う有資格者に注目が集まっています。産業ケアマネジャーが設置される企業が増えると、介護のことを所属する企業に相談する人も増えていくかもしれません。
介護と仕事を両立させるために必要なことを聞いたところ、「休みを取りやすい職場環境」が36.9%と最も多い結果になりました。僅差で「突発的に利用できる介護サービス」(36.7%)が第2位に。やはり被介護者の急な体調の変化などに、休みをとるか、代わりに対応してくれる人を用意するか、どちらかの対策が取れることが、介護と仕事の両立に重要のようです。
「介護を理由に取得できる休暇」という回答も多く27.2%となっていましたが、介護休暇や介護休業は会社の規定に記載されていなくても取得できる、国で定められた休暇制度です。こうした制度をより多くの人に知ってもらうことも、介護が原因で離職する社員の増加に歯止めをかける効果がありそうです。
今回のアンケート結果をみると、職場で自分が介護していることを開示すること、さらに周囲の理解を得て休むことへのハードルが高いようです。
介護はしばしば「家庭の問題」とみなされ、職場に相談できる相手がおらず仕事を辞めざるを得ない人もいます。介護休業や介護休暇といった公的制度があろうと、周囲の理解がなければ使うことができません。
一方、労働人口の減少に直面する中、企業にとっても人材確保は大きな課題です。こうした背景から、総務や人事部に介護相談窓口を設けたり、長期休暇前に介護講座を実施したりする企業も増えつつあります。
また、近年「産業ケアマネジャー」や「ワークサポートケアマネ」といった民間資格が誕生しました。企業における産業医的な存在として従業員の個別相談や、社内規定の策定に関わるなど、仕事と介護の両立支援の専門職として期待されています。企業には、育児と同様に、介護に対する理解促進、そして労働環境での支援体制を強化することが求められています。
調査概要
調査主体:株式会社LIFULL senior
調査期間: 2023年12月22〜23日
調査対象:過去10年以内に家族や親族の介護に携わったことがあり、介護が始まる前に仕事をしていた方 1,105人
調査方法:インターネット調査
※小数点第二位を四捨五入しているため、合計が 100%にならない場合があります
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